1973年発表の第6作アルバムの表題曲。
Aladdin Sane (1913–1938–197?)
(David Bowie)
Bm A C Bm G5 A5 G5 A5
A
Swinging an old bouquet of dead roses
C
Sake and strange divine
B5
Pum pum pum puh pum puh, you’ll make it
G5 A5 G5 A5
走り去って行く男を見つめる
酒と奇異な神性
「お前ならやれる」
Takes him away to war, don’t fake it
Saddening glissando strings
Pum pum pum puh pum puh, you’ll make it
戦地送りにされる、「あざむくなかれ」
弦楽の悲痛なグリッサンド
「あなたなら大丈夫」
A G
Battle-cries and champagne
A F
Just in time for sunrise
Gm F Gm F Gm F
Who will love Aladdin Sane?
A
鬨の声にシャンペン
折しも日が昇る
誰が気の触れた者を愛すだろう
Paris or maybe Hell, I’m waiting
Clutches of sad remains
Waits for Aladdin Sane, you’ll make it
パリか、ともすれば地獄、「わたしは待っているわ」
累々たる死屍が
アラジンセインを待ち受ける、「でもきっと大丈夫よ」
Millions weep a fountain
Just in case of sunrise
Who will love Aladdin Sane?
Gm F Gm F
Will love Aladdin Sane?
Gm F A G
Will love Aladdin Sane?
日が昇る時には
何百万の民が滂沱の涙を流す
誰が気の触れた者を愛すだろう
(Garson’s INSANE piano solo on A G)
Millions weep a fountain
Just in case of sunrise
Who will love Aladdin Sane?
Will love Aladdin Sane?
Will love Aladdin Sane?
日が昇る時には
何百万の民が滂沱の涙を流す
誰が気の触れた者を愛すだろう
(piano + Sanborn’s sax solo on A G)
Aladdin Sane は A lad insane (気の触れた若者)の一種のアナグラム。1913–1938は二つの大戦の開始前年。
本作の主人公は、戦地へ赴くにあたり自身を狂気で満たさねばならぬ若者。
Sake and strange divine
日本も参戦国の一つ。sake は壮行の宴で振舞われた酒を指すのか。
73年当時の事は知らないが今や完全に英語に取り入れられている日本語。ただ英語話者の発音はサーキに近い。
一方ボウイは「正しく」サケと発音している。彼らはエの音で言葉を終えられないのに。山本寛斎に教わったのだろうか。
余談だが、GHQが天皇から神性 strange divine を取り除こうとし、しかし生かしておいたのはその存在が日本臣民の統治に戦後も一定程度有効だと判断したからだろうか。
bright young things[people] は第一次大戦前のロンドン社交界の名士を指す言葉。映画表題にも取られている。
この呼称は多分に揶揄を含むので、自動的に passionate も皮肉に満ちた修飾語となる。即ち、彼らが酒池肉林に興じる様を傍観して「情熱的」と形容。
彼らに保障された身の安全と、戦地に送られる者が晒される危険との対比。そこに浮かび上がる欺瞞(don’t fake it)。
you’ll make it
お前ならやれる、という欺瞞に満ちた言葉とも、生きて帰って来れる、という健気な切望とも取れる。
前者の話者は bright young things で、後者は銃後にある妻や恋人。
日本のサケの次はフランスの酒 champagne も出て来る。
They say the lights are so bright on Broadway
最後のセリフは枢軸国兵士の米国文化への憧れの暗示か。
この呑気な声調もまた狂気を表現する為のものだろうか。
さて曲について。
マイクガーソンの奏でる冒頭の官能的な調べ。私の知り得る一番エロいピアノリフ。
続くミックロンソンのギターがエロさを増幅。
Saddening glissando strings の音を実際に出しているのはベースのトレバーボールダーと言えようか。
そしてソロ。
ガーソンはスタジオでまずブルーズを弾いた。ボウイが却下。次はラテン。また却下。しかし言われるがままにそれまでやってきたアバンギャルドなものを弾くとワンテイクでOKが出た。
avant-garde(仏語) = advance guard = 前衛部隊
この通りアバンギャルドは元々は軍事関連語。
ボウイがここまで思い至っていたかは知り得ない。
音は David Live で絵はシンクロしてない動画だけどボウイの演舞が面白い。冒頭のムーンウォーク!
後方移動は無いもののビリージーンの何年も前だ。やっぱあれはJBのダンスというより、マイム由来の動きなのだろう。
3:12
…31…32… (ピアノグリッサンド)
ガーソンのピアノソロは32小節?ボウイは数えてたのか、それともスタッフの合図?
でも実際に数えてみると22だった(尻切れ感)… 10個まちがえてやんの…
ガーソンはおかしいと思ったに違い無い。でもボウイがカウントするもんだから仕方なく強引にグリッサンドで終えたんじゃなかろーか。
しかしそれこそ何と insane なソロだろう。スタジオでもステージでも冴えまくる。理論と技術に裏付けられた縦横無尽の好演。
3:55
スタンド振ってマイク外れるもナイスキャッチ。照れ隠しなのか苦々しい顔。
そんでガブレルズのギターリフがわざとらしい程に強調されてアヤシいなと思ったらやっぱ The Kinks の All Day and All of the Night に続いてドーシーの歌う Where Have All the Good Times Gone を挿入。これらもまた兵士の狂気、或はその反動を表すに打って付けだ。
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