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歌詞和訳 The Velvet Underground – Heroin

1960s

1967年発表のデビューアルバム The Velvet Underground & Nico 所収。

Heroin

(Lou Reed)

I don’t know just where I’m going
But I’m gonna try for the kingdom if I can
‘Cause it makes me feel like I’m a man
When I put a spike into my vein
And I’ll tell ya things aren’t quite the same
When I’m rushing on my run
And I feel just like Jesus’ son
And I guess that I just don’t know
And I guess that I just don’t know

自分がどこに向かっているかも分からない
でも出来れば王国をものにしてみたい
そうする事で男である実感が湧くから
針を血管に刺したら、教えてやろう
世界ががらっと変わるのさ
打って高揚すると
まるでキリストの息子になった気分
でも僕は分かっていないだけなのだろう
たぶん知りはしない

I have made big decision
I’m gonna try to nullify my life
‘Cause when the blood begins to flow
When it shoots up the dropper’s neck
When I’m closing in on death
And you can’t help me, not you guys
Or all you sweet girls with all your sweet talk
You can all go take a walk
And I guess that I just don’t know
And I guess that I just don’t know

大きな決断をした
自分の人生を無に帰してやろうと思う
血が流れ始めると
血が点眼器の先を上がって来ると
死に近付いて行くと
もう男達にも親切な女の子達にも優しい言葉を
以ってしても僕を助けることは出来ない
みんな散歩にでも行ったらいいよ
でも僕は分かっていないだけなのだろう
たぶん知りはしない

I wish that I was born a thousand years ago
I wish that I’d sail the darkened seas
On a great big clipper ship
Going from this land here to that
On a sailor’s suit and cap
Away from the big city
Where a man can not be free
Of all of the evils of this town
And of himself and those around
Oh, and I guess that I just don’t know
Oh, and I guess that I just don’t know

千年前に生まれたらよかった
大きな帆船で暗黒の海を
この地からあの地へと
船乗りの服と帽子を身に着けて
渡ってみたかった
この街の全ての害悪との
また自分自身そして周りの人達との
関わりを断つ事の出来ぬ
都会を離れて
ああ、でも僕は分かっていないだけなのだろう
ああ、たぶん知りはしない

Heroin, be the death of me
Heroin, it’s my wife and it’s my life, haha
Because a mainer to my vein
Leads to a center in my head
And then I’m better off than dead

ヘロイン、我が死となれ
ヘロイン、我が伴侶にして我が人生、はは
針が血管から
頭の真ん中へと繫がって
死ぬよりも気持ち良くなるから

Because when the smack begins to flow
I really don’t care anymore
About all the Jim-Jim’s in this town
And all the politicians makin’ crazy sounds
And everybody puttin’ everybody else down
And all the dead bodies piled up in mounds

効く薬が入り込んで来たら
もう本当にどうでもよくなるから
この街のインチキ野郎どもの事や
声がデカいだけの政治家の事や
他人をけなす者どもの事や
累々と積まれた死屍の事なんて

‘Cause when the smack begins to flow
Then I really don’t care anymore
Ah, when the heroin is in my blood
And that blood is in my head
Then thank God that I’m good as dead
And thank your God that I’m not aware
And thank God that I just don’t care
And I guess I just don’t know
Oh, and I guess I just don’t know

効く薬が入り込んで来たら
もう本当にどうでもよくなるから
ああ、血の中にヘロインが入って
その血が頭に回ったら
死ぬほど気持ちいいから神に感謝するよ
前後不覚なのもありがたい
何も気にならないのも感謝だ
でも僕は分かっていないだけなのだろう
ああ、たぶん知りはしないのだ


同音の heroine(= ヒロイン)に掛けてヒロイズムを歌う深遠な歌…
なんかじゃなくってやっぱヘロインについての歌。
王国やらキリストの息子といった、まるで万能感が得られるかの言葉が出て来る一方で、その使用と自身の死とが隣り合わせである事実を強烈に自覚している事も窺える。

クラプトンが歌ってヒットした Cocaine も本人の理解では反ドラッグソングだそうな(詞中にそれと分かる直截の表現は無いが)。作者はクラプトンでなく J. J. Cale で、こっちの Heroin にはビオラを弾く John Cale がいてちょっとややこしい。

syringe(注射器)でなく dropper(= eyedropper = 点眼器、スポイト)が登場するのは、当時、点眼器に針を付けた物で代用したりしたからだそうな。まあソフトが安物ならハード(works)に金かけるのはアホらしいか。

あ、この Bleach の話を思い出した。

歌詞和訳 Nirvana - Blew
1989年発表のデビューアルバム Bleach の開始曲。 Blew (Kurt Cobain) (verse) If you wouldn't mind, I would like it blew If you wouldn't mind...

航海の件は何だかロマンチックな語り口だが、元凶を自身でなく都会という環境に帰して逃避行を夢想する都会人の身勝手で安易なノスタルジアだと切り捨てておこう。大した想像力でも独特の表現でもない。あ、いや、そのナイーブさをも愛でてやるべきなのか。I just don’t know なんて告白してるし。でもこの目的語を明示せぬ結びもズルい。果たしてこの尻切れ表現は歌詞解釈フォーラムなどでも複数の憶測を呼んでいる。

1965年のデモ

コメント

  1. is より:

    ベルベッツの流れが続いて、僕としては嬉しい限りです。最初の一音がつま弾かれた瞬間に、脳みそがつーんと痺れる……至福です。大好きな曲を譯解していただいて、ありがとうございます。

    ネット上のいかがわしい掲示板で、「ヘロはドラッグの王じゃないよ。女王だ」と語るジャンキーを見かけたことがあります。本作でもルーは it’s my wife と歌っていますが、人間を誘惑し破滅への道を歩ませてしまう魔性というのは、男性的なものではなく女性に特有のものなのかもしれませんね。

    • deni より:

      femme fatale なんでしょうかね。J. J. Cale とクラプトンの Cocaine の中でも She don’t lie とやってるし、Brown Sugar も女。まあ単に男の視点だからなのかも知れませんが。あ、ガンズの Mr. Brownstone は男だ。陳腐化を避けた?