歌詞和訳 Nirvana – Aneurysm コード

Incesticide,ニルヴァーナ

最初に発表されたのは1991年のシングル Smells Like Teen Spirit のB面曲としてだった。
下の歌詞と音源はそれとは別の、渡英時のBBCセッションのもので、92年のアルバム Incesticide に収録されている。

Aneurysm

(Kurt Cobain, Dave Grohl, Krist Novoselic)

F# C B A

F#


B D

B D
Come on over, do the twist, aha
Overdo it and have a fit, aha
Love you so much it makes me sick, aha
Come on over, do the twist, aha
おいでよ、ツイストしよう
ブッ倒れるまでヤッちゃおう
気持ち悪くなるほど好きなんだ
こっちに来てツイストしようよ


F# G# A A# B A# A
Beat me outta me (x8)
我を忘れるほどやっつけてくれ


Come on over, do the twist, aha
Overdo it and have a fit, aha
Love you so much it makes me sick, aha
Come on over, shoot the shit, aha
おいでよ、ツイストしよう
ブッ倒れるまでヤッちゃおう
気持ち悪くなるほど好きなんだ
こっちに来てダベろうよ


Beat me outta me (x8)
我を忘れるほどやっつけてくれ


F#
F# C B A


F# C B A
She keeps it pumping straight to my heart (x8)
心に直接ガンガン流れ込んで来るよ


F#


作者カートコベインの元カノのトビベイルについて書かれた歌と言われるが、その表現は両義的で、薬物にも言い及んでいる。

Come on over, do the twist
60年に米1位を記録しツイストダンス流行の発端となった Chubby Checker の大ヒット曲 The Twist の冒頭の一節 Come on baby, let’s do the twist になぞらえている。

よって表面的には「ツイストを踊ろう」という意味だが、twist は街中で遣り取りしやすいようにヘロイン粉末をラップに包んで口をねじったものを暗示し得る。

続く overdo it and have a fit (過剰にやって卒倒する)は overdose (オーバードース)という言葉を想起させるに十分。

it makes me sick (気持ち悪くなる)は、そのベイルと初めて二人で時間を過ごした時にコベインが緊張の余り吐いてしまったという逸話を表すものと言われる… ホンマかいな。彼女は彼のゲロを片してやったのだろうか…
何にせよそれ程までに好きだった(love you so much)という事なのだろう。

Beat me outta me = Beat me out of me = 俺を叩いて俺から出せ
対訳には、我を忘れるほどやっつけてくれ、とした。
(因にベイルのバンド Bikini Kill には93年発表の Outta Me という曲がある。まあ無関係だろうけど)

shoot the shit は、「むだ話をする(= shoot the breeze)」という慣用的な意味で考えれば、彼女との語らいを表し得る。
片や shoot を字義通り「打つ」と取ればこれもやはりヘロインを仄めかすもの。
do the twist と同韻にして裏で同義。それでいて表の意味は両方共いかにも健全。何ともよく出来た対句。これを思い付いた作者はほくそ笑んだに違い無い。

ならばこれは sex, drugs and rock 'n’ roll がテーマのベタな歌か… とはやっぱ考え難く、作者はそんなロックの因襲をもどこかでせせら笑っているのだろう。
言うも憚られる曲 Moist Vagina とも共通する(言っちゃったけど)。あっちは marijuana とはっきり特定して歌っているが。

表題の Aneurysm は、原義の「広くなるもの」から「こぶ」の意を持つに至り、今は主に血管内のこぶ「動脈瘤」を指す語。
 例) He died from brain aneurysm 彼は脳動脈瘤(の破裂→脳出血)で死んだ
私の身内の一人は腹部大動脈瘤に対しカテーテルを使ったステントグラフト内挿術を受けた(余談)。

本編中の keeps it pumping (流れ込ませ続ける)をパラフレーズして「動脈瘤」とし、それを表題に据えたのだろう。
過剰な pump が身の破滅を、また後者においては瘤の破裂を招き、それが死に直結するという類似も認められる。
この pump は自動詞で、その意味上の主語 it が表すのは彼女の愛か魅力か、それとも薬物か。

Live At The Paramount 1991

斯様に本作の詞はとてもよく練られた面白いものだが、曲がそれに引けを取らないのは言わずもがな。
ギターが不穏なリフを奏で始めたかと思うと、果たして静かな清音は歪んだ濁音に化ける。
そのダイナミズムに拍車をかけるのはデイブグロール。バンドの屋台骨を支える彼のドラミングこそが本作の肝。ハードヒッティングにして手数の多いフィルインを要所に配し、曲を転がし、進める。彼が作曲クレジットに名を連ねているのも頷ける。またテンポチェンジを司るのも彼。長い前奏と並んで、他の曲には無い、本作の特徴的な聞き所でもある。

Live at Reading 1992

ここでは半音下げ移調しているが、こんな風に公演では他の多くの曲でもキーを落としてれば喉を潰すなんて事は無かったのかも。まあ好んで自傷してた嫌いもあるからどーしよーも無いけど。

Hormoaning

Teen Spirit のB面と同じ、シアトル録音の音源。
EP表題の Hormoaning って、hormone(ホルモン)と moan(うめく、唸る)の合成造語?
あ、whore moaning… こっちが主か…

Rock & Roll Hall of Fame 2014

パットスミアが弾くギターリフはシアトル録音版を踏襲している。不気味さ倍増。
ボーカルを担当したのはソニックユースのキムゴードン。
なんだけど、ド頭の音が取りにくいのは分かるし性差も勿論あるとは言え、この歌唱は非道いの一言に尽きる。
ところが、と言うかまあ想像はついたが、この動画には彼女を擁護するコメントが鈴生り。
曰く「カートはソニックユースのファンでキムは大親友」「彼女こそパンク」…
この程度ならセンチメンタルでかわいいモンだけど、
「この良さが分からぬ者は真のNirvanaファンじゃない」…
こんな風に言ってフツーの聴き手を排斥せんとする者も現れる始末。

まあ一人の(純粋な)音楽ファンとして物申すならまず親友かどうかはどーでもよい。
それからパンクは attitude (姿勢)だと嘯く者にはじゃあそもそもこんなでっかい記念式典で歌う事はパンクけ?と問おう。
実体を伴ってもないのにパンクって言ってりゃ何だって通用すると思ってんなら、印籠をかざせばひれ伏すだろうと高を括るただの権威主義者に同じ。きっとこんな権威ある殿堂なんて大好物なんだろうけど、あれ?パンクって権力の対極に陣取ったんじゃなかったっけ?
民主主義がいかに機能しているか否かには目を向けず、ただその民主主義って言葉を叫んでりゃ自身の政治的高潔性が保たれると思ってる者にも似たり。理想郷の住人は現実をフツーに見つめて思いを巡らす者に魔法の言葉使って講釈垂れちゃダメよ。
仮にこの歌唱が真のパンク的態度を表すものだとしても、本作の歌メロの旋律性が毀損されている事をそれが帳消しにはとても出来ない。フツーの音楽ファンにとっちゃ歌唱の旋律こそが正味。
「真のNirvanaファン」じゃない似非パンクの僕チンなんかはこんな風に思っちゃうんです。