1982年に発表され、英3位を記録したヒットシングル。同年発表の北米版デビューアルバム Kissing to Be Clever に収録。翌83年には米2位を記録。
Time (Clock of the Heart)
(Culture Club)
Cm7 Dm7 Cm7 Dm7 Cm7 Dm7 Gm7 (x2)
Cm7 Dm7
Don’t put your head on my shoulder
Cm7 F
Sink me in a river of tears
Cm7 Dm7
This could be the best place yet
Cm7 F
But you must overcome your fears
いっそ涙の川に沈めてよ
居心地がいいからなんだろうけど
自分の不安は自分で乗り越えるもの
Gm7 Cm7
In time it could have been so much more
F Bb
The time is precious I know
Gm7 Cm7
In time it could have been so much more
F Gm7
The time has nothing to show
過ごした時間の有難さは分かってる
もっと時間を過ごせる筈だったのに
時は何も教えてはくれない
Cm7 Dm7
Because time won’t give me time
Cm7 Dm7
And time makes lovers feel like they’ve got something real
Cm7 Dm7 Cm7 F
But you and me, we know they’ve got nothing but time
Cm7 Dm7 Cm7 Dm7 Cm7 Dm7 Gm7
And time won’t give me time, won’t give me time
Cm7 Dm7 Cm7 Dm7 Cm7 Dm7 Gm7
Time, time, time
時の流れは恋人達を
何か確たるものを手にした気にさせる
でも君も僕も知ってる
それはただ時が流れただけだって
時は時を与えてはくれない
待ってくれやしない
ただ流れる時…
Don’t make me feel any colder
Time is like a clock in my heart
Touch we touch was the heat too much
I felt I lost you from the start
時は僕の心の中にも流れる
触れ合えばケンカばかり
君は僕のものじゃないって始めから感じてた
In time it could have been so much more
The time is precious I know
In time it could have been so much more
The time has nothin’ to show
Because time won’t give me time
And time makes lovers feel like they’ve got something real
But you and me, we know they’ve got nothing but time
And time won’t give me time won’t give me time
Time, time, time
過ごした時間が貴重だなんて知ってるさ
もっと時間を過ごせる筈だったのに
時は何も示してはくれない
だって時は待ってなんかくれないもの
確たるものを手にしたと勘違いする恋人達
でもそれはただ時が流れただけ
時は時を与えてはくれない
ただ流れる時…
(interlude in Ebm7 Fm7 Ebm7 Fm7 Ebm7 Fm7 Bbm7)
Bbm7 Ebm7
In time it could have been so much more
Ab Db
The time is precious I know
Bbm7 Ebm7
In time it could have been so much more
Ab Bbm7
The time has nothing to show
Ebm7 Fm7
Because time won’t give me time
Ebm7 Fm7
And time makes lovers feel like they’ve got something real
Ebm7 Fm7 Ebm7 Ab
