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歌詞和訳 Nirvana – Sappy コード

2000s

1987年頃には書かれていた曲で、元は単に Sad という題名だった。
sappy は、愚かな、という意味だが、その原題と併せ考えれば Sappy = sad + happy の含意があると推測できる。

本来マイナーのコード Dm Gm もパワーコード的に弾いているので表記上は単に D G としている事を予め断っておく。

Sappy (Kurt Cobain)

D     Bb    G
 And if you save yourself,
A    Bb    C
 You will make him happy!
D       Bb G
 He’ll keep you in a jar,
A     Bb     C
 And you’ll think you’re happy…
D       Bb   G
 He’ll give you breathing holes,
A     Bb    C
 And you’ll think you’re happy…
D     Bb   G
 He’ll cover you with grass,
A     Bb    C    D
 And you’ll think you’re happy… now!
お前が生き長らえれば
それで彼はハッピー!
彼はお前を瓶に入れて飼う
それでお前はハッピーと感じる…
瓶に通気孔を開けてくれるってさ
それでハッピーだろ…
彼が草を掛けてくれる
それでお前はハッピー… そして


(chorus)
Bb      G
 You’re in a laundry room,
Bb      G
 You’re in a laundry room,
Bb     G     Bb A
 Conclusion came to you, ohhh.
お前は洗濯室の中
今いるのは洗濯室
つまりそういう事なんだよ ああ


 And if you cut yourself,
 You will think you’re happy!
 He’ll keep you in a jar,
 Then you’ll make him happy…
 He’ll give you breathing holes,
 Then you’ll think you’re happy…
 He’ll cover you with grass,
 Then you’ll think you’re happy… now!
怪我をしても
それでもお前は幸せ!
お前を瓶に入れる
それで彼は幸せ…
そこに通気孔を開けてくれるってさ
そんな事でも幸せだろ…
彼が草を掛けてくれて
お前は幸せ… それで


→(chorus)
(interlude on D Bb G)
→(chorus)


 And if you fool yourself,
 You will make him happy!
 He’ll keep you in a jar,
 Then you’ll think you’re happy…
 He’ll give you breathing holes,
 Then you will seem happy…
 You’ll wallow in the shit,
 Then you’ll think you’re happy… now!
おどけた様なお前
それを見た彼はハッピー!
瓶に入れられても
お前はハッピー…
彼が穴を開ければ
お前はきっと幸せそうにしてんだろう…
糞まみれのお前
それでもハッピ-なんだな… そして


 You’re in a laundry room,
 You’re in a laundry room,
 You’re in a laundry room,
 Conclusion came to you, ohhh…
洗濯室の中


結局こういう事なんだよ ああ…


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ブリッジの無い曲構成から Verse Chorus Verse という題名になった事もあった。
結果的にはそれは別の曲の題名として落ち着いている。

題名のみならず詞の文言もいくらか変遷を経た。それは録音の度に作者コベインがその出来になかなか満足しなかった事と無関係ではなかろう。思い入れの強さが窺える。しかし結局、正式な発表は皮肉にも彼の死後。

登場する人称代名詞は you と he の二つ。これらが指す対象如何で解釈は変わってくる。
巷の解釈は大別して二つ。
he = God と見なし、宗教(就中キリスト教)についての歌だとするもの。
片や、そんな大袈裟なモンじゃないよ、コベイン(= he)の飼ってた亀(= you)の歌だよ、というもの。
作者コベインが亀を飼っていたのは事実らしく、死後作られたビデオにも亀の映像が挿入されている。
私の解釈はその事実に鑑み、亀が作曲のモチーフになったとするもの。
ただ終始可愛いペットについてだけ歌っているとは曲調からしても考え難いので、ガラス瓶に入れた可愛い亀を観察するに付け胸に去来した様々な思いを歌にしたと考えるのが自然だろうか。
特定の宗教に言及しているかは知れぬが、哲学の視座があって生まれた歌なのは間違い無い(本人は絶対に認めないだろうが)。
コベインなりの幸福論の歌と言えそう。

laundry room が出て来るのには一見脈絡の無い唐突さを覚えるが、米国の一般的住宅の洗濯室(多くは地下の一角)にはデカいシンクがあり水道の蛇口があるので、その近辺に瓶だかケースだかを置いて水を入れ、亀を飼ったからだろう。

逐語的な読解は不要と思うが然りとて対訳だけを流し読んでも何のこっちゃさっぱり分からんのは私も同じ。
しかし上記の事実と思しき事柄を代入すれば少なくとも情景は浮かんで来ます。

バースは概ね一貫した内容で、now! の発声を経過して同一のサビに直結する。
彼(he)は亀(you)を瓶に入れ可愛がり、ハッピーだ。
(この描写は無いが)餌を与えられ、草を掛けられ、亀もハッピー。
そんなハッピーな歌… と思えないのは私だけはないでしょう。
たかが呼吸の為の穴(breathing holes)を開けただけ。生命維持を保障されたに過ぎぬが、それでもハッピーだと感じる。
しかし所謂幸福感なんぞその実、そんなモンだろと歌っている様に聞こえます。
そして、とどのつまり(conclusion)、お前は洗濯室の中だ、ああ。
in the laundry room であれば、俺が可愛がって住まわせているその場所
とでもなろうが、実際は、
in a laundry room であり、ただ閉じ込められているこんな(地下の暗い)一角
という意味合いになる。
今はハッピーかも知れないが、見方を変えればただの囚われの惨めな従者。
he はコベインでなくとも良いし、本当は、自身を亀に投影していたかも知れない。
主従を人の関係に敷衍も出来よう。
で、更に主(= he)を神とすれば前述の解釈にもなり得る。宗教に対するかなり冷めた見方。
サビの最後は、The clue that came to you という文言だった時もあり、これだと、洗濯室の中にいる事に自覚的になれば自身を客観視も出来るだろう、という様な意味にもなろうか(clue = 糸口、手掛かり)。
こうなると尚更自身を投影していた様に見えて来る。
そして、you が亀でなく人であれば、laundry は日々の決まった仕事、ルーチンワークとも取れます。
その場合でも文脈に大差は無さそうではありますが。
ただ、人を草で覆う、という事だと、grass = 大麻、との憶測に与する事になろうか。

私自身にとっても、身につまされる感があります。
と言うのも、私は元野良の猫を2ヶ月齢の頃から飼い始め、今や15年になります。
私はこの猫と暮らせてハッピーです。でもふと、コイツこんな所にいて幸せなんだろうか、などと考える事があります。
ずっと野良のままいれば、もっと幸せだったんじゃないか。
そりゃひょっとしたら往来で無残な轢死を遂げていたかも知れない。感染症で早世なんて事も考えられる。それでもやっぱそっちの方がコイツにとっては幸せだったかも知れない。猫の幸せなぞ、私が決める事ではないから。
無論言い出せばキリが無いのは分かっている。ならば人間の業だと受け止め、最大限可愛がってやればいいじゃないか。
と、自身を納得させたつもりが、じゃあ可愛がるってどういう事だ?所詮人間の自己満足だろ。堂々巡り…

コベインは猫も可愛がっていた。一緒に写真に納まるのを見た事がある。
そこに写る彼は、舞台上では見せない破顔一笑、とてもハッピーな顔に見える(seem happy)。
あれも本当は sappy だったのか。

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