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歌詞和訳 Courtney Barnett – Pedestrian At Best コード

2010s

2015年発表のデビューアルバム Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit 所収。

Pedestrian At Best

(Courtney Barnett)

F# E F# E F# E F# E
F# D# E C# D B C# B

F# – E
I love you, I hate you, I’m on the fence, it all depends
Whether I’m up I’m down, I’m on the mend transcending all realities
I like you, despise you, admire you
What are we gonna do when everything all falls through?
I must confess I’ve made a mess of what should be a small success
But I digress, at least I’ve tried my very best, I guess
This that the other, why even bother?
It won’t be with me on my deathbed, but I’ll still be in your head
あなたが愛しい、憎い、決めらんない、場合によりけり
アガってようとサガってようと私は現実なんて超越してイイ感じに向かってる
あなたが好き、嫌い、憧れる
上手くいかなくなったら私達どうするんだろう?
実はちょっと成功しそうだった事も台無しにしちゃった
でも構わない、少なくともベストは尽くした、と思う
これやあれやそれ、気にする必要なんてある?
死ぬ時には関係ないんだから、それでも私はあなたの頭に残ってるんだろう

F# E A B F# E A B
Put me on a pedestal and I’ll only disappoint you
Tell me I’m exceptional, I promise to exploit you
Give me all your money and I’ll make some origami, honey
I think you’re a joke but I don’t find you very funny
私をおだて上げたところでがっかりするだけよ
私が特別だなんて言ったら食い物にしてやるわ
有り金を寄こしたって折り紙にしてやるから、ハニー
あなたってジョークみたいだけど、あんまり面白いとは思えない

My internal monologue is saturated analogue
It’s scratched and drifting
I’ve become attached to the idea
It’s all a shifting dream, bittersweet philosophy
I’ve got no idea how I even got here
I’m resentful, I’m having an existential time crisis
What bliss, daylight savings won’t fix this mess
Under-worked and over-sexed, I must express my disinterest
The rats are back inside my head, what would Freud have said?
自分の中の独白はアナログに満ちていて
引っ掻かれて漂う
それが変わり続ける夢でほろ苦い哲学だという
考えにはもう愛着があるけど
そこにどう辿り着いたのかすら分からない
私は恨んでいる、実存と時間の危機に苛まれ
まあ何て至福、サマータイムも解決にはならない
仕事に消極、性には積極、無関心を示さなきゃ
ネズミが頭の中に帰って来た、フロイトなら何て言ってたでしょうね?

Put me on a pedestal and I’ll only disappoint you
Tell me I’m exceptional, I promise to exploit you
Give me all your money and I’ll make some origami, honey
I think you’re a joke but I don’t find you very funny
私をおだて上げたところでがっかりするだけよ
私が特別だなんて言ったら食い物にしてやるわ
有り金を寄こしたって折り紙にしてやるから、ハニー
あなたってジョークみたいだけど、あんまり面白いとは思えない

I wanna wash out my head with turpentine and cyanide
I dislike this internal diatribe when I try to catch your eye
I hate seeing you crying in the kitchen
I don’t know why it affects me like this when you’re not even mine to consider
Erroneous, harmonious, I’m hardly sanctimonious
Dirty clothes, I suppose we all outgrow ourselves
I’m a fake, I’m a phoney, I’m awake, I’m alone
I’m homely, I’m a Scorpio
シンナーと青酸カリで頭を洗い流したい
目を惹こうとする時のこの自分の中の罵りが嫌になる
キッチンで泣くあなたなんて見たくもない
なぜこんな影響を受けるのか分からない、あなたなんて気に掛ける程のものでもないのに
間違ってて、つり合ってて、私は聖人ぶったりなんかしない
服は小汚い、私達みんなもう大人になったんだと思う
私は偽物、いかさま、目ざとくて、孤独で
家庭的な、そうよ私はさそり座の女

Put me on a pedestal and I’ll only disappoint you
Tell me I’m exceptional, I promise to exploit you
Give me all your money and I’ll make some origami, honey
I think you’re a joke but I don’t find you very funny
私をおだて上げたところでがっかりするだけよ
私が特別だなんて言ったら食い物にしてやるわ
有り金を寄こしたって折り紙にしてやるから、ハニー
あなたってジョークみたいだけど、あんまり面白いとは思えない

Put me on a pedestal and I’ll only disappoint you
Tell me I’m exceptional, I promise to exploit you
Give me all your money and I’ll make some origami, honey
I think you’re a joke but I don’t find you very funny
私をおだて上げたところでがっかりするだけよ
私が特別だなんて言ったら食い物にしてやるわ
有り金を寄こしたって折り紙にしてやるから、ハニー
あなたってジョークみたいだけど、あんまり面白いとは思えない

怒濤の歌唱。押韻の密度。そこへ絶妙に尾を引くディレイエフェクト。

put[set] a person on a pedestal = 人を台座に乗せる → (値打ち以上に)尊敬[崇拝]する

その pedestal(台座)に掛けて同源語の pedestrian を表題に使っている。
at best は、せいぜい、の意。
つまり pedestrian at best とは、いいとこ歩行者、或は、よくて平凡。

流行の末路を知る者の嘆きか、それとも有名人となった自身への戒めか。
MVでは Clown of The Year 2013 を受賞したピエロ役のバーネットがほんの1年で2014年受賞者に人気を奪われる様が描かれている。最後に登場する2012年受賞者を演ずるのは Jen Cloher だろう。

CINRAとか言う”cultural creative international”なサイトに載っていたレビュー。

同作からのファーストシングルとなった“Pedestrian at Best”。ザクザクと荒ぶるギターのリフに乗せて、スポークンワーズ的とも言える長尺な言葉を鋭く並び立てるこの曲で彼女が歌うのは、不安定に揺れ動く自らのエモーションのやっかいさである。<あなたを愛してる / あなたを憎んでる / どっちつかずで全てはその時次第>。「歩行者がいちばん安全」という警句的なタイトルは、アクセルの踏み込み次第で暴走してしまう「車=恋」のアナロジーだろうか? しかし、その歌詞の意味をさらに押し広げ、それを「移り変わりの激しい人々の興味」に変換しながら、新人ピエロに人気を奪われる古株ピエロの悲哀の物語に書き変えてしまうところが、さらに彼女のユニークなところと言えるだろう(しかも、自ら古株ピエロを演じてしまうというアイロニー!)。

「歩行者がいちばん安全」という警句的なタイトル… ??

