Victims のスタジオリハーサルでの一コマを録音したもの。
2002年のボックスセット Culture Club に収録されているが、つまりこの Shirley Temple Moment とは曲名を表すものではない。
演奏は断片的も、レコード原盤歌詞とは異なる歌唱が認められ、それから考えればレコーディングよりだいぶ前の練習風景か(82年頃?)。
ラジカセで録った様な音ではなく、少なくともライン録りの音源ではある。
Shirley Temple とは恐らく米国の女優で外交官だったシャーリーテンプル(1928-2014)の事。
日本のアニメの「風船少女テンプルちゃん」の主人公は彼女に材を取っているらしく、また彼女の名を取った子供服のブランドもあった。
フルシチョフも彼女のファンだったそうな。娘が一時期 Melvins にベーシストとして在籍。
…と余談が過ぎた割りに彼女の名がなぜ題名に取られたかという肝心の所は分からず…
無駄な前置きが長くなりました。では本題…
Shirley Temple Moment
http://www.angelfire.com/mi/intpro/shirley.htm の筆録を参考に、一部修正して発話者とその発言を推定、対訳を付して以下に列記。
Jon = ジョンモス(ドラム)
George = ボーイジョージ(ボーカル)
Roy = ロイヘイ(ギター、ここではピアノ)
Mikey = マイキークレイグ(ベース)
Jon: “… 8 counts”
エイトカウント
George: “Plenty of echo on my voice, a bit more, bit louder me…
(sings) Oh, the victims we know so well, they shine in your eyes when they…”
エコーをたっぷりかけて、もうちょっと、もうちょい大きくして
(歌う)
Roy: “Shut up”
黙れ
Geo: “Fuck off you spotty fucking heterosexual cunt”
邪魔すんな、ニキビ面の女好きクソ野郎
Roy: “Big-nosed gay”
鼻デカゲイめ
Geo: “That’s right. Come on… Wanna stop messing about, (??)”
上等。ほら。こんなバカな事やめたいよね(*恐らくJonに向けてしなを作って)
Jon: “Alright girls, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8…”
じゃいくよ、お嬢達、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8
(the guys launch into Victims)
(Victims の演奏開始)
Roy: “stop it, stop”
やめやめ
Geo: “Play it Mikey”
続けて、マイキー
Jon: ”Ahhhh!”
あーーー
Geo: “Stop. He just stopped, come on Mikey”
ストップ。奴が勝手にとめたんでしょ、マイキー
Roy: “1, 2, 3”
Geo: “cunt”
アホ
Roy: “1, 2, 3, 4 (Jon and Mikey start playing) 2”
1, 2, 3, 4, (ジョンとマイキーがここで音を出してしまう) 2
Jon: “Oh come off it, for fuck’s sake!”
やめてくれ、頼むよ
Geo: (sarcastically laughs)”Ha ha!”
(冷笑)はは!
Roy: (to Jon) “you always do 8 counts – then he suddenly changes”
(ジョンに)いつもはエイトカウントだろ。なのにいきなり変えんのか
Jon: “You just did… ”
君が…
Roy: “4 in…”
フォーカウントで…
(Roy screams)
(ロイ叫ぶ)
Geo: “Do it Roy and Jon, stop being a little wanker”
もっとやれロイ。ジョン、いつまでもチビの意気地無しでいるな
Jon: “Don’t call me a little wanker – I’m not doing it now, sorry – I’m not doing it now”
チビの意気地無しなんて呼ぶな。僕はそんなんじゃないよ、悪いけど違うからね
Geo: “Big deal, who cares? It’s for you anyway”
はいはい、どーでもいーよ。でもその呼び名、君にぴったりだよ
Jon: “No, that’s not for me”
いいや
Geo: “Come on, girls”
よし、女の子達
Jon: “No”
うるさい
Mikey: “Now it’s fulfilled, just do it boys”
もう機は熟した、やろうぜ
(Roy starts playing the chords and Jon drums in…)
(ロイがコードを弾きジョンがドラムで加わる)
Geo: “Come on, you all get a free air gun if you do this”
おい、そんな事するなんてエアガンでも手に入れたのかい
Roy: “Oh good, we can blow your head off”
上等。お前の頭を吹っ飛ばしてやろうか
Jon: “And you get a free rent…”
ただで貸してあげ…
Mik: “Come on!”
もうやろうぜ!
