80年発表の第14作アルバム Scary Monsters (And Super Creeps) 所収。
英1位のヒットシングルだが米国では余り売れず。
Ashes to Ashes
(David Bowie)
Am G Dm Am
Em
In such an early song
C
I’ve heard a rumour from Ground Control
D
Oh no, don’t say it’s true
F
They got a message from the Action Man
C Em F
“I’m happy, hope you’re happy too
G
I’ve loved all I’ve needed love
E/G#
Sordid details following”
覚えてるかい
地上管制からこんな噂を聞いたんだ
ああ、これが本当の事だなんてマジ勘弁だけど
例の飛行士から伝言を受け取ったらしい
「私は幸せです、あなた方もそうありますよう
私は皆を愛してきたし愛が必要でした
良からぬ詳細はこの後」
E
Just pictures of Jap girls in synthesis
G D
And I ain’t got no money and I ain’t got no hair
F C Em
But I’m hoping to kick but this planet is glowing
日本の女形の浮世絵だけ
僕には金もなければ髪もない
薬なぞ断ち切れるといいのだが
この惑星は輝いている
C Am
We know Major Tom’s a junky
F G
Strung out in heaven’s high
Am G Dm Am
Hitting an all-time low
トム少佐がジャンキーだなんてみんな知ってる
キメて天にも昇るほど最高の気分かと思えば
今までで最低の心地にもなってしまう
I’ll stay clean tonight
But the little green wheels are following me
Oh no, not again
今夜こそ薬なんてキメないって
でもちっちゃな緑の車輪に追っかけられちまう
ああ、もう二度と御免だ
I’m happy, hope you’re happy too”
One flash of light but no smoking pistol
ハッピーだ、あなた方もそうありますよう」
閃光が見えたが煙を吐くピストルは見当たらず
I’ve never done bad things
I never did anything out of the blue
Want an axe to break the ice
Want to come down right now
悪い事をしたわけでもない
思いつきで何かやった事だってない
氷を割る斧が欲しい
今すぐにシラフになりたいんだ
→(chorus)
G Dm
You’d better not mess with Major Tom
Am G
My mama said to get things done
Dm Am
You’d better not mess with Major Tom
やるべきことは最後までやりなさい
トム少佐なんかに関わってちゃダメ
ボウイにとって本作は70年代の総括だった。
ある時は自身に内在する狂気に怯え、またある時は顕現したその狂気に向き合い、それらの実体験をすら貪欲にも自作品のネタにしてきた。そんな過去を振り返りながら歌が形作られたのだろうか。
薬物が狂気からの逃避手段だったか否かは知りようも無いが、その使用(常用)や幻覚と思しき表現がこの詞にはあからさまに多く見られる。
冒頭、10年程前の自身初のヒット曲 Space Oddity を持ち出す。
このヒットが彼の70年代の歌手人生をある程度方向付けたと言えるだろう。
曲中の主人公は Major Tom だが、まずは the Action Man などという持って回った言い方にしてサビまで引っ張っている(ま、Ground Control って大ヒントを出しちゃってるけど)。
一応公式の歌詞に倣って2箇所に引用符を付した。
ただ、1つ目は Major Tom による語りと見なして間違いないだろうが、他にも語りと思しき箇所があるのに加え、junky だと断じた Major Tom に自身を重ねている様な節もあるので、参考に留める。
Just pictures of Jap girls in synthesis
合成の日本の女の絵
この2行はよく分からない。
2行目は恐らく歌舞伎の女形の浮世絵の事だろうとは思うが。
下のコンサートやカバーでは1行目は killing me と歌われる。
すると2行目は独立した名詞句になるが、やはりなぜここに持ち出しているのかは分からず終い。
女形はボウイのバイセクシュアリティの暗示で、そのイメージを払拭せんとする表現なのか。
I’m hoping to kick が下のカバーでは I would like to quit に差し替えられている事からも分かるが、
kick = kick the habit = 麻薬の習慣をやめる
という意味。
