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忌野清志郎の「デイ・ドリーム・ビリーバー」とモンキーズの Daydream Believer

1960s

コンビニやTVで耳にする事も多い忌野清志郎の「デイ・ドリーム・ビリーバー」。
これはモンキーズの1967年のヒットシングル Daydream Believer のカバーだが、その日本語詞はオリジナルの英詞を翻訳したものではない。「目覚まし」「夢」「クイーン」といった原詞中のキーワードを流用してはいるものの、ほぼ忌野の創作と言える。そしてそれは彼の母親への思いを反映したものだった。

ずっと夢を見て安心してた

ずっと夢見させてくれてありがとう

憧れであり夢であった母親。
本作をカバー曲として選定したのはノスタルジーに訴える牧歌的な曲調とデイドリームという強烈なキーワードが母親への思慕と直結したからなのだろう。
二人の母の存在と不在。
忌野の現実はそのまま夢だったのだから彼の半生は正に daydream(白昼夢)だったと言える。すると忌野詞こそがこの曲に付けるべき本来の運命的な詞だったとすら思える(原曲の詞先曲先の別は不明)。

母を称するにクイーンとは突飛にも思えるが、目覚まし等と併せてこれらは原詞へのオマージュ。
また、to a と「僕は」、and a と「そんで」の音の類似にはニヤリとさせられる。言語が異なるのに韻律を一定程度保存し得ている。

忌野の歌は上手いのかどうか私にはよく分からなかった。奇抜な見た目も手伝い、うわずった歌い方の変な歌手だとすら思っていた。メリークリスマスショーで彼の第九の歌唱を耳にするまでは…
それは衝撃だった。
声の抜けとピッチの正確さに思わず目を見張った(耳を聴き張った?)。程無く、奇異に感じていたものの正体が判明。それは非常に高度な歌唱だったのだ。歌っている時の気持ち良さや情動の表れが彼の場合は音符通りに収まり切らず、私の様な凡人の感覚ではその機微に触れるべくもなかったのだろう。
楷書の達者の崩し字の味にも似た、忌野の歌唱のシャープの妙。
(因に存命で一番歌の上手い日本の歌手は個人的には細川たかしだと思うが、以前は彼の事も「うわずった歌い方」の人だとばかり…)

追記:細川がチェッカーズを歌うのをTVで見た。さぞ上手いのだろうと期待して見た。ズッコケた。彼は民謡のリズムでしか歌えない様だ。それはそれでスゴいけど。

さて、上の二つのデイドリームに忌野の歌の上手さと音感の鋭さが如実に現れている。
縦横無尽のハモり。揺るぎない音程。
そのハモのメロディを事前にきっちり練習していたかは知り得ぬが、私には殆ど即興に思える。それは自身がギターで鳴らす所与の和音に加えて更なる心地良い響きの一音を全く事も無げに発声している様に聞こえるから。
歌い手の気持ち良さが聴き手にそのまま伝わる。ハモの本義たる主旋律との絡みの妙は言わずもがな。

忌野のインスピレーションの元となった原版のモンキーズの詞にも少し面白い歴史があります。

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