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追悼の正当[統]性

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David Bowie(1947-2016)の死後ひと月余り、米英の大きな音楽賞式典で追悼パフォーマンスが行われた。
2/15に GRAMMYs で Lady Gaga が、そして2/24には The BRIT Awards で Lorde が歌った。
双方故人の曲から成るメドレーで、尺は6分前後と大体同じ。

私は賞や式典自体には全く興味が無いが、ボウイの曲がどう演奏歌唱されるかはとても気になる。だから見た。と言うか注視した。
ガガとロードについては顔と名を知る程度でつまりファンでもヘイターでもない、そして内情は知らない、と断った上で筆を進めます。

 先に行われたグラミーのガガ
バンドのギターを担当するのはボウイの2つのアルバムに制作者演奏者として関わったナイルロジャーズ。
主導者か。そうでなければこのパフォーマンスにボウイ追悼の正統性を与えるべく白羽の矢が立ったか。
短時間に相当数を詰め込まねばならなかったのだろうから、誰がやったってこんないささかせわしない感じになってしまうのは避けられまい。
歌唱演奏に特段感銘を受けたわけでもない代わりに何の文句も無い。及第。
が、ダンスに然程興味の無い者の目でも彼女の踊りの鈍臭さは見て取れる。
ファンに非ずと先述したが過去に彼女のピアノ弾き語りにグッと来た覚えはあるから、ダンスなんかとっととおやめなさい(大きなお世話)。

 後のブリットのロード
こっちの正統性を示すのは、かなりの長きに亘りボウイとツアーしたメンバーによる演奏だろう。
バンマスはピアノのマイクガーソン(ボウイより年上で御年70とは知らなんだ)。
Ashes to Ashes でゲイルアンドーシーがベースを弾く(今回不参加のスラップ達者マークプラティといつもこの曲では交替していた)のは初めて見たし、ギターのアールスリックが Let’s Dance のソロを原盤のSRVにちょっと寄せるなど、興味深い点は多かった。
そのバンドのインストメドレーが終わり、ガーソンのピアノが厳かに鳴り響く中、主役のロードが登場。
舞台中央へ歩を進めると、Life On Mars? の歌唱が始まった…?ん?ん?
いやはや、ボウイファンの素人のねーちゃんがカラオケやってんのかと思った。
少なくとも原キーのこの歌が彼女(の発声)に合わない事だけは確か。
the future of music と生前のボウイが評していたそうだから、追悼を執り行う正当性は故人本人によって十二分に担保されていたのだが(おまけに間奏のギターソロ、スリックが素直にミックロンソンの原版演奏に倣ったかと思いきや最後の最後で完全に弾き損じ、へなちょこに輪を掛けてしまう)。
あり得ないと分かった上で言えば、ドーシーが全部歌えば良かった(彼女は単独では famepressure の2語しか発していない)。
もっとあり得ないと分かった上で火星まで飛躍して言えば、私が歌えば良かった。
つまらぬ冗談はさて置き、カバー歌唱者の性差や声域差の不利不都合を差し引いたとしても断然本家の在りし日の歌唱が際立つ。
その意味では、結果的に故人を間接的相対的に称えた、正当な追悼とも言える(8割皮肉)。

さて、ボウイの息子ダンカンジョーンズは、名指しこそせぬもガガには不快感を、ロードには称賛を、それぞれ表明するツイートを投稿している。

遡る事ひと月、以下は1/14付のボウイの公式サイトから引用。

We are overwhelmed by and grateful for the love and support shown throughout the world.
However, it is important to note that while the concerts and tributes planned for the coming weeks are all welcome, none are official memorials organized or endorsed by the family.
Just as each and every one of us found something unique in David’s music, we welcome everyone’s celebration of his life as they see fit.

世界中の弔意への謝辞に続き、来たるべき様々な追悼行為を歓迎するも、それらが遺族公認の行事ではないと(スタッフが)わざわざ念を押している。
この蛇足がどうも心に引っ掛かっていたが、ジョーンズの一連のツイートで合点。
お墨付きはロードだけだったというわけだ。
ガガ側には不義理なり何かしらの取引上の問題があったのだろう。
でもナイルロジャーズやガガとの齟齬やら確執なんて想像したくもない。
まことに政治的な臭いがしてくるが、内情政局なんぞに興味の無い私の様なお行儀のいいファンにかくも下衆な勘繰りをさせた時点でアウト。
父ちゃんの追悼にミソ付けてどーする?

前者がボウイの商品価値を毀損したとも、後者がそれを高めたとも全く思えない。
素晴らしい家族だなんて思ってたのがアホらしゅうなってもーた。
父ちゃんの心中やいかに。

Wonder if he’ll ever know

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ダンカン馬鹿野郎!


追記

堂々たる、そして気負いの無いこの歌唱をあの場でも披露してくれていたらやっぱ良かったと強く思う。

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