61年発表、米4位、英27位のヒットシングル。
Stand By Me
(Ben E. King, Jerry Leiber and Mike Stoller)
F#m
And the land is dark
D E A
And the moon is the only light we’ll see
A
No, I won’t be afraid
F#m
No, I won’t be afraid
D E
Just as long as you stand
A
Stand by me
辺りは暗くなり
月明かりしか見えなくなっても
僕は怖くなんかない
そう、不安なんかじゃない
君さえそばに
いてくれれば
Stand by me,
F#m
Oh, stand by me
D
Oh, stand,
E
Stand by me
A
Stand by me
そばにいて
離れないで
Should tumble and fall
Or the mountains should crumble to the sea
I won’t cry, I won’t cry,
No, I won’t shed a tear
Just as long as you stand
Stand by me
ひっくり返って落ちて来ても
たとえ山々が海に崩れて行っても
僕は泣かない
そう、涙なんかこぼさない
君がそばに
いてくれさえすれば
→(chorus)(interlude)(chorus)
Won’t you stand by me
Oh stand by me
Won’t you stand
Oh, stand
Stand by me
そばにおいでよ
いつでもおいで
フィラデルフィアの牧師 Charles Albert Tindley が1905年に作った賛美歌が大元。
米国南部の教会で盛んに歌われ、50年代には多くのゴスペルグループによりレコード化された。
その中でも有名なのは55年の The Staple Singers によるもので、これを聴いて気に入った Ben E. King(1938-)は当時所属する The Drifters(日本のドリフターズはこのグループ名を借用)に自分達も録音するよう進言するが受け入れられなかった。
しかし後にキングは脱退しソロ歌手になった60年、プレスリーのヒット曲なども多く書いた作曲プロデュースコンビ Leiber and Stoller と組んでこの曲を改編し、翌年自ら発表した。
特徴的なベースラインは Stoller のアイデア。
キング版はこの The Staple Singers 版とは詞曲共に別物と言える。だから作者クレジットも変えられたのだろう。
86年、River Phoenix 主演の同名映画の主題歌となって再びチャートに上り、米9位。
Stephen King の原作小説の The Body(= 死体)という原題が生々し過ぎる事から主題歌の方の題名 Stand By Me を映画に適用したという経緯がある。
上の二つのジャケットの線路も印象が全く違う。
本作の主題は表題の通り「そばにいてくれ」という人間に普遍の欲求。
(ただエンディングでは俄然頼もしい語り掛けになる)
いくら孤独が好きだと嘯いていようと無頼を気取ろうと、誰か一人でも本当の味方がいないと人は生きて行けない。それは甘えや依存とは似て非なる人間の性(サガ)。
少人数の間では容易に起こり得るこの情動。ところが社会全体で、延いては国や民族を越えてこの感覚を永く共有する事は至難。ほぼ不可能。それが出来ていれば世界平和なぞ疾うに実現されている筈だから。
牧師の作った賛美歌を下敷きにしたキングの改編曲を更にレノンがカバー。
その主題を改めて世界に問うつもりだったのか。
すると後にそれを援用して自作 Imagine を書いたのではないかとも思える。
But I’m not the only one という平易で明快な気付きの提示。しかしこの明快さも種々のノイズに妨害されてしまったというのが実状だろう。歌だけが普及したというのも随分な皮肉。
Stand By Me というスローガンの下、小さなコミュニティの結束が強まり、しかしそれが故に結果として他のコミュニティとの軋轢が生じる、というのが寧ろ現実か。
そのコミュニティとは、学校のグループだったり、はたまた一国家だったり…
本作中、側にいてほしい味方に対する仮想敵として登場させているのが、暗闇や空、山など、即ち自然。
逆境を先に持って来て、主題の導入をお膳立てしてやる。
牧師が作った元の賛美歌にも、Stand By Me という主題と、これらの自然の猛威、そしてそれがもたらす艱難は(比喩的に)描かれている(When the storms of life are raging 等)。
絶大な自然に抗う事は出来ない、だから神様、私のそばにいて下さい、と皆で祈りましょう…
とまあ、これまた明快な牧師の説教の作法に繋がる恰好。信心の無い、まして耶蘇の文化の身に付かぬ者からすると正直、んー何だかなあ、との思いを禁じ得ぬ套言ではある。
とは言え本作が衒いの無いベーシックなコード進行に乗せて普遍の人間心理を高らかに歌う名曲であるのは間違い無い。
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