1989年発表のデビューアルバム Bleach の3曲目。
About a Girl
(Kurt Cobain)
Em G Em G
I do, with an ear to lend
Em G Em G
I do think you fit this shoe
Em G Em G
I do, but you have a clue
耳を貸してくれる様な
君なんてぴったりだと思う
でも気付いてるはず
C# G# F#
You hang me out to dry
E A C
But I can’t see you every night
Em G
Free
うまい事やるさ
でも毎晩は会えない
自由には
I do hope you have the time
I do pick a number too
I do keep a date with you
時間を割いてくれるといいな
ちゃんと整理券を持って
付き合いを続ける
→(chorus)(interlude)(verse)
You hang me out to dry
But I can’t see you every night
No, I can’t see you every night
Free
I do
うまくやってやる
でも毎晩は会えない
ダメなんだ
自由に会えやしない
作者コベインの当時の恋人に纏わる歌(と言われる)。その事実に鑑み対訳を施した。
ただそんな背景など知る前は、娼婦に思いを寄せる情けない男の悲恋の歌、だとばかり。
自由に、或はタダで(free)毎晩は会えない、というラインが肝だった。そしてその解釈でも文脈に齟齬は生じない。
では逐語的に…
lend[give] an ear = 耳を貸す
これは英語と日本語とで比喩的な慣用上の意味が一致する面白い熟語。
これで思い付くのは、話が少し逸れるが、
トイレを借りていいですか = Can I borrow the restroom?
とやるのは間違いだってヤツ。学校で教わった記憶がおありでしょう。
borrow は、借りた物を持ち去る意味を含むから、use としなきゃダメ。
ごもっとも。確かにテストではそうした方がいい。が、慣用性が低いだけで、全く意味が通じないなんて事は無い。奇異な表現だと感じる人は多いかも知れないが。
対義語で、同様に古英語由来の lend も相手が持ち去る意味を含む。が、Lend me your ears. と言われて、耳を切り取って差し出す人はいません。日本語でも同様。
尚、lend は前行末 friend に押韻してある。
you fit this shoe = 靴がフィットする → 条件にぴったり
clue = 手がかり、ヒント
だから you have a clue = もう手がかりをつかんでいる
つまり、もう勘付いている、という事。
take advantage = 利用する、付け入る
hang out to dry = 吊るして乾かす → (人に)厳しく当たる
I can’t see you every night = 毎晩会えるわけではない(部分否定)
free はここでは副詞的な使い方 → 自由に
これを、無料で、とやると先述の元の解釈に繫がる。
タダじゃ会えないからなけなしの金を握り締めてわざわざ会いに行く。
列に並ぶ、と併せ考え、独占できない歯痒さを想像してしまっていたのです。
pick a number too
これはややこしい。番号札を取って順番待ちをする事なのか、或は
pick up number two と歌っているとすれば、二番手に甘んじる、という意味にもなろうか。
いづれにせよこれも次行の you との押韻ありきの言葉選びなのだろう。
Big Long Now 同様、本作の表題はドラマーのチャドチャニングとコベインのふとした会話がきっかけで付けられた。
Chad: Yeah. Well, the first one was “About A Girl.” I remember we were rehearsing the song not long before we went in and recorded the record, Bleach. Kurt was just playing the song and we were working it out. I asked Kurt what the song was, and Kurt was like, “Well, I don’t really know.” And then I said, “Well, what’s it about?” And he says, “It’s about a girl.” And I said, “Well, why don’t you just call it ‘About A Girl’?” And he just kind of looked at me and smiled and said, “Okay.” We went with that.
チャド: そう、最初のは About A Girl だった。Bleach のレコーディング入りの少し前にその曲をリハーサルしていたのを覚えている。カートが弾き語りをして、バンドで仕上げようとしていた。それが何と言う曲なのかカートに尋ねたら「んー、俺にもよく分からない」みたいな感じで、「じゃあ何を歌った歌?」って訊いたら「ある女の子について(about a girl)の歌」と言う。そこで「じゃあ単純に About A Girl って呼べばいいんじゃない?」って言ったら、彼はちょっとこっちを見て微笑んで「そうだね」って言った。それで行く事になった。
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