earth to earth, ashes to ashes, dust to dust
土は土に、灰は灰に、塵は塵に
イングランド国教会の埋葬時の祈祷のこの一節を流用して表題としたのは明らか。
特に信心も無く況してキリスト教の事なぞさっぱり分からぬ私も、この虚無的な響きの一節は嫌いではない。元々土だったものが土に還るというのは真理だろうし。
やはりボウイは自身の過去を一旦葬り去るつもりでこんな詞を書いたのか。
funk to funky はフィラデルフィアソウルに傾倒していた時期のアルバム Young Americans (75年)と Station To Station (76年)の暗示で、low はそのままアルバム Low (77年)への言及だと巷間言われる。
恐らくそれは間違い無かろうが、すると Ziggy のメタファーはどこにあるのかと訝る。
ひょっとしたら女形がそうなのか。
strung out = 麻薬を常用して
hit an all-time low = 史上最低を記録する
out of the blue = 出し抜けに
break the ice
氷を割る、という原義から派生して、(座を和やかにする為に)話の口火を切る、(困難なことの)皮切りをする、という比喩的意味を持つに至る。
ここでは後者の意で、何とか状況を打破したい作者の心の叫びを表す。
come down = 麻薬が抜ける
最後は nursery rhyme (マザーグース)の表現に倣ったライン。
My mother said
That I never should
Play with the gypsies in the wood
2002年パリ公演
冒頭、白塗りピエロを自ら笑い飛ばす。自分で作ったキャラクターに対する羞恥を客前で平気で吐露してしまうのがボウイのオモロい所。
ここでははっきりと killing me と歌っている。
Tears For Fears によるカバー
彼ら独自のアレンジを色々試したが、結局このほぼカーボンコピーに落ち着いたそうな。
シンセのリフも全く同じ音色(に聞こえる)。
色んなアレンジのカバーもある中、この忠実なコピーは秀逸だ。それは取りも直さず原版の秀逸の証左。
こっちもはっきりと、killing me と歌っているのに加え、I’m hoping to kick を I would like to quit に差し替えている。
作者が認めていたドラムパターンの借用元
Madness – My Girl
コメント
はじめまして。このサイトの和訳をいつも読ませていただいている者です。
The shrieking of nothing is killing 無の叫びが殺す
Just pictures of Jap girls in synthesis 合成の日本の女の絵
の部分の2行目についてなんですが、手元の歌詞カードには、「統合された日本の少女たちの写真」とありました。
占領下の日本人の少女が迫害を受けたことを表しているのではないかと解釈していましたが、この解釈は間違いでしょうか?
aguchan さん はじめまして ようこそ
結論から申し上げますと、解釈についての正誤は僕には分かりません。対訳の「女形の浮世絵」なんてのも、ボウイが日本文化に造詣が深い(らしい)事から推測した言わば安易で勝手な解釈の一つに過ぎません。なので必ずしも「正解」でない事を示すべく本文中によく分からないと言っている次第です。ただ in synthesis は統合と言うより(化学)合成の意味合いで使われる事の多い句の様です。
返信ありがとうございます
メールを送らせていただきました。ぜひお願いします。
メンバーではなかったんですね…勘違いでした…
ボウイファンを自称する身として恥ずかしい(笑)
返信ありがとうございます!
化学合成という意味だったのですね。それは知りませんでした!わざわざありがとうございました!
それと もしよかったらでいいのですが「Scary Monsters」の和訳をしていただけないでしょうか。
特に“She wails Jimmy’s guitar sound, jealousy’s scream”という部分をdeniさんだったらどのような解釈をするのか気になっています。
ジミーというのは誰なのか?ジミヘン?ジミーペイジ??
ボウイがソロデビューする前に加入していたバンドのギタリストは、当時セッションミュージシャンだったジミーペイジだったという話をどこかで目にしたので、ジミーペイジのことかもしれませんね。
ネット上に流布する和訳を読み漁っても納得する解釈は得られず、なおかつ私自身英語への造詣が深くないので、deniさんに訳していただけたら嬉しく思います。
大変身勝手なお願いですが訳していただけると幸いです。
長文失礼しました。。。
「合成」だったとしてもこのラインの表すところがはっきりしたわけではないんですが…
ジミーペイジはボウイがいた The Manish Boys の I Pity the Fool でソロを弾いただけでメンバーではありません。当時ペイジは引っ張りだこだったみたいでキンクスやら色んなとこで弾いてますからね。
和訳依頼はContactページからメールを下さい。実現のお約束は出来かねますが。お願いしまーす。