歌詞和訳 Culture Club – Victims コード

Colour by Numbers,カルチャークラブ

83年発表の第2作アルバム Colour by Numbers のB面最終曲。
シングルは英3位を記録も、暗すぎるという理由で本作の米日でのシングルリリースは Miss Me Blind に振り替えられた。ただ少なくとも日本では発売されていれば売れていただろうに(仮定法過去完了)。

Victims

(O’Dowd, Moss, Craig, Hay)

Bbm Ab F# Fm Ebm F
Bbm Ab F# Fm Ebm F

Ab Bbm
The victims we know so well
Eb
They shine in your eyes
Db
When they kiss and tell
Ab Bbm
Strange places we never see
Eb
But you’re always there
Db
Like a ghost in my dream
Bbm Cm
And I keep on telling you
Db Eb
Please don’t do the things you do
Bbm Ab
When you do those things
F# Fm
Pull my puppet strings
Ebm F
(I) have the strangest void for you
振り回される人というのはごく身近にいるもの
キスして語らえば
君の瞳の中に輝く
見知らぬ地なのに
君はいつもそこにいて
夢枕に立つ亡霊の様
だから僕はどうかやめてほしいと
ずっと君に語りかける
君にそんな風にされると
糸を引いて操られると
君を思って僕の心には変な穴がぽっかり空いてしまう

We love and we never tell
What places our hearts in the wishing well
Love leads us into the stream
And it’s sink or swim
Like it’s always been
And I keep on loving you
It’s the only thing to do
When the angel sings
There are greater things
Can I give them all to you
愛し合う二人でもどうやったら
希望の井戸に気持ちを収められるのかは分からず
愛のいざなう奔流に
浮くか沈むか身を任せるだけ
それは今までもずっと同じ
それでも僕は君を愛し続ける
それ以外に無いから
天使が歌うとそこには
もっと大事なものが生まれるけど
君にそれを全部伝えられるかな

Bb EbM7 Bb EbM7

Bb EbM7
Pull the strings of emotion
Take a ride into unknown pleasure
Feel like a child on a dark night
Wishing there was some kind of heaven
心の糸を操って
未知の喜びへと踏み込む
天国みたいな所があったらいいのにと願う
闇夜におびえる子の様な気分

Cm
Oh I could be warm with you smiling
Dm
Hold out your hand for a while
Cm
The victims we know them
Dm
So well
Cm Cm7
So well
Dm Dm7 Cm Cm7 Dm Dm7
君が微笑めば僕だって優しくなれるから
少しの間でも手を差し伸べてほしい
声も上げぬ者の事は
よく知っているはずなのに

(drum break)
Bbm Ab F# Fm Ebm F
Bbm Ab F# Fm Ebm F

The victims we know so well
They shine in your eyes
When they kiss and tell
Strange places we never see
But you’re always there
Like a ghost in my dream
And I keep on telling you
Please don’t do the things you do
When you do those things
Pull my puppet strings
(I) have the strangest void for you
振り回される人はごく身近にもいる
キスして語らえば
君の瞳の中にも表れる
見知らぬ地なのに
いつもそこにいる
君は夢枕に立つ亡霊の様
だから僕はどうかやめてほしいと
ずっと君に語りかける
君にそんな風にされると
糸を引いて操られると
君のいない奇妙な虚しさに襲われる

Show my heart some devotion
Push aside those that whisper never
Feel like a child on a dark night
Wishing we could spend it together
少しでもひた向きさを示してほしい
小さな声でも絶対に無視などしないで
闇夜におびえる子の様な気分
一緒に過ごせたらどれだけいいだろう

Oh I could be warm with you smiling
Hold out your hand for a while
The victims we know them so well
So well
君が微笑めば僕だって優しくなれるから
ちょっとでも手を差し伸べてほしい
声も上げない者の事を僕らは
よく知っているはずなのに

