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歌詞和訳 The Police – Every Breath You Take コード

1980s

83年発表の第5作にして最後のアルバム Synchronicity のB面1曲目。
アルバムに先立ちシングルとして発表され、米で8週、英で4週1位となるポリス最大のヒット曲。

Every Breath You Take

(Sting)

G#
Every breath you take
Fm
Every move you make
C#
Every bond you break
D#
Every step you take
Fm
I’ll be watching you
G#
Every single day
Fm
Every word you say
C#
Every game you play
D#
Every night you stay
G#
I’ll be watching you
お前の息づかい
一挙手
お前が断ち切る縁
一投足
その全てを俺は見つめていくよ
昼も
お前の言葉も
駆け引きも
夜も
俺はずっと見つめている

(middle 8)
C# C#/B
Oh can’t you see
G#
You belong to me
Bb
How my poor heart aches
D#
With every step you take
ああ分からないのかい
お前は俺のもの
俺の哀れなこの胸がどれだけ痛むことか
お前の一挙手一投足で

G#
Every move you make
Fm
Every vow you break
C#
Every smile you fake
D#
Every claim you stake
Fm
I’ll be watching you
お前の仕草
反故にした誓い
嘘の微笑み
要求
俺はずっとお前を見てるんだよ

E
 Since you’ve gone I’ve been lost without a trace
F#
 I dream at night I can only see your face
E
 I look around, but it’s you I can’t replace
F#
 I feel so cold and I long for your embrace
E
 I keep crying baby, baby please
お前が去ってしまってから俺は跡形もなく姿をくらました
夢枕に見るのはお前の面影ばかり
周りを見回してもお前の代わりになる者なんていない
ものすごく寒いんだ お前の温もりが恋しい
俺は叫び続ける、愛しい人よ、お願いだ

(interlude)→(middle 8)

Every move you make
Every vow you break
Every smile you fake
Every claim you stake
I’ll be watching you
お前の動き
破った誓い
空々しい笑み
求めたもの
全て見続けてやる

Every move you make
Every step you take
I’ll be watching you
I’ll be watching you
G# Fm C#…
(Every breath you take)
(Every move you make)
(Every bond you break)
(Every step you take)
I’ll be watching you…
一挙手
一投足
見逃しはしない

見つめていたい…

甘いラブソング… というのは多くの人の幻想だった。
私も多分に漏れず、イントロの9度のアルペジオと運指の擦弦音にのっけからウットリしたクチ。
Every bond you break の所に少し違和感を覚えてはいたものの追究もせず。
ただ我々だけでなく英語話者の多くも gentle little love song だと誤解していた様です。
で、実際はと言うと… ストーカーソングです。
作者スティングが離婚した頃に書いた曲らしく、て事は別れたカミさんはこの歌の真意にさぞかしゾッとした事でしょう。

ビデオの冒頭、灰皿がスネアドラムに変わり、独白が始まる。
終盤、I’ll be watching you のリフレイン。
そしてフェイドアウトに伴い、コープランドのトラディショナルグリップが刻むスネアが今度は灰皿に逆戻り。タバコの吸殻は増えている…
つまり独白の間ずっと、監視していたのです…
真意に触れた今となっては、殆ど短編ホラー。
初めからその真意を読み取った者が少なく勘違いした者が多かった事もメガヒットの一因ではあろう。

当時日本にはストーカーなるカタカナ語は存在しなかったが、それは執心される側の被害意識に焦点が定められる事が少なかったからだろうと察する。況して執心する側に自己の客観視なぞ望むべくも無く、本作のミドルエイトにも
How my poor heart aches 俺の哀れなこの胸がどれだけ痛むことか
という描写があり、それは即ち被害者は自身の方だと言って憚らないのです。

男女共モテる者は一握りで、そうでない多数者の惚れる回数は、惚れられる回数より多くなる。
だからこそ思い慕う様は、それが異常な執着であれそんなものは捨象され、多数の共感を呼び、勢い思いを寄せられる側の快不快が斟酌される事は少なくなる。
更には日本では判官贔屓が思慕の念への共感に拍車を掛ける事もあり得、すると日本には本作がより誤解され易い精神的風土があるのかも知れない。

考えてみれば洋邦問わず、異性への思慕を吐露する歌が圧倒的多数で、モテてモテて困っちゃうなんて歌はかなり少数だろう。あってもそれは少数の共感しか得ないだろうからヒット曲には当然なり難い。それに、もはやそんなのはラブソングとも呼べない、ただのイケ好かない奴の歌って事になる。
Rainbow の Starstruck なんかはそんな数少ないモテる側の歌の一つか。
と思ったけど、そこに描かれるのは異性から受ける思慕と言うより、バンドのグルーピーから受ける、それこそスト-カー被害だから、ポリスの本作の対極の立場の歌と言えようか。

さて本作の曲構成は現代には稀な AABACABA で、ここがサビだとハッキリ言える所は無い。
Aパートのコード進行は Stand By Me 等と同じ I-VI-IV-V で、これについてはスティング本人も凡百に同じだと言っている。
私も本作の魅力の半分はアンディサマーズの奏でるアルペジオだと思います。
そのギターの音に多くの人がウットリしたまま詞を誤解してしまった…
サマーズ本人による解説に、
 root, fifth, second, third, up and down through each chord
 根音、5度、2度、3度をそれぞれの和音で行き来する
とあるので、9でなく2度と言うべきなのか(ジャズ畑の人だから?)。

洋楽の邦題はミスリーディングな事も間々あるのであまり好きではないけど、本作のは(結果的に)ちょっと面白い。
I’ll be watching you のラインを拝借して他意も無く変換したものではあろうが、今となっては何だかとてもおぞましい表題に思えてきませんか?

