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スプリングスティーンのコメント?

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「ボブ・ディラン、ノーベル文学賞受賞にブルース・スプリングスティーンが長文の賛辞を送る」
nme-jp.com

今回の受賞を受けてブルース・スプリングスティーンは長文のコメントを寄せている。

「ボブ・ディランは俺の国の父だ。『追憶のハイウェイ61』や『ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム』は素晴らしいアルバムだっただけでなく、俺が物心ついて初めて、自分が暮らしていた場所の真実を見せてもらった出来事だったのだ。そこには闇も光もみな存在し、幻想や偽りのヴェールは脇へと引き裂かれていた。彼は人を無能にしてしまう礼儀正しさや、堕落と腐敗を覆い隠してしまう日々のルーティンに足を踏み入れたのだ。彼が描写した世界はすべて俺が小さな町で目の当たりにしていたものだった。そしてそれはテレビを通じて俺たちの隔離された家庭に映し出されていたものの、コメントされることはなく、静かに認められていったのだ。彼は俺にインスピレーションを与え、俺に希望を与えてくれた。彼は他の誰もが、特に15歳の少年にとって、怖すぎて質問できない質問を投げかけてきた。『自分独りでいるのは…どんな気がする?』、世代間に劇的なギャップが生まれ、突如歴史の流れの真っ只中で孤立したような、捨てられたような気分になった。方位磁針は回りっぱなし。心がホームレスになったのだ。ボブは真北を指し示し、アメリカが姿を変えた新しい荒野の中、自分の道を突き進む手助けとして導いてくれた。彼は旗を立て、曲を書き、その時代に欠かせない歌詞を歌った。当時の数多くの若きアメリカ人たちの心と魂を生き永らえさせるために。ボブがケネディ・センター名誉賞を受賞したとき、彼のために“The Times They Are A-Changin’”を歌う機会があった。俺たちはほんの少しの間、ふたりきりで裏口の吹き抜けの階段を下りていた。彼は俺が来たことに礼を言うと『もし君のために何かできることがあれば……』と言ってくれたのだ。俺は『冗談だろう?』と思い、こう答えた。『もうとっくにしてくれているじゃないか』ってね」

へえー、じゃスプリングスティーンはこれをどこから発信したんだろ?
調べる…
彼の公式サイトだった。

Springsteen on Dylan | Bruce Springsteen
Congratulations to Bob Dylan on being awarded the Nobel Prize in Literature. The following is a passage from Bruce Sprin...

Springsteen on Dylan という見出し。「ディランについてのスプリングスティーンの弁」という意味。
そして下に本文が掲載されている。つまり上のNME Japanの邦訳の原文という事になる。

Bob Dylan is the father of my country. Highway 61 Revisited and Bringing It All Back Home were not only great records, but they were the first time I can remember being exposed to a truthful vision of the place I lived. The darkness and light were all there, the veil of illusion and deception ripped aside. He put his boot on the stultifying politeness and daily routine that covered corruption and decay. The world he described was all on view, in my little town, and spread out over the television that beamed into our isolated homes, but it went uncommented on and silently tolerated. He inspired me and gave me hope. He asked the questions everyone else was too frightened to ask, especially to a fifteen-year-old: “How does it feel… to be on your own?” A seismic gap had opened up between generations and you suddenly felt orphaned, abandoned amid the flow of history, your compass spinning, internally homeless. Bob pointed true north and served as a beacon to assist you in making your way through the new wilderness America had become. He planted a flag, wrote the songs, sang the words that were essential to the times, to the emotional and spiritual survival of so many young Americans at that moment.

I had the opportunity to sing “The Times They Are A-Changin’ ” for Bob when he received the Kennedy Center Honors. We were alone together for a brief moment walking down a back stairwell when he thanked me for being there and said, “If there’s anything I can ever do for you…” I thought, “Are you kidding me?” and answered, “It’s already been done.”

日付も OCTOBER 13, 2016 となっており、つまり受賞当日に早くも投稿した模様。
成る程、自分の事の様に嬉しかったんだなあ…
ん?
見出しと本文の間に但し書きが…

Congratulations to Bob Dylan on being awarded the Nobel Prize in Literature. The following is a passage from Bruce Springsteen’s autobiography Born To Run.
ボブディランさん、ノーベル文学賞の受賞おめでとうございます。以下はブルーススプリングスティーンの自伝 Born To Run の一節です。

はい?
受賞祝福コメントじゃねえじゃん。で、Born To Run のリンク先は Order your copy today!(今日注文しよう!)…
宣伝を兼ねて既刊の自著からの抜粋を掲載しただけじゃん。

ただこの公式サイトの投稿文には何の問題も無い。スプリングスティーンのスタッフがきっちり但し書きをしており、普通に読めば誤解は生じない。ちょっと購買へ誘導的であるだけで、何の deception(欺瞞)も無い。

問題はNMEの杜撰な記事にある。
ま、音楽ジャーナリズムもネット上の翻訳メディアもこの程度のもの。

恐らく翻訳記事だろうから一応nme.comの原文も見ておこう。
探す…

無い…

どうやらNME Japan独自の記事みたい…
自動翻訳に毛が生えた様なこなれない翻訳文を普段からよく目にしてきて、何だかなあ、と思う事しきりだったが、今回のはヒド過ぎ。だってこれは完全なウソだから。「引用コメント」としていればまだセーフだったろうが。

追記

独自の記事と言うより、親の同業他社の記事を見て書いたっぽい…

Bruce Springsteen Congratulates Bob Dylan on Nobel Prize Win
Just hours after Bob Dylan’s Nobel Prize win, longtime friend Bruce Springsteen congratulated the singer on his website.

或はその日本版

ノーベル賞受賞のボブ・ディランをブルース・スプリングスティーンが祝福 | Daily News | Billboard JAPAN
ボブ・ディランのノーベル賞受賞が決まった数時間後、古くからの友人であるブルース・スプリングスティー

但しビルボードは米日とも著書からの引用である事を明記しており客観性に問題は無く、報道機関の本分を全うしている。NME Japanの様な誤解を生む書き方ではない。

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