Cm-Dm
Bbm Ab F# Fm Ebm F
Bbm Ab F# Fm Ebm F Bbm

アルバムの他の曲にも言える事だが、詞中の I は作詞者歌唱者のボーイジョージで you は彼と複雑な関係にあったドラムのジョンモスと見なせる。ただ本作に関してはその表題 (the) victims (= they)も恐らく彼らを暗に指している。(背景を知る前は第三者の犠牲者について歌っていると思っていた。尤も I が何のどんな犠牲者に思いを馳せているのかは一向に分からぬまま)
先日のベストヒットUSA出演がモス抜きの三人だったのも最早ファンなら疑問にも思わないのだろう。況してインタビューは曲の内容や作られた経緯に触れるものだった。ジョージは詞について personal という言葉を一度使いはしたが、全体としてはやはり一般化した婉曲な物言いに終始していた。
ただ日本以外では四人揃ったインタビューでかなり突っ込んだ話にジョージ自ら言及したりもしている。
「ダイバーシティ」なぞいう語の皮相だけが流布する様な国においては禁忌を設定しモスを外したのはまあ賢い選択かも。
マネジメントやジョージの意向か、それともモス本人が辞退したのかは勿論知り得ない。

さて本題。
アルバム中の本作を含む複数の歌に横断的に登場するのが (your) eyes と kiss で、これらは言わばキーワード。
前者は本心真情(の表れる場所)、後者は性愛、のメタファー或は婉曲言及だと私は見立てるが如何。

ただ、
When they kiss and tell
この kiss and tell は、醜聞を暴露する、とも取れ、すると主語の they はタブロイドの様なメディアや好奇の目を向ける大衆を指す事になろうか。

二人の愛は、願いの井戸(the wishing well)に行き着く事はなく、穏やかならぬ奔流(the stream)へと流れ出る。そしてその流れに翻弄され制御不能の二人の行く末は運否天賦(sink or swim = 沈むか上手く浮くか)。well の静水と stream の流水の対句に加え、その水の関連語の sink, swim を使った修辞。互いに安寧を求めるのは同じなのに齟齬が生じ、最後は運を天に任せざるを得ぬもどかしさ。
それでもひたすら愛し続ける(と宣言する)。

Show my heart some devotion
自身を犠牲者と憐れみながら、それでも希望的な響きのBb-EbM7に至り、相手に devotion(献身)を求める。

Push aside those that whisper never
文頭にある筈の never を文末に打遣っている。これは2行後の together との脚韻の為。
アングロサクソンは力尽くで構文をいじってまで韻律を整えようとする事が間々ある。これ、中国の詩にはあるや否や。
(ジョージはケルト系だというツッコミは今は受け付けません)
行儀の良い我々日本人にはそんな野蛮な習慣は無かった筈が今やアホみたいな陳腐な「ライム」が横行。開祖の如く祭られるいとうせいこうも満更でもなさげ。吉幾三にでもボコられてまえ。あ、いかん、行儀の良い私がこんな野蛮な事を口にするなんて…
閑話休題。
囁く様な小さな声を上げる者を脇に押し遣る様なまねは決してしないでくれ、とはつまり、些細な変化や機微にも思いを遣ってくれ、もっと平たく彼らの事実に即して言えば、ゲイやバイの様なマイノリティに思いを致す事をやめないでくれ、と言っているのだろう。
この思いの切実さは分かるが、でも振り返ってジョージのモスへの思い遣りは十分だったのか?

と、大きなお世話をぶっこいて本稿を閉めようと思ったけど、本作が心に食い込む名バラードであるのは否むべくもないのでその旨を記し置きます。

ところがそんな名曲だっつーのに、本作のスタジオリハーサル中にメンバー間で口論(てゆーか大ゲンカ、主にボーイジョージ vs ギターのロイヘイ)しちゃってて、しかも後にその顛末をそのまま作品として発表。
一聴すればこのバンドの更なる奥行(?)が感じられる事請け合い。

George Michael

もう一人のジョージによるカバー。