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歌詞和訳 Pixies – Tenement Song

2010s

2016年発表の第6作アルバム Head Carrier 所収。

Tenement Song

(music:