But you and me, we know they’ve got nothing but time
過ごした時間が貴重だなんて知ってるさ
もっと時間を過ごせる筈だったのに
時は何も示してはくれない
だって時は待ってなんかくれないもの
確たるものを手にしたと勘違いする恋人達
でもそれはただ時が流れただけ
And you know time won’t give me time
And time makes lovers feel like they’ve got something real
But you and me, we know they’ve got nothing but time
確たるものを手にしたと勘違いする恋人達
でもそれはただ時が流れただけ
ただ流れる時…
第2作アルバム Colour By Numbers の邦版には確かボーナストラックとして本作が収録されていた。
それは生まれて初めて買った記念すべきレコードアルバムだった…
レコードも扱う電器屋が地元に一軒あったけど、そこにはキョンキョンとかしか無かった(ビートルズはあったか)。
仕方なしに隣町のレコード屋へ。
何かの雑誌で見知ったジャケットを求め、洋楽コーナーのCの棚(いや、五十音順だったか)を慣れぬ手つきで物色。パタ… パタ… パタパタ… あ、これか。抜き取って暫し裏表を眺める。これだ、間違い無い。
別に万引きするつもりもあるまいに、ワクワクと言うより寧ろドキドキしながらレジへ歩を進める。握り締めていた大枚を開いて店員に差し出す。(伊藤博文三人)
釣銭と、店名の書かれた厚めのビニール袋にすっぽりと真四角に包まれた盤を、神妙な面持ちで恭しく受け取る。こんなに緊張するんならいっそ万引きすりゃあ良かったと後悔。(冗談です)
店を後にすると、大人への通過儀礼を無事済ませた安堵から少し顔が緩む。LPを小脇に抱える様はさぞやカッコ良かろうと自惚れながら帰途につく。
今思えば、ボーナストラックなんぞと勿体付けられても知るかどーせその対価分もワシが払ろとんじゃろーがボケ、てなモンだけど、何しろ当時中二病真っ只中のナイーブな僕チンの事、それはそれは有り難がって聴いとりました。大枚こそはたいたけど、オマケが付いて来たぞ、ヤッター、とばかりに。
そして歌の世界の中に少しでも踏み込もうと、辞書を引き引き真剣に付属の歌詞や対訳を何度も読み返しました。(嗚呼健気)
それでもやっぱ肝心のトコは何やら分かった様な分からん様な…
作曲クレジットこそメンバーの連名だけど、恐らく詞は全てバンドのフロントマン Boy George の手によるもの。(フロントウーマン?)
当時はそのジョージとドラマー Jon Moss の複雑でビミョーな関係や、況してそれが詞に反映されている事なぞ知る由も無い。裏を知ったる今思えば、ドラムを叩く時、メンバーと写真に収まる時、モスは後ろ暗さからなのか、少し怯えた様な、またはそれに抗おうとする様な、終始ぎこちない面持ちだった印象。(彼の笑顔のイメージが無い)
片やジョージはモスに対する優位からか、不敵な表情が多かった様に記憶。(下衆の勘繰り?)
さて、冒頭、前PUと思しき丸い音のギターリックがコロコロと鳴る。むず痒いスライドもそれこそ心をくすぐる。鉄琴の音との相性も抜群。
そして、小気味好く響いてボーカルを支えるカッティング。
わ、これ、和製英語だったとは知らなんだ。んじゃ彼らはこの技法を何と呼ぶか。
strumming/brushing 鳴らすのと、ミュートして弾くの
一語で言えるのは無いみたい…
うーん冗長、和製語に軍配、ニッポン人バンザイ、簡にして要を得たり。
誰が言い出したかこれまた和製のチョーキングも、本来の bend(ing) より的確にして滋味溢れる言語描写と言える。
私見では弦のチョーキングは車のエンジンのチョークからの連想造語。(この連想造語って言葉は私の造語)
チョークを引くとエンジンの回転数が上がる。勢いエンジン音も高くなる。
弦を引き上げると張力が増し振動数が上がる。勢い撥弦音も高くなる。
ところで今の車にチョークなんて付いてるヤツあんのかなあ。
車の文脈で今チョーキングって言うと、塗装面の粉吹き(chalking)の事になろうか。
chalk = 黒板に書くチョーク だから辨別するとすれば原語に音を寄せてチョウク(choke)とチョーク(chalk)とやればいいだろうがどーせ定着すまい。
って、随分話が逸れちゃいました。
話を戻します。