見つめていたい…


追記

作者本人による解説
https://youtu.be/LAqBuHXbUns

先述の通り Stand By Me を引き合いに本作のコード進行が独創的なものではない事を告白し、次に詞について語り始める。

1:57

… and the lyrics you could get from a rhyming dictionary, you know, make/take/fake/wake and yet it has something about it which people respond to and it seems at first like a very romantic kind of seductive song which is what I initially intended it to be. But then when you listen to it, you realise there’s a compulsion behind it to the point of obsession where it becomes quite sinister.

… そして詞は make/take/fake/wake などと、押韻辞典からでも得られるもの。ただそれでもみんなが反応する何かがあり、最初はとてもロマンチックで魅惑的な歌に思えるが、それは僕が当初意図していたもの。 その一方、よく聴くと非常に不吉なまでの、執念とも言える強い衝動がその背後にあるのが分かる。

2:29

All the time I get people writing letters; “It’s our favourite song and it was played at our wedding.” And I, (laughs) you know, and I never contradict people about what the meaning of the song is. It’s whatever it means to you, that’s what the meaning is. But for me it has this double edge thing and I think it’s pretty powerful, you know, still what people want to hear.

いつもこんな手紙を目にする。「それは私達のお気に入りの歌で、結婚式でもかけました」ただ(笑)、僕は決して歌の意味が何かについて否定したりはしない。何であれ、ある人にとって意味するもの、それこそが歌の意味だから。 でも僕にとっては両義があってとてもパワフルで、それでいてみんなが聞きたがるものだと思う。

… と、ここで語り手が替わり、にべも無くこう言う。

2:51

It’s all about stalking someone, isn’t it?

人を付け回す歌なんでしょ?

まあ詞をガン見して玩味すればこんな印象にもなるだろう。
で、この人誰?関係者だろうけど、ヒューパジャムじゃないし…

さて最後にスティングクイズ
インタビュー(引用文)中、彼は一つ明白な嘘をついています。それは何?
こたえはコメント欄にて発表します。

コメント

  1. takagi より:

    >ただ我々だけでなく英語話者の多くも gentle little love song だと誤解していた様です。
    これ、どうなんですかね? 僕はこの曲少し後追いなので、当時の世評に詳しくないですけど・・・

    >男女共モテる者は一握りで、そうでない多数者の惚れる回数は、惚れられる回数より多くなる。
    >だからこそ思い慕う様は、それが異常な執着であれそんなものは捨象され、多数の共感を呼び、

    僕は、歌詞(もちろん対訳)読んだときすぐに失恋の歌だな、と感じて
    まさにそのかなわぬ苦しい想いを歌ったからこそ多くの支持を受けたんだと思っているんですが。

    • deni より:

      作者本人による解説動画を引っ張ってきて追記しました。詞の意味合いをそれこそ曖昧にしておくのは作詞者の常套手段ではあるけど、解釈者の一人としてストーカーソングと断定するのもあまり適切ではなかった気もします。

  2. 八兵衛 より:

    如何にもなラヴソングのふりしてストーカーソングなところがこの曲の最高にかっこいいところだと思ってます。The Police自体そういう、シニカルなバンドでしたね。

    ところで「明白な嘘」の答えはなんでしょうか?

    • deni より:

      あ、忘れてました。正解は…

      make/take/fake/wake の内 wake は歌詞に無い、でした。
      わざわざご通知頂いたのにしょーもなくてすんません。しかもまあこれは嘘と言うより、同韻語を列挙する内に口がすべった位の事だから寧ろ嘘つきはこっちでしょうか。

      >シニカルなバンド
      パンクの正統を自任する連中、例えばポールウェラーなんかにスティングは死ぬほど嫌われてますが、そーゆーのも含めて好きです。うひゃひゃひゃ。演奏技術を極めた様な音楽家はきっと周りの雑音なんて気にも掛けないでしょうが。こと弦楽器の弾き語り技術で言えば彼はポピュラー音楽界のトップクラスだと思います。

  3. 八兵衛 より:

    そんな答えでしたか・・・。
    歌いながら弾く技術はすごいですね。けっこう若い頃から難しいことしてる気がします。あと、ベースのことはよくわからないのですが、親指と人差指で8ビート弾いたり、ちょっと変わった弾き方してませんかね。

    • deni より:

      ソロになってドミニクミラーが入るまではライブでもギターは一人でまかなってて、しかもストロークジャカジャカでなく指弾き、更には歌唱がインテンポじゃなかったり。それって密かにすげえ難しい事だと思います。muscle memory がハンパない。ベースはポリス時代はほとんどピックでしたが、最近は親/人差指が多いみたいですね(逆に中/人差指って見た事ないかも)。すごく力が抜けてて、行き着く所はここかと感じる一方で、彼の楽器演奏の原体験たるスパニッシュギターに回帰している気もします(The Last Ship もすごい)。