1971年発表の第4作アルバム Hunky Dory の開始曲。
Changes
(David Bowie)
CM7 Db6 Dm7 Eb7
Oh yeah F7 D F7 D F7
F G
And my time was running wild
F C
A million dead-end streets and
Em7
Every time I thought I’d got it made
F G
It seemed the taste was not so sweet
CM7 Dm7 Em7 Emb7
So I turned myself to face me
Dm7 G
But I’ve never caught a glimpse
CM7 Dm7 Em7 Emb7
How the others must see the faker
Dm7 G
I’m much too fast to take that test
以前はやりたい放題で
行き詰まってばかり
うまくいったと思っても必ず
後味はそんなに芳しくはないと感じてた
だから自身に向き直ったけど
周りの人がインチキ野郎をどんな風に見るかを
俺は感じ取ったためしなんか無い
楽しみばかりを考える俺は
そんな品定めなど受けなかった
C C/B C/A
Turn and face the strange
C/G F
Ch-ch-Changes
F/E D G
Don’t want to be a richer man
F
Ch-ch-ch-ch-Changes
C C/B C/A
Turn and face the strange
C/G F
Ch-ch-Changes
F/E D
Just gonna have to be a different man
F/A C/G Bb F
Time may change me
C/E G/D F/A C
But I can’t trace time
(振り返って奇異なものにも向き合え)
かっかっ変わろう
金持ちになりたいわけじゃない
へっへっへっへっ変化
(向き直って奇妙なものにも目を向けろ)
かっかっ変わろう
ただ今とは違う男にはならなきゃね
時は俺を変えるかも知れないけど
俺は時をたどる事は出来ない
But never leave the stream
Of warm impermanence and
So the days float through my eyes
But the days still seem the same
And these children that you spit on
As they try to change their worlds
Are immune to your consultations
They’re quite aware of what they’re going through
はかなくも止まぬその流れから
決して離れる事の無いその様子を眺める
すると過ぎ行く日々が俺の目に浮かぶけど
それもやっぱり前と同じように見える
世界を変えようなんて子供達が言い出すと
アンタらは彼らに唾でも吐き掛けるんだろうが
彼らはアンタらのお説教になんか慣れっこさ
自分達が経験してる事が何だか
よく分かってるんだから
Turn and face the strange
Ch-ch-Changes
Don’t tell them to grow up and out of it
Ch-ch-ch-ch-Changes
Turn and face the strange
Ch-ch-Changes
Where’s your shame
You’ve left us up to our necks in it
Time may change me
But you can’t trace time Dm Em
F C F/C C
Strange fascination, fascinating me
F G
Changes are taking the pace I’m going through
(振り返って奇異なものにも向き合え)
かっかっ変わろう、ガキっぽい事なんかやめて
大人になれって言ったって無駄さ
へっへっへっへっ変化
(向き直って奇妙なものにも目を向けろ)
かっかっ変わろう
どっちが恥を知るべきなんだろうね
こんな目に遭わせたのはアンタらだろ
時は俺を変えるかも知れないけど
アンタらは時を後戻りなんて出来ない
奇妙な魅力が俺を虜にする
俺の変化のペースで物事も変わって行く
Turn and face the strange
Ch-ch-Changes
Look out you Rock ‘n’ rollers
Ch-ch-ch-ch-Changes
Turn and face the strange
Ch-ch-Changes
Pretty soon now you’re gonna get older
Time may change me
But I can’t trace time
I said that time may change me
But I can’t trace time
(振り返って奇異なものにも向き合え)
かっかっ変わろう
でもお前らロケンローラー達も注意しな
へっへっへっへっ変化
(向き直って奇妙なものにも目を向けろ)
かっかっ変わろう
年を取るのもあっと言う間だからな
時は俺を変えるかも知れないけど
俺は時をたどるなんて事は出来ない
もう一回言うぜ、時が人を変える事はあっても
人が時を後戻りなんて出来っこないんだよ
Dm7 Em7 Eb7 Dm7 DbM7 CM7
流布する歌詞はおろか公式冊子に掲載のものですら原盤の実際の歌唱と符合しないのでヒジョーにメンド臭い。記録が杜撰。
例えばサビの
Just gonna have to be a different man の所、
手持ちの The singles 1969 to 1993 付属の冊子には
Don’t want to be a better man との記載。
こんなモン、聞き違いや書き損じの次元じゃないのは明白。
Hammersmith Odeon 公演
この Ziggy 期の歌唱を聞き取ったものの流用か。
ただこの公演での実際の歌唱は、
Just want to be a better man
