1991年の第2作アルバム Nevermind 所収。
Breed
(Kurt Cobain)
I don’t care, I don’t care, care if it’s old
I don’t mind, I don’t mind, I don’t mind
I don’t mind, mind, don’t have a mind
Get away, get away, get away
Get away, away, away from your home
I’m afraid, I’m afraid, I’m afraid
I’m afraid, afraid, ghost
それが時代遅れだろうと
構わない、構わない
自分に心が無かろうと
君ん家からは
離れるよ
お化けが
恐いんだ
I don’t mean to stare, we don’t have to breed
We could plant a house, we could build a tree
I don’t even care, we could have all three
F#
She said, she said
She said, she said
She said, she said
She said, she said
どうでもいいし、子供なんて要らない
家を植えたり、木を建てたりだって
出来る事は出来るけど
どうでもいい事
三つともやろうと思えば出来るけどね
なんて彼女は言ってたんだ
→(verse)(chorus)
(interlude)
→(chorus) She said
作者コベインの当時の恋人 Tobi Vail について書かれた歌(と言われる)。
そんな背景など知らぬ内は殆ど何の歌だかサッパリ。
せいぜい表題の通り、繁殖や生殖が主題なのだろう、という程度。
彼は彼女から多大な影響を受けた。フェミニストの色が強くなったのも彼女と付き合うようになってから。
本作がそんな彼の思想的過渡期の葛藤や困惑を表すものと考えると、一見取り留めも無い詞の輪郭がぼんやりながらも見えて来る。
前半のバースの話者 I はコベイン本人。
it’s old
旧来の男女関係を是とする自身の保守的な考えをベイルに「古い」と揶揄でもされたのだろう。
でもヤケクソ気味に I don’t care 気にしない、と言い放つ。
(if I) don’t have a mind
心が無い→考えに主体性が無い、とでも言われたのだろうが、ここでも I don’t mind 構わない、と強がる。
ただし、これは構文を上と同じと見なした場合の解釈。実際の歌唱に if I は聞けず、そのまま考えれば don’t have a mind = don’t mind となろうか。するとひたすら気にしないと言っている事になる。
I’m afraid
しかしやはり妥当とも思える彼女の考えが、旧態に固執する彼の元に、その新鮮さが故にお化けの様に迫り来る。
後半のサビは、恋人ベイル(she)による語り(said)。
女が従属的な生き物でなく自由や多くの選択権を持っている、という主張。
we don’t have to breed
子を産む(breed)という、言わば女の特権についてもそれを行使しないという選択もある、と言う。
plant a house, build a tree の所は元々、
build a house, plant a tree という、動詞と名詞の当たり前の(共起頻度の高い)組合せだった。
breed も含めた、合わせて三つ(all three)のこれらの行為は、家族(子供)を持ち家庭を築く事の言い換え表現。
仮定法(could)で叙しているので、やろうと思えば出来る(しなくたっていい)と言っている。
詞の変更前は曲名も違うものだった。
89年のヨーロッパツアーを共に回った Sub Pop のレーベルメイトの一人が下痢止め薬を常用しており、それを目にしたコベインはその商標名 Imodium を本作の表題に据えた。
その原題が詞の内容について示唆的と見なせもするが、変更してより直截的な表題(= 繁殖)に落ち着いたと言えそう。
詞をテレコにしたのにも作者なりの意図があるのだろう。
family tree (家系図)という少し守旧的な臭いの言葉を想起させはするが、こればっかりは本人にしか分からない。
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