リズムセクションで耳を引くのは、それこそ時を刻むかの様なパーカッシブなモーグベースとシモンズのスネア。当時の先端電子音。私が、いや僕チンが New Wave にシビレたのは、曲そのものも勿論あろうが、曲を彩るこれらの新鮮な耳新しい音色のせいも多分にあったのだろう。
シンセンな音を出すからシンセって呼ぶんだ、と思ってた程。
ってのはウソですが、新奇珍奇な音響が Old Wave と一線を画す大きな要素だったってのはホントです。(少なくとも僕チンの場合)
曲を際立たせるとりどりの色彩。アルバム表題 Colour By Numbers ともリンクする。
次に曲構成。
第1バース、いきなり Don’t(するなかれ)と否定命令で物語りは始まる。
you に対する、思わせ振りな態度はやめて自立しなさい、という8小節の説教を終えると、サビへなだれ込む。
同じく8小節間、過ぎた時の大切さを改めて確認すると同時に、その非情さを自身に言い聞かせる。ハモも参加したそのサビのクライマックスも終わりかと思いきや、because の発声で聴き手を引き留め、間髪入れず第2サビへと展開。弛緩なぞ許さぬまま、時(の不断の経過)に対する人間の無力不如意を今度は我々聴き手に言い含めるかの様。歌唱に覚悟が窺える分、哀切さが余計に感じられる。(でもそれもモスへ当て付ける為の方便かも知れない)
その第2サビの最後の最高音歌唱を待ち受けるのがイントロのギターリック。
この合流はとても自然で流暢。それもその筈、コードが両方 Cm7 Dm7 だから。
第2バース、再び Don’t で始まる you への執拗な牽制。
で、挙句に曰く「始めからあなたは僕のものじゃないって感じてた」
一見しおらしい、諦念を吐露するかの告白。
でも歌うジョージの背中を見ながらドラムを叩くモスにとっちゃ強烈な当て付け。
そりゃあんな顔にもなるわなあ(どんな顔?)。
そして全く同じ第1第2サビをもう一周。
ハモが表題 time を連呼する中、サックスが割り込み、間奏へ。
そのサックスに先導されベースに後押しされる形で1音半上げ転調が完了します。これはいささか突飛にも聞こえるけど、「時」と同じく伴奏が歌い手を無情にも置き去りにするかの様でもある。(半音上げじゃ生ぬるい?)
間奏明け、それでも歌い手は同様に1音半ジャンプして食い下がる。伴奏に追いすがる。これまた「時」に対するが如く。
そして同じ詞に同じ節でも、上げ転調の分、歌唱の切実さは弥増す。
意外にも本作のボーカルメロディーの構成音は6音で、音域はオクターブ足らず。転調を考慮してやっとオクターブ余り。この少ない音数の組合せでこれだけの切なさを醸し出すのは、歌い手ジョージの妖術の為せる業に違い無い。
第1サビは、構造上は普通ならブリッジと見なすべき所。でもこれが橋渡しの8小節(middle 8)だなんてとても思えない。
そして息つく間も与えず展開した先もまた一味違う全く別のサビ。別の2曲分のものとも言えるサビが1曲に。一粒で二度おいしいとは正にこの事。これが本作のボーナスたる所以?(違うだろうけど)
無冠詞の time が意味するのは一般的な「時間」或は「流れる時」。
例) Time flies like an arrow. 光陰矢の如し
それに対し詞中の、定冠詞付きの the time が意味するのは、ジョージとモスが共に過ごした時間、と考えて、語法上も、彼らの事実上も、的を失してはいまい。
無論僕チンは以上の如き分析的な(野暮な)聴き方をしていたわけではないが、つぶさに見る(聴く)事で名曲の名曲たる所以の一端も垣間見えようというもの。
人は、過ぎ去りし時の余韻にしがみつき、その幻影に思い出という美名を与えて自慰するもの…
なーんて分かった風な口をきいてる自分自身が今もセンチメンタル無限ループにはめられてしまってるわけで…
(でも、そこのあなたも同じでしょ?)
ループにピリオドはやはり打てぬ。果たしてフェイドアウト。
こうして「時」は私に何も示さず、何も与えず、行ってしまった…
コメント
Culture Clubの和訳からここに、たどり着きました。貸しレコード屋(というのがあったんですよ!)で借りたColour By Numbers、確かにこの曲がボーナストラックとして入っていて、この曲が一番好きでした。単調なメロディだとは思ってたけど6音しかないってのは驚きです。この曲の魅力を言葉にするのは難しいなぁと感じていましたが、すばらしく言語化されていて感動しました。
tanpopo さん ありがとうございます
歌メロ構成音もう一回確認したら G Bb C D Eb F でやっぱオクターブ足らずの6音でした。貸しレコード屋は僕も学校帰りに毎日の様に行ってましたよ。