85年のソロデビューアルバム The Dream of the Blue Turtles の開始曲。
英26位、米3位のヒットシングル。
If You Love Somebody Set Them Free
(Sting)
If you want someone, you can do the same
If you want to keep something precious
You got to lock it up and throw away the key
If you want to hold onto your possession
Don’t even think about me
誰かを求める時だって同じ、僕を呼んだらいい
大切なものを取っときたいなら
鍵でもかけてその鍵は投げ捨てちまいな
そんな風に持ち物にしがみ付いていたいなら
残念だが僕の事は忘れてくれ
G7-G
If you love someone
Bm7-Bm
If you love somebody
G7-G Am
If you love someone
set them free
Dm C Am G
Free, free, set them free
愛してるなら
本当に好きなら
人を本当に愛すつもりなら
自由にさせてやりな
解放してやるんだな
Or a whipping boy, someone to despise
Or a prisoner in the dark
Tied up in chains you just can’t see
Or a beast in a gilded cage
That’s all some people ever want to be
それとも、見下す為の身代わりかい
それとも、目には見えぬ鎖に繋がれた
闇夜の囚人かい
それとも、金のおりの中の野獣かい
人がなりたいと躍起になるものなんてこれが関の山さ
→(chorus)
F4 F C
Can’t tear the one you love apart
Gm7 F4 F
Forever conditioned to believe that we can’t live
C C7
We can’t live here and be happy with less
Gm7 F4 F
So many riches, so many souls
C C7
Everything we see that we want to possess
愛する者を引き離す事も出来ない
持ち物が少なければ幸せには生きられないと
信じてしまう環境にずっと置かれている
多くの富があって、多くの人がいる
目に入るものはみな
自分のものにしたくなってしまう
→(verse 1)(chorus)
本作発表から遡る事2年、ポリス時代の大ヒット曲 Every Breath You Take にスティングが描いたのは別れた女への偏執的な粘着性。
そんな歌を歌っていた彼が正反対とも言えるテーマを提示。
表題に曰く、人を愛しているなら自由にさせてやりなさい。
おいおいどの口が言ってんだ、とツッコミたくもなりますが…
This was the first single I did on my own away from the Police. I’m not sure if the phrase is mine. I probably read it somewhere. But it’s the first time it’s been used in a song, I think. And it’s true, you can’t imprison someone in a relationship. It’s an antidote song to ‘Every Breath You Take’. One song is about constricting, possessive love, and one is about being free. I suppose the truth is somewhere in the middle.
このソロデビューシングルは antidote(解毒剤) song との由。
本能的な異性への情熱が独占欲に火を点け、束縛や監視に行き着いたりするのは、さして驚く事でもない。なぜなら、通常は、相手にも好かれたいと思った場合に理性が働いたり、社会性の抑制が効いてるだけだから(それをも人間の本能に含める考え方もある)。
そして更にメタ的に理性を発動させると、相手を解放してやろう、となる。
ま、これだって、情けは人の為ならず、という話だとは思うが。
さて、鮮烈なソロデビューを演出するにはポリスの延長線上では不都合。
新規性を打ち出すのに、バンド時代最大のヒット曲とは対極のテーマを歌うのは効果覿面の筈(博打の面もあろうが)。
白人トリオを卒業した、黒人バンドの中の「白一点」の、理知的なオトナの英国紳士歌手がここに誕生。
勿論、戦略面だけからそうなったのではなかろうが、本能的とは言え少し偏執の過ぎた歌が定着させた(かも知れない)イメージを払拭する必要もあったのだろう。
ただどちらも極端なので、
the truth is somewhere in the middle. 何事もバランスが大事
だと言っている(まあこんなの、何にでも当てはまるズルい言い回しではある)。
whipping boy = 王子の身代わりに鞭打たれる少年
英国王家の子がマズい事をした時に、代わりの者を鞭打ったという、中世のアホみたいな本当の話。しかしその少年は重用され、王子と親密な関係を築いたそうな。そしてそれが故に当の王子への心理的効果は大きかったらしい…
成る程… いや成る程じゃねーよ、お前が打たれろや。
scapegoat をより直截的に言った感じだろうか(こっちはスケープゴートとして日本語にもなっている)。
現在分詞なのに、鞭打たれる、と受動の意になっているのがちょっと不思議。
ここはきっと文法的考察を加えると面白い筈だけど、メンド臭いんで、ただ慣用からこうなったんだろうという、えー加減な解釈でお茶を濁しときます。
他の動詞での類似の用例などを御存知の方がいらしたら教えて下さい。
こんなのも…
これなんかは正に能動受動の両義(両刀?)ってか。
despise = 軽蔑する
gild = 金メッキをする(gold と同源)
gilded cage = 金のかご(おり)→心地好いのだが、制限があって不自由な状況(例えば有名人の私生活)
人が憧れるものなぞ高々そんなものだと言い捨てる。
僕の目がお前を写す鏡だからよく覗き込んでみろ、と言うのだろう。
因にこの手の含蓄のある慣用句をスティングはよく使う。
Canary In A Coalmine なんていうポリス時代の曲もある(炭鉱のカナリアって言葉は、確か桑田佳祐も歌詞に使ってた)。
riches = 富、財宝
You can’t control an independent heart
本作の主眼はこのブリッジ冒頭の一文に集約されている。
Every Breath You Take の毒をこれで抜こうとスティングは試みたのだろう。
そして何よりそれを自省と捉えれば、自身の解毒を図ったのかも知れない。
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