スポンサーリンク

歌詞和訳 Nirvana – You Know You’re Right コード

2000s

93年に書かれ、作者コベインの死の2ヶ月余り前の94年1月30日に録音されたものの、2002年まで公式には発表されなかった歌。

You Know You’re Right

(Kurt Cobain)

Em
I will never bother you
I will never promise to
I will never follow you
I will never bother you
もうウザい事なんてしないよ
約束もしないけど
付きまとわない
とにかく迷惑はかけないよ

C
Never say a word again
D
I will crawl away for good
話しかけもしない
もうこれっきり、這って出てくよ

Em
I will move away from here
You won’t be afraid of fear
No thought was put into this
I always knew it would come to this
ここからいなくなる
もう恐れる事は無いよ
深い考えがあるわけじゃない
前からこうなるとは分かってたけど

C

Things have never been so swell
D
I have never failed to fail
うまく行ったためしが無い
失敗しなかった事が無い

Em E
Hey
Em E
Pain
C D
Hey
E
You know you’re right
You know you’re right
You know you’re right
なあ
キツい
君は全く正しい

I’m so warm and calm inside
I no longer have to hide
Let’s talk about someone else
Steaming soup against her mouth
気持ちは至って穏やかで落ち着いてる
もう逃げも隠れもしなくていいんだ
他の人の話にしよう
熱々のスープを口に運ぶ

Nothing really bothers her
She just wants to love herself
それでも彼女は全く気にもしない
ただ自分の事が好きなだけみたい

I will move away from here
You won’t be afraid of fear
No thought was put into this
I always knew it’d come to this
ここを出る
もう恐れる事は無いよ
深い考えがあるわけじゃない
こうなるとは分かってたけど

Things have never been so swell
I have never failed to fail
うまく行ったためしが無い
失敗しなかった事が無い

Pain
Hey
Pain
Pain
Pain
ツラい
なあ
キツい

You know you’re right (x14)
You know your rights (x3)
君は全く正しい
やっていい事も分かってる

Pain

スタジオ録音以前からいくつかの公演では既に披露されており、果たして海賊版が出回った。
しかし、曲名に纏わるちょっと変な事が起こる。
ある公演中、本作のギターパートを既にコベインが弾き始めていた事に気付かなかったドラマーのグロールが間違った曲紹介をする。曰く、
This is our last song; it’s called ‘All Apologies‘.
海賊版業者はこれを正しい曲紹介と思い込み、All Apologies の部分を既存の曲名と判断できず、Autopilot (ま、これは分かる)やら I’m a Mountain (何じゃこりゃ)と聞き間違えた。
そして公式発表まで、これら業者が聞き取って勝手に付けた変名が流布した。
実際には、少なくともスタジオ録音の時点では Kurt’s Song #1 とだけ記されており、正式な表題は付いていなかった。

長い事待ってこれを初めて聴いた時の印象は、ベタ…
切実(そう)な歌詞を、ベタなコード進行のこれまた切実(そう)なメロディに乗せてるなあと。
Emに始まりEに着地するのはベタとは言えないが。因に、ド頭の音からするとギターは1音下げチューニングだろう)
未亡人コートニーラブの商魂など、要らぬノイズも耳にしていたから印象が捻じ曲がったのかも知れないが。

全部 hey だとばかり思っていたサビの絶叫が実は pain だと後から知った。
でもよく聴くと hey と歌っている所もやはりある。
ただハッキリ hey の所もあればどっちともつかない所もある。
これはこの部分のボーカルがダブルトラックになっているせいでもあるだろうが、本人がわざとボカしたとも考えられる。だって pain って絶叫するなんて(またしても)ベタ過ぎる。

生前最後のスタジオ録音曲という事も手伝い、果たして彼が本作を以って辞世としたというまことしやかな憶測を呼ぶ事となった。
しかしそれもむべなるかな、作者の真の意図は(当然)分からぬとは言え、そう取られても仕方ない表現は多い。
私は巷間の憶測なんぞになびきたくはないクチだけど、こればっかりはそうかも知れないとしか言い様が無い気もする。
表現に滲み出る諦念は、少し深読みすれば即ち絶望。

for good = 永久に、これを最後に
(こんな言葉使ってんだもんなあ、これもある意味ベタ)

swell = (形容詞で)素晴らしい

2番目の failed to fail の所、felt this frail(こんなに弱っていると感じる)とも聞こえる。
failed to feel だとする向きもあり、これだと pain が feel の目的語となろうか。

ちょっと戻って、someone else の件。
この、他の人(= she)が誰を指すのかについては2通りの解釈がある。
スープを文字通りに取れば、これは作者コベインの、当時1才の娘、フランシスを指す。
実際にスープを飲ませてやるのはそれこそ日常茶飯事だったろう。親子3人の食卓での幸せな光景の描写。
或は無邪気な幼い娘の行く末を案ずる表現。
片や、熱々のスープを隠喩表現とすれば、批判などを受けても全く意に介さない厚顔な妻の描写となろうか。
つまり、ラブの事。
勿論両者憶測の域を出るものではない。