Jon: “1, 2, 3, 4, 2, 2, 3, 4”
(演奏開始)
George:(歌う)
Oh, the victims we know so well
They shine in your eyes when they kiss and tell
Strange places we’ve never seen
But you’re always there like a ghost in my dream
And I keep on telling you
Please don’t do the things you do
When you do those things, pull my puppet strings
I’ve the strangest void for you…
Oh, we love and we never tell
What places our hearts in the wishing well
Strange lover I’ve never been
But you must be strong, you must come clean
If I keep on loving you, it’s the only thing to do
There are stranger things if I do those things
I’m a puppet king for you…
(misses his cue to come in)
(ジョージが歌い出しのタイミングを失う)
Pull the strings of emotion…
“Don’t know where to come in”
どこで入るか分かんない
Roy: “I just told you where you came in!”
教えたばっかだろ!
Jon:”Ahhhhhhh”
あーーー
Geo: “Bye”(leaves studio)
じゃあね(スタジオを出る)
Jon: “Oh come off it, can we just record the fucking thing”
もうよそう、片付けてしまおうよ
Roy: (out loud so George can hear)”What a fucking wanker! You fucking big fat wanker!”
(出て行ったジョージに聞こえる大声で)何てクソ野郎だ!デブのセンズリ野郎!
Jon: “Oh come on”
たのむよ
Mik: “Well he’s not doing it man”
彼はマジじゃないだろ
Jon: “No, he just wants to go to a party”
いや、ただパーティに行きたいんだよ
Roy: “No, he wants to go and fucking see – he wants to see himself on tele and go to the parties”
いや、奴はテレビで自分を見てパーティに行って満足する様な奴さ
Jon: (out loud so George can hear) “Have a nice party”
(ジョージに聞こえる大声で)パーティ楽しんで来な
(George enters studio again)
(ジョージがスタジオに帰って来る)
Roy: “Come on”
やるぞ
Geo: “No way, you called me a fat cunt”
やるかよ、デブ野郎って呼んだよな
Roy: “Well, you are a fat cunt – go and see yourself on tele and go to your stuff, go on, you’re not interested in this band”
ああ、その通りだからな。とっととテレビでも見て好きな事やれよ、どうぞ、バンドなんてどうでもいいんだろ
Jon: “Here he comes…”
来た…
Geo: “You sit there and let him do that – you go to fucking hell”
そこに座って見てただけか、地獄に落ちてしまえ
Jon: “I’ve done nothing wrong, mate – oh, it’s all my fault now, is it?”
何もマズい事してないだろ、ああ、僕のせいか
Geo: “That’s right – fucking dwarf” (slams door and leaves studio again)
そういう事だよ、クソチビが(音を立ててドアを閉めスタジオを再び去る)
Jon: “Yeah – it’s all my fault boys”
僕のせいだってさ、みんな
Mik: “Grown ups!”
大人になれよな
Jon: “Have a good party, George”
パーティ楽しんで来な、ジョージ
Roy: “Grown ups, ha ha ha”
大人になれか、ははは
Jon: “He always blames me.”
彼はいつも僕を責めるんだよ
Mik: “Come on lads, let’s knock it out”
じゃあほら、終わらせようぜ
Jon: “Can’t we do it without him”
彼抜きでやろう
Mik: “Yeah, let’s do it without him man, fuckin’ hell…”
(To Roy outside the room arguing with George)
“Roy, Roy, come on we’ll do it without him, please…”
うん、そうしようぜ、まったく…
(外でジョージと言い合うロイに向かって)
ロイ、ロイ、彼無しでやるぞ、たのむよ
Jon: “The chord’s alright and it’s all my fault”
コードはOKだから全部僕のせいさ
Mik: “I’m fucking tired and I want to sleep now man, you guys, we’ll do without him”
もう疲れたから眠いよ、みんな、彼無しでやろう
(Roy, George and Jon are arguing – mostly out of microphone’s reach)
(ロイとジョージとジョンの言い合い、マイクから遠く殆ど聞こえず)
Jon: “How dare you blame me for that”