だから意味も全く逆。つまり二重に間違っちゃってる…
出版元が色々代わったのもあるだろうが、原詞の様なものがそもそも存在しないのか。
ま、こんな事言ってても始まらないので、中身に移ります。
1番
語り手が過去を振り返る、自省と思しき独白で始まる。
そして、
So I turned myself to face me
自分に向き合おうとする、とても行儀の良い主人公。
(デモでは、Now I place myself to face me と歌唱。ま、意味に大差なし)
How the others must see the faker 余人がインチキ野郎をどう見なすべきか
周りの目、つまりは所謂道徳やらモラルの事。
しかし、そんな周りの目を気にした事など無い(never caught a glimpse)と主人公は告白する。
ここも Of how… と記載されているものばかりだが、原盤でも、上の動画も含めいくつかの公演でも、of は一度も言っていない。
ただ、a glimpse of… と一続きにすれば語法上は落ち着く。
fast = 次から次へと歓楽を追う
例) fast liver = 道楽者
イーグルスの Life In The Fast Lane の含意にも似ているだろうか。
running wild ともある様に、せわしない日々を送る中、周りの事など気にならない[しない]。
楽しい事に感け、周りの目による test など受けなかったと言うのだ。
過去の自身を faker と半ば認め、自省しつつもしかし自身のこの fast な性質を一部肯定的に捉え、続くサビで、変わり続ける事の意義を高らかに歌う。
Turn and face the strange
davidbowie.com には strain と掲載。
(ボウイの歌唱担当部分でないからか、上記の冊子には記載自体が無い)
これに関してはどっちにも聞き取れる。
ただ、文脈から考え、またブリッジの Strange fascination などという強烈な言葉を考慮に入れれば、strange と取るべきだろう。
以前読んだピーターバラカンの訳詞本では確か stranger となっていた(和訳の方は失念)が、これはあり得ない。シラブル(音節)が一つ増えれば音符も一つ増える筈だから。
ツアーバンドメンバーによるこんな「証言」もあった。
…we were singing ‘Changes’ for the purposes of a sound-check. When we reached the chorus David stopped the band, walked over to Gui and me, and asked us to sing our part. We duly obliged. David doubled up with laughter. For two-and-a-half months we had been singing ‘turn and face the strain‘ instead of ‘turn and face the strange‘. From then on, every time we performed that song David would stick his arse out towards us and make like he was trying to squeeze one out, which would make us both laugh and fluff the line even worse.
英語話者たるメンバーでも誤認していて、ツアーの2ヶ月半もの長きに亘って strain と歌っており、ふと気付いたボウイがそれをからかって面白がったという、何だか微笑ましいお話。
でもつまり、当の作者ですら長い間気付かなかったという事になる。
(で、自身の公式サイトの誤った記載には今でも気付いていない…)
2番
方丈記の冒頭の様な東洋的無常観。
warm impermanence… 何じゃこりゃ…
warm は、活発な、くらいの意味か(対訳には、止まぬ、とした)。
試しに両方ひっくり返してみる… cool permanence
で、検索… こんな言い回しは少なくともネット上には無かった。
川の流動性を表す、ボウイ独自の修辞か。
そして独白に you がいきなり登場。これは children に対峙する大人への呼び掛け。
immune = 免疫のある
後天性免疫不全症候群 AIDS(acquired immuno-deficiency syndrome)の中の I と同源の言葉。
大人の小言には免疫が出来てるからへっちゃらだと言うのです。
そして、子供達だって周りの事はよく分かっているんだと擁護。
しかし、最後のサビに出てくる you は、振り返って今度は子供達を指す。
お前ら若いロケンローラー達も、ロックにうつつを抜かしている間に、すぐ年を取っちまうぞと、警鐘を鳴らす。
本作の出た71年当時には既に rock ‘n’ roll(er) という言葉は古めかしいものになっていたので、揶揄を込めた、前と同じ大人への呼び掛けかとも考えたが、年を取る(get older)と後続するのでやはりこの you は子供(若者)を指すものと取るべきだろう。
Time may change me
But I[you] can’t trace time
これが本作の主眼。
1行目は分かるが、2行目は何か分かった様な分からん様な… 時をたどれない…
で、どうやら英語話者にもはっきりとは分かり難い言い回しの様。
時間が人に影響を及ぼす事はあるが、(逆に)人が時間に影響を及ぼす事は出来ない、という事をボウイは伝えたいのだろう。
我々の意志など無視して時は流れ続ける。
あ、似た様な意味と思しき言い回しを思い出しました。
Culture Club の Time (Clock of the Heart) の一節。
time won’t give me time 時は時を与えない[待ってはくれない]
Boy George はボウイの大ファンなので Changes の詞が頭にあったのかも知れない。
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