こんな知ったかぶりのカッコ付け「レビュー」に比べたら「英語だから歌詞なんて分かんないけどこの曲大好き!」みたいな印象論を語る方が音楽評として遥かにマトモで健全。本サイト読者諸賢には余計な説明は不要でしょうけど。
見出しに「このセンスは、一体何なのか?」とあったが、その問い掛け、そのままレビュー筆者にお返しします。
冗句を弄してさえ飯が食えるのはこの国がある意味で成熟した社会である事の証しなのけ?懐が深くって寛容ないい国だなあ。
歌詞の意味を頓珍漢に押し広げ、それを荒唐無稽に変換しながら、滅茶苦茶な物語に書き変えてしまうところが、このオシャレなカルチャーサイトのユニークなところと言えるだろう(しかも、自らピエロを演じてしまっている事に気付かぬというアイロニー!)。

こちらは AllMusic の評。

A convincing argument that rock & roll doesn’t need reinvention in order to revive itself, Courtney Barnett’s full-length debut Sometimes I Sit and Think, And Sometimes I Just Sit. falls into a long, storied rock tradition but never feels beholden to it.

ロケンロールの再興に再発明など不要と分からせる、説得力のある主張。バーネットのデビューアルバムは長い歴史のロックを踏襲してはいるが、その恩恵に浴している事を感じさせない。

ここには少なくともアホな翻訳のせいで原作との断絶を来す様なアホな言説は載っていない(原語の英語メディアだからまあ当たり前だけど)。
本作というよりアルバムの総評だが、彼女の作品についてよく言い得ている。

本作中のアナログで引っ掻かれて漂う件は、アナログレコードの溝が針と物理的に接触して進む様になぞらえており、また自身の考え(哲学)がデジタルの様に非連続ではない事を言うのだろうが、従来の再生メディアを持ち出す事で旧態のロック(或は音楽)に暗に言及している様でもある。

スタジオ版のギターリフに比べて音がふにゃふにゃしている。スタジオ録音ではピックを使ったのだろうか。それとも指の腹でなく爪を弦に当ててる?

ありゃ、こっちはジャキジャキしてんなあ。ピックアップが違う?ミキシング?

これ、酔っぱらっとるな…

ところで詞中に origami という言葉が登場する。
自慢ではないが、と言ったってこの日本語の修辞には凡そ潜在意識的な自慢が現れているんだろうからやっぱちょっと自慢したいんだろうけど…
二十数年も前の話、米国は東海岸のとある小学校の課外授業で日本文化を紹介するよう頼まれ、今思えば我ながら随分ベタだが、折り紙とけん玉を教える事にした。私の折り紙の熟練度は当時も今も恐らく日本人の平均以下(鶴を空で折れない)だが、そんなのはおくびにも出さず平面から立体を生み出す魔術師の如く振舞った。彼らの食い付きは予想以上で、食い入る様に見るその眼差しの何と穢れのない事。その印象ばかりが強く、何を折ったかは記憶の埒外へ。ナイーブさでは引けを取らないつもりの私も彼らの無邪気の前では所詮垢だらけの大人。
当時当地には Japanese Origami などと銘打った教本が確か既にあったが、知名度は今一つ。それが今や歌の中に普通名詞然と登場するまでに。
で、何が言いたいかってゆーと、海外での折り紙普及の一端を私は担っていたのです。でもまだ折り紙協会から感謝状は届いていません。


追記
1980年設立のこんな立派な機関があったとも知らずバカ言っちゃってました。

OrigamiUSA

コメント

  1. is より:

    最高…

  2. takagi より:

    すごいね、この人・・・・ かっこいい。
    折り紙の歌はpvより野外ライブのがよかった。
    amazonでレビュー見てみたらたった4件しかなかった。なぜじゃーーーーー。
    しかし、自分みたいな感度の悪いアンテナの人間にもやっと届いた(このブログを見て)んだから、これから口コミで加速度的にファンが増えていくと思う。  とにかくすごい。

    • deni より:

      2016年のグラミー Best New Artist の候補になるも受賞しなかったのはグラミー史上最大の汚点の一つだなんて言う人もいます。でもやっぱ彼女はオルターナティブ或はインディー畑の人。そしてだからこそ正当な評価がなされている様にも感じます。
      ファンが増えるのはいいけど、アノ手の滅茶苦茶な解説のオシャレカルチャーメディア経由じゃない事を切に祈る次第。
      まあ洋楽ジャーナリズムなんて今のネットメディアも含め、何十年も前から「心に茨を持つ(少年)」レベル。これは「いちばん安全」と同じ位ヒドい翻訳。この邦題自体はメディアが付けたものではないけど、その妥当性に疑問を抱いて、ミスリーディングだ、原作者への敬意を欠いている、と指摘する者すらいなかったのだから、ジャーナリズムと呼ぶも憚られる。程度が知れます。
      いみじくもtakagiさんの口をついて出た「かっこいい」というのは、本編にも述べましたが、衒いの無い素直な感想。世に跋扈するインチキライターの論評に比べ遥かに立派な音楽評です。