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歌詞和訳 Nirvana – All Apologies コード

1990s

1993年に発表された、第3作にして最後のスタジオアルバム In Utero の中のこれまた最後の曲。

All Apologies

(Kurt Cobain)

C
What else should I be
All apologies
What else could I say
Everyone is gay
What else could I write
I don’t have the right
What else should I be
All apologies
他にどうしてたらいいのか
とにかく謝るよ
他にどう言い様がある
みんな楽しそう[ゲイ]だって以外に
他に何が書けるっての
そんな権利は無いよ
こんな風にしかしてらんない
悪いのは俺

F
In the sun, in the sun I feel as one
In the sun, in the sun
G
Married, buried
陽に当たってると一体感を感じる
陽の光の中で
結ばれ、葬られ

I wish I was like you
Easily amused
Find my nest of salt
Everything is my fault
I’ll take all the blame
Aqua sea foam shame
Sunburn, freezer burn
Choking on the ashes of her enemy
俺も誰かさんみたいに
何でも楽しめたらよかった
心休まる居場所を見つける
全ては俺の過ち
お咎めは甘んじて受けるよ
海の泡の恥
日焼けに冷凍焼け
敵の遺灰を喉に詰まらせる

In the sun, in the sun I feel as one
In the sun, in the sun
Married, married, married, buried
Yeah yeah yeah yeah
陽に当たってると一体感を感じる
陽の光の中で
結ばれ、結ばれ、結ばれ、葬られ

C
All in all is all we are
All in all is all we are
All in all is all we are
All in all is all we are
All in all is all we are…
人はみなそれぞれ大切なもの
人はみなそれぞれ大切なもの
人はみなそれぞれ大切なもの
人はみなそれぞれ大切なもの
人はみなそれぞれ大切なもの…

最終アルバムの最終曲である事から本作をコベインの辞世(と謝罪)と取る向きもある。
それに対する反論は、じゃなぜ最終シングルじゃなかったのか?てなもので十分だろう。
(本作は第2弾シングルで、In Utero からの第3弾はコベインの死につき結果的には見送られるも Pennyroyal Tea が予定されており、プレスも済んでいた)

一つのコードに長く留まって語り手が自身の思いの丈をとうとうと独白する様な歌。
誰のアイデアかチェロの導入は音に動きを付ける為だったのか。

第1バースでは、自身が what else 何か別のものには成り得ない事を言葉を替えて述べている。
勿論これは我儘を言っているのでも開き直っているのでもなく、誰にでも当てはまる事だと、規範の押し付けを牽制している、或は多様性への寛容を(すっとぼけて)説いているのだろう。
Come As You Are にも通じるテーマと言えようか。

gay = 同性愛の、陽気な
「きらびやかな」というのが原義で、「ゲイ(ホモ)の」は派生義だが、使用頻度が逆転したからか今では辞書にも後者が先に載り、更には「同性愛者」という名詞の意を持つに至る。

I am not gay, although I wish I were, just to piss off homophobes.

作者コベインのこの発言の通り彼は、自身がホモだったわけではないが、ホモ嫌い(homophobe)が大嫌いだった。
よってこのラインはゲイに対する攻撃などでは全くなく、寧ろ正反対。
元の曲名が La La La La で、peaceful, happy, comfort な曲だ、という事も語っていた様なので、それを真に受ければこのラインに、みんな陽気だ、というもう一方の意味が認められようか。

自身のセクシュアリティに言い及んだインタビュー

I don’t have the right
前行の write とのベタな完全韻。
他に書き様が無い、というのを、レーベルからの規制を仄めかしている、と取る向きもあるが、これはビミョーな所。
本作を書いた90年頃は彼らはまだ Sub Pop (インディレーベル)に所属しており、作詞について縛りがキツかったとは思えない。

そしてバースから、7度の響きを経て、それこそ peaceful な太陽のブリッジに移る。
しかし次のサビで、結ばれる(married)まではいいが、すぐその後、葬られる(buried)… 人生の無常。
でもまあ人の一生なんてギュッとやれば、(生まれ)結ばれ、(死んで)葬られ… に尽きる(かも)。

nest of salt
塩の巣って?
本人も服用していた(と言われる)気分安定薬の炭酸リチウム等のリチウムsalt と呼ぶ事もあるらしい(リチウムは別の歌の題名に使われている)。
nest には元々 comfort の場所という含意があるので、心休まる居場所、と対訳している。

Everything is my fault
I’ll take all the blame
ここはもう開き直りか皮肉としか思えないが如何。

Aqua sea foam shame
ギリシア神話のアプロディーテー(泡から生まれた、の意)が元来、生殖と豊穣を司る女神だった事から、このラインを「生殖の恥」とする解釈もある。

Sunburn, freezer burn
冷凍庫に入れっぱなしの肉などが痛む事を freezer burn (冷凍焼け)と言うので、高温でも低温でもやけどしてしまう、という様な意味か。
それとも、前門の虎、後門の狼、みたいな進退窮まった様を表すのか。
はたまた、躁と鬱の双極…

Choking on the ashes of her enemy 敵の遺灰を喉に詰まらせる
「因果応報」みたいな言葉をコベインが諺めかして作ったのでは。
her は、自国(軍)の、という意味か。

そしてもう一度ブリッジとサビをはさみ、コベイン教の読経が始まる。僧侶は二人(ハモはデイブグロールだろう)。
曰く、全てにおける全てこそが我々のあり方。
このラインに対する「俺たちは何ものにも勝る掛け替えのない存在」という訳詞が多く流布するが、大袈裟で、分別臭さを纏っているのがそれこそちょっと鼻に付く。
「勝る」なんて言い方、きっとコベインは嫌う(no one wants to win なんて詞も書いてる位だから)。
これならあの有名な「みんなちがってみんないい」の方がいい(気がする)。

このラインに主観を表す言葉は無い。
客観真理をとうとうと、それこそお経の様に反復しているのだから、勢い訳文からも極力主観的な文言は排すべきかと。

この読経はかなりの長きに亘って続く。
彼は仏教に関心があったので、本当に読経の節回しとその繰り返しに倣ったのかも知れない。
規律ではなく、こんな風に多様への寛容と理解を説く宗教だったら私も帰依してもいいかな、などと思ったりもする。
本当の涅槃那(Nirvāna)は、修行や戒律遵守の先にあるのではなく、他者の多様を認め、受け入れた時に訪れるのだろうから… なんちゃって。

Live at Reading

0:34
Everyone is gay

All my words are gray
俺の言葉は全てどっちつかず

MTV Unplugged

読経の所、
All alone is all we are
と歌っていると言う人もいるらしい。
私にはそうは聞こえないが、ま、これはこれで真理かも。

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