あれが僕のせいだなんてよく言えるね
Geo: “You’re sacked”
お前はクビ
Jon: “But you walked off”
自分が出てったんじゃん
Geo: “No, he’s sacked right, there’s no working with him”
いや、ロイがクビ、もう彼とやる事は無い
Jon: “Stop it, I know you…”
やめなよ、分かってるよ…
Mik: “How can he be sacked, Roy, George? He can’t be sacked, there’s a lot of legislation there you’re chatting about man, it is”
なんでロイがクビなのさ、ジョージ。無理だよ、法的な手続きだっていっぱいあるんだから
Geo: “… don’t do that to me again, right… called me a soft target…”
二度とすんなよ、分かったか… バカにしやがって
Jon: “it’s slightly different, George”
ちょっと違うんだよ、ジョージ
Geo: “no it’s not”
違わないよ
Jon: “… the truth is it’s slightly different and you were rude to him ”
本当はちょっと違う、君の態度が悪かったんだよ
Geo: ” that’s it… … I meant it”
そうだよ、そのつもりでしたんだよ
Jon: “… cruel”
ひどい
Geo: “I meant it”
マジさ
Jon: “It’s only because you wanted to go, you’re only making excuses”
出て行きたかっただけでしょ、口実が欲しかったんでしょ
Geo: “No…”
いいや
Jon: “you want to go”
行きたいだけさ
Geo: “…Why would I end it? In fact I’m worried…”
なんで僕が止めなきゃいけないの。ホント困っちゃうんですけど
Mik: “Oh, promises”
ああ、たのむよ
Geo: “Get it in your little thick head, Jon”
そのちっこいアホ頭に叩き込んでおけ、ジョン
Jon: “Don’t have a go at me, I’ve done nothing, I’ve been in here all day working, you can’t even fucking sing for 5 minutes”
僕を責めないで、何もしてないでしょ。僕はここでずっと真面目にやってたよ。君なんか5分も歌えてないじゃないか
Geo: “Get it in your little thick head, get it in your brain, right, I’m serious, get it in your brain, I’m serious right,”
頭に入れとけ、マジだぞ、分かったか
Jon: “Why can’t you concentrate”
なんで集中できないんだよ
Geo: “Get it in your brain, I mean it, OK I mean it, I’m dead serious, Jon, get it in your brain”
アホ頭に叩き込んどけ、マジで本気だからな、ジョン。頭に入れとけ
以上、一見穏やかなそうなその題名とは裏腹の、メンバー同士の不穏な言い合いの生々しい記録でした。
thisisnotretro.com が行った、ボックスセット発売直後と思しき2002年のインタビューで、このトラックについてジョージが語っている。
Well it’s not really a track, it’s an argument!
トラックなんてもんじゃなくって、あれは口喧嘩だよ!
そして、いつもあんな感じで喧嘩をしていたが、だからこそマジックが起こる、と言葉を継ぐ。
言いたい事は分かるが、このトラックに限って言えば音楽や曲に関するメンバー間の建設的な議論は皆無… ま、いっか。
因に、Culture Club の次作はどんなものになるか、との問いに対しては、Missy Elliott とか Nirvana とか Ziggy(ボウイ)っぽい、強烈な雑多なもの、と答えている。うーん、楽しみ… ってもう14年も経ってるけど…
推測でしかないが、Shirley Temple Moment とは「可愛らしいひと時」くらいの意味で、シャレで付けたのだろう。
冒頭のロイの売り言葉に対するジョージの買い言葉
fucking heterosexual cunt
我々の性別の概念を引っ掻き回す罵り言葉!
ホモからすりゃヘテロがおかしいのだ。
(しょーがないから「女好き」と対訳した)
とは言えこの序盤は大声を張り上げる事も無く、まだ互いに冗談半分で言い合っている感じ。
演奏に入ると、人間関係の不和がリズムの乱れに如実に表れている様ではあるが、再び歌い出すきっかけを失ったと言うジョージの言葉は額面通りに取れるものではない。後にジョンが勇気を振り絞って指摘する通り(何といじらしい!)、ロイの怒りをいよいよ爆発させてスタジオから出て行く口実を作る為にわざとミスったのだろう。
最後のジョージのジョンへの説教はかなりマジ。ほぼ恫喝。肝の据わったゲイを敵に回すもんじゃない。ただ彼に火を点けた直接の要因はマイクが拾っていないので分かり難い。余計にジョンが不憫に思える。
自分はずっとスタジオにいるのにジョージは5分と歌っていないというジョンの物言いから察するに、ジョージはそもそもこのリハーサルに遅参したのだろう。トラック冒頭で声出しをしているだけのジョージにロイがいきなり噛み付くのもこう考えれば自然ではある。
何にせよ、こんな代物を作品として上梓し衆目に晒してしまう事自体がこのバンドの面白い所、懐の深さか。
コメント
こんにちは。表題とは別件ですが、ライフツアーの動画拾ってきました。
分かち合いたいと思い一目散にやってきました。勝手ですみません。
https://www.youtube.com/watch?v=xoochAnYDBA&feature=youtu.be
素敵な楽曲が、ようやく生まれたように思います。
如何でしょう?
へのへのもへあさん こんにちは
彼の声は図太くなったけどこういったゴスペル/ソウルっぽいヤツにはぴったりですね。
で、これ、ソロ曲?それともバンドの新曲?