そしてエンディングでは表題の文言をこれでもかってくらい繰り返す。
その最後三つは you’re right ではなく、your rights(権利)と言っている様に聞こえる。
そうなるとこれまた痛烈な皮肉。
ただそもそもコベインが妻について快く思わぬ所があったかどうかも知り得ないから疑問は残る。

ラブのバンド Hole による本作のカバーもあるが全くショボいから貼る価値無し。
詞も変え、表題も You’ve Got No Right. として、コベインの死後、彼の母親、つまり彼女の義母に対して「あんたにゃ権利は無い」と吐き捨てる。
彼女の金への執着ときたら…
で、彼女はまあこんなんだからしょーがないとして、他のバンドでこれをカバーしてるのはどうなんだろ。
一番カバーしちゃダメなヤツだと思うんだけどなあ。

コメント

  1. かだん より:

    この曲より後に録音された(らしい)ドレミなんかは今までとは全く違う雰囲気の曲で、今までのやり方(ヴァースコーラスヴァース形式等)はこの曲でおしまい、じゃあな!という意味だったり?流石に無理がありますか

  2. deni より:

    かだんさん ようこそ

    ドレミは In Utero 後の方向性を示すものの一つだった様ですね。すると本作が辞世でなく音楽性に区切りをつけるものだったというのも頷ける気がします。
    興味深い解釈をお聞かせ下さりありがとうございます。

  3. is より:

    do re mi を譯解するご予定はありますか?

    • deni より:

      いつも鋭いなあ、isさんは…
      実はかだんさんのコメントきっかけで、次はこれにしよう、と思ったんです。が、よく聞き取れない所も多いので諦めました。
      Don’t rape me と歌っていると言う人もいます。いやいやそれは話の種みたいなモンだろうと鼻で笑ってましたが、よくよく聞くと特に最後なんかはひょっとして…
      日本語だと(多分原語のイタリア語も)ドレミですが、英語だとドウれイミーに近く、全て韻を踏んではいるし… とまあこんな具合で、解釈はおろか対訳すら不確実なものになりそうなので翻意した次第です。
      因にこのコベインの歌い方はニールヤングを意識したものです(私見)。

  4. is より:

    ちょっと残念です。deniさんの譯解読みたかったな……
    しかし「俺を犯せ」と歌ったり、「犯さないで」と歌ったり、まるで情緒不安定のひとみたいじゃないですか……ってその通りだったな……
    それにしても、カートのボーカル表現は幅広いですね。改めて感心しながらYoutube上で楽曲をとっかえひっかえ聴いている今日です。

    • deni より:

      おすすめは Ain’t It a Shame です。ただ叫ぶのではない、音感とリズム感を伴った絶叫など、彼の歌手としての技量や歌心がこのLeadbellyカバーには集約されています(ギターは彼ではない)。
      因にちょっと前までNirvana公式チャンネルの動画が上がってたけど無くなってるから権利関係でダメになったっぽい。

  5. is より:

    Ain’ t it a shame,、聴きました。こんなニルバーナ聴いたことねえ!この、古き良きロックンロールの時代によくあるようなコード進行(悔しいことに僕には音楽の詳しい知識がないのでこんな表現しか見つからないのですが)を鳴らされると、一気にニルバーナの持つ屈折や屈託のオーラが半減しますね。コベインの激情シャウトが始まると、やっと、あ、ニルバーナだと安心できますが。そしてやっぱり、コベインはいい喉していますね。あんなに叫べたらさぞ気持ちのいいことでしょう。

    そして僕はやっぱりもう With the lights out 買った方がいいなと思いました。もっとコベインのいろんな面を知りたいし、それにHere she comes now のカバーなんかも収録されてるらしいじゃないですか。僕はベルベッツ大好きなのですが、deniさんは彼等にどんな印象をお持ちですか?忌憚のないところを、どうぞ。

    • deni より:

      「これはEのブルース進行だねえ」とか何とか言っときゃ僕みたいに知ったかぶりできますよ。目を細めて言えば効果倍増。
      ルーリードは最後のメタリカとやったヤツも含め、正直ピンと来た事が無いんです。だから印象を訊かれたら、NY、アンディウォーホル、ボウイとイギーの友達、ブラックフランシスが好きな歌手、みたいになっちゃいます。あ、こりゃ印象じゃなくて音楽雑誌に書いてある様な事か…

  6. is より:

    そういえばピクシーズの I’ve been tired の歌詞にルーの名前が出てきますね。この曲をdeniさんに譯解してほしい……という気持ちはあるものの。
    このところ、自分の手でいっちょう洋楽の譯解を本格的にやってみたいな、という思いが高まっています。明らかにこのサイトの影響です。それゆえ、自分で譯解する前にdeniさんの対訳を見てしまうのは、カンニングをするようで自らを許せないのです。
    そういったわけで、そのうち僕の対訳が仕上がったころに、deniさんの手になる譯解をばお願いするかもしれません。