朝生を久々に見た(録画して見たから生じゃないけど)。テーマは集団的自衛権。
本題を巡る深い議論は端から期待しなかった。そも憲法なる最上位規範には手続き上なかなか触れる事が出来ぬとの諦念からこんなレベルの命題になってしまったと考えて強ち的を失してはいまい。個別と集団の線引きにまで(恣意的)解釈差異が沢山ある。話を一から明確にしようと下位に向けて細分化したんだろうが、大元がグラついとるんだから、私はあまり意義を感じない。ほぼ不毛なマッチポンプ。後述の米国による呪縛がもたらすデッドロック。だから主に各人の討論の作法、言葉遣い、それから討論会のTV番組(show)としての
価値に注目しました。
司会:田原 総一朗
パネリスト:
左側
大塚耕平(民主党参議院議員、元厚生労働副大臣)
小林節(慶応大学名誉教授)
小池清彦(新潟県加茂市長、元防衛庁教育訓練局長)
谷口真由美(全日本おばちゃん党代表代行、大阪国際大学准教授)
香山リカ(精神科医、立教大学教授)
堀潤(ジャーナリスト、NPO法人 8bit News 代表)
右側
中谷元(自民党衆議院議員、元防衛庁長官)
森本敏(拓殖大学教授、前防衛大臣)
ケビンメア(元米国務省日本部長)
桜林美佐(防衛ジャーナリスト)
山際澄夫(ジャーナリスト、元産経新聞記者)
大塚
物腰柔らかく冷静な物言い、観客視聴者にもきちんと伝えようとの姿勢。これからの日本を生きるのは自分達の世代ではない事を強調し、観客の学生達にこそ分かりやすく伝え、一緒に考えてもらうべきだとする態度は、少しポーズにも思えたが全く正しく、無責任で不毛な議論は避けねばならぬという使命感が垣間見えた。
模範的な討論者で、良い議員だと思った。
中谷
防衛庁長官時代からなぜか自信無さげな風体。専門の防衛について言いたい事はもっとあろうに、全く前に出ようとしない。だが要所要所淡々と、しかし丁寧に説明していた。私は嫌いじゃない。
小林
冷静、論理的で説明も分かりやすい。私自身とは立脚点を異にするが、こんな人とならちゃんとした話が出来るだろうし、学ぶ事も多そうだ。
森本
上位概念から各論まで穴の無い知識、しかも具体的。一訊けば十返って来る。中谷は森本に遠慮したのか。
小池
最年長、昭和12年生まれ。全くの憶測だが、幼なすぎたせいで軍国少年にはならなかったクチだろう。
メア
正直、立脚点はよく分からんかった。
谷口
専門なのか視点を国連憲章や国際法に持って行こうとしており、注目したが、横槍で話は流れる。残念。
このテーマにおいて、国際標準や言葉の普遍的定義は重要だったのに。
桜林
自衛隊員への取材が専門だそうだが、そのレベルの話はなかなかさせてもらえなかった様だ。
小池の隣に座らせてもらえば良かっただろうが、森本と山際の緩衝としてここに据えられたに違い無い。
山際が森本に冷静にたしなめられでもすりゃ、後述する番組としての演出は失敗するからだ。
香山
精神科医だから参加者の誰よりもミクロな視座、即ち生理感情矜持から話を語ってくれると期待したが大外れ。
多様性に寛容どころか、自ら平和憲法の神話を信じ切っている様。そんな硬直した脳みそで他人様の精神分析なんぞ出来るんじゃろか。以前彼女の話に大いに共感した覚えがあったが、何の話だったかすっかり忘れた。
山際
彼は少なくとも感情のレベルでは私に近いが討論者としては最低と言わざるを得ない。
自身の気持ちを分かってもらいたい事だけは分かるが、皆が折角耳を傾けてんのに途中でいちいち声を荒らげ、失笑を買ってそれでおしまい。空回りの賑やかしじゃ、無論、学生達にも伝わらんだろう。朝日の便利なピエロとして飼われているのか。
番組は毎回テーマに「激論」を冠するが、形だけの激しさの為に呼ばれているなら彼はただのアホな道化。
彼が浮き立つ構図を作り上げ、徒な平和遵奉者を増やすのが制作者の主眼ならば、番組としてある程度は成功だろうが、視聴者をナメるのも大概にせえと言いたい。アンタらの志も知れるぞ。
司会田原
傘寿にして矍鑠(あ、小池より年上か)。論客としては好きだが、相変わらず仕切り役としては失格。
論点や議論が分かり難い旨学生から指摘があったが、それに対し突然切れる。曰く、ちゃんと我々は議論してるじゃないか!
いやいや、論点が動揺していたのは事実。
で、その多くは田原のマズい仕切りや山際の怒鳴り声その他三人四人もの大声がカブるせい。
更には、横槍を制するどころか自分が入れてやんの。こっちは続きが聞きたかったトコあったのに。
若いモンにちゃんと聞かせたきゃちゃんと討論しなきゃ。で、司会はそうさせなきゃ。本義だろうに。もっと聴衆に気を配ってくれ。
参加者数名の溜飲を下げる為の場では決してない。しかも今回はルールがテーマだろ。討論参加者が討論のルールを守りもしねーでルールを語るな。語らせるな。
堀の方が仕切りはウマそうに見えはする。彼は司会の席を狙っているに違い無い。
討論自体は予想通りの結果だったが、興味深い点は幾つかあった。以下の通り。
ワシントンポストとNYタイムズは最近まで安倍政権に批判的だったそうな。再軍備への懸念がその理由。
たまげた。戦勝後、天皇の下のガバナビリティを利用し植民地化はせずとも、さんざん非武装化で去勢し、平和憲法の美名で市井には思考停止似非リベラリストを沢山産み出し、独立国としての国体や防衛の論議を今の今までデッドロック状態に陥れて来たというのに、何をまだ恐れとんじゃ?などと怪訝に思っていたが、そう言やこんな事があった。上掲二紙は2年程前、中国日報(チャイナデイリー)による、尖閣領有正当化の巨大な意見広告を(意図的に)一般記事に紛れ込ませる形で掲載した。相当額のチャイナマネーの広告費が動いているわけで、無論、中共の政治プロパガンダだ。2年も持ったんだから相応に奏功しただけでなく、十二分のコスパを得たとほくそ笑んでいるに違い無い。ま、これに限らず、近年共通の敵を持つ為か(北よりも)仲良しの韓国も含め、彼らが継続的にロビー活動に精を出しているだろう事は想像に難くない。
ロビー活動(lobbying)に、それをやるロビイスト(lobbyist)。もう何十年も前から米国(他の国にもある)のそれ(ユダヤロビーが草分けか)は日本でも注目されており、重視する向きもある。
私は胡散臭いモンだなとずっと思って来た。だって民主主義の、況してや選出により国家元首を戴く共和制の下でそんな一部の者や団体による言わば横槍が重要な政策を左右するなんて、本義を完全に無視しとるだろ。
日本にも直接選挙の後に陳情なんてモンがあるが、ロビーに比べりゃかわいいモンか。
東京五輪誘致成功にもロビー活動が奏功したなどと喧伝された。買収との線引きはどこぞ?あからさまなそれが無くとも、べったり粘着牽制懐柔等々を想起せしめ、気持ち悪い事この上無し。開催に資するインフラや治安その他見込みや現状を提示して、はいどうぞ選んでくださいってなわけにはいかんのだな。ま、選ぶ方もそれなりってこっちゃ。
で、そんなヤらしいモンでもコミュニケイション能力だなどと持て囃される。正直者がバカを見るなんて今に始まったこっちゃないが、高倉健の朴訥などもその内、美徳どころか主張の出来ぬ木偶の坊の性質などと見なされてしまうのかもな。
それから、徴兵制の議論の中で、米国は政府も軍もそれを全く望んでない事が少し意外だった。でも聞けば、中谷だか森本だかが言うには、やる気の無い兵士はお荷物にしかならんそうだ。まあそうか。そんな人員では精鋭部隊の実現なぞ望むべくも無いか。国にとっても現役構成員にとっても利は薄い。
別の見方をすりゃ、それ程兵器も戦術も進化しとるわけで、恐ろしい限り。
で、先の話に繫がり、日本なぞ恐るるに足らんだろうになあ。
もう一点。これは本筋から全く逸れるので読み飛ばして頂いて結構。
米国人メアの「キョウ」の発音。脅威(キョウイ)がとても言い難そうだった。彼ら英語話者の持たぬ音節。東京も「トキオウ」だもの。
で、全くの私見だが、この発音を最初に日本に広めたのは Deep Purple の Ian Gillan だ。Woman From Tokyo が嚆矢。後にこの奇異な発音をオシャレと見なし、沢田研二やYMOがマネた。(違うかな)
尤も我々も字面通り発音しとるかと言えば否で、トウキョウではなくトーキョーだ。
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