バンドですバンド、カルチャークラブです。
6月29日アメリカ、フロリダ・セントオーガスティンを皮切りに始まった「Lifeツアー(全78ヵ所)」で初披露のようです。
ところで2分52秒辺りから、「found of water」と歌ってるように聞こえるのですが、実際はウォラ―ですが。
「自分を見失っていた時もあったけど、そんなのは些細なこと。全てのチャンスは今俺が握っている。
君が笑ってる、ようやく辿り着いた(found of water)。あなたが希望をくれた。俺の人生を取り戻せた」
大まか過ぎですが、こんな感じを歌ってるんでしょうか?
カーマ紹介ページで歌いだしDesertを「水」にかけて私見を書きましたが、的外れでなかったのかなと思ったものですから。
如何せん私は聞きとりに難有りなので、デニーさんに、すみません頼りに参りました。
この「You」がジョンで「We」が彼らだったらいいなぁと。
(数日前から幾度か投稿したのですが、いずれも反映されなかったのですっかり諦めていました。
たった今CCセットリストサイトで昨年カバーしていたローリングストーンズの
You Can’t Always Get What You Wantの和訳検索を掛けてトップに上がったこちらにお邪魔したところ、
無事反映されてるのを見て慌てて書き込んでます。)
out of water でしょうかね。
When I’m out of water, I look to you. You know I do.
渇いた時は君が頼り、本当に
内容はもへあさんの仰る様な、表題 You give me hope が示す通りのものでしょう。そしてやはり彼は水に何か執着があるのかも知れませんね。
頂いたコメントがURLを含んでいると表示は一旦保留されます。スパム対策です(勿論もへあさんのはスパムではありません)。
本サイトで取り上げてるものではストーンズの他にボウイの Let’s Dance なんかもカバーしてます。Starman なんかは随分前からやってるけど。
ツアーの名義はなぜか Boy George and Culture club の様ですね。これを巡ってロイヘイとまたまた大ゲンカ… なんて事はもう無いか。
ご無沙汰です。
うっかりスペイン語バージョンのTAKE IT LIKE A MAN(1995年の自叙伝)に出合いまして、
初期のカルチャークラブ(ボーイジョージの視点)結成を、ようやく読み始めたところです。
で、ですね、ちょっと考察の一助になればと、スペイン語を英語にグーグル翻訳した語を掲載します。
>Jon was one of those rock types who had crossed to punk, a New Water.
>a New Water
今回アルバム「Life」挿入歌で、そちこちに Water が歌われてる理由がそこにあるのでは、と思ってる次第です。
彼はCC加入前、去年だったかにアルバムを出してもいる The Damned というパンクバンドに一時期ドラマーとして在籍していました。
水はやっぱジョージのキーワードっぽいですね。
>Water
ええ、ぽいですね。
>渇いた時は君が頼り、本当に
あれ?以前見たとき和訳はなかったような…それにしても、ああ、やっぱりグーグル翻訳とはぜんぜん違う…涙、羨ましいです
いずれ全編、和訳をお願いしたい気持ちがメラメラと、メラメラと燃えております。
>Boy George and
これ、ジョージによると「(2006年ジョージ抜きの再結成騒動が記憶に新しいことから)今回はちゃんと僕だよのメッセージを込めて」敢えてああした的なコメントを見ました。その辺動画コメントでも不評コメントが散見してて、それに対し然もらしい2件を。
・カルチャークラブを知らない若い世代でもボージョージなら知られている。いまどきのSNS世代の事情で
・ジョージは他3人と別口の契約を抱えているので、その事情で、と。
四等分で通してきた報酬も、4年前の再結成の折に、ジョージがやんややんや言い出してましたからね。
その分活動に従事する際は、常にバンドのフロントマンとして働いてきたこの4年だったようですけど…。
あ、あとボウイのカバー・レッツダンス、あれ全く異なる解釈があるんですね。
「君は完璧さ」に、歌詞とPV解釈とのそれぞれがあるように。
>アルバム制作の根底には実は少年の純粋な思いがあった
(Let’s Dance deniさんの文章から抜粋/引用)
私は選曲した理由を考えてるんですが、
ジョージ自身がティーンエイジャーのころボウイに傾倒した純粋な思いや、
歌詞にあるように、ジョンへの今の純粋な思いをこの曲に重ね、とどのつまり原点でもあり到達点でもある意味深い曲なのかな、と。飛躍し過ぎでしょうか?
ジョージのカバー選曲は、ハハ―ンそう来たかっていうのが混じってるから、想像するのが楽しいのです。
Let’s Dance のアレはプロデューサーのロジャーズの述懐から僕なりに思いを巡らせたものです。
Boy George and Culture Club は世良公則&ツイストみたいな…
Life の公式音源を聴いたら out of water じゃなくって under the water でした。するとここでは渇き/潤いの文脈で water を持ち出しているのでなく、ちょい前の When I don’t know who I am が表す様な不安感を言い換えた比喩表現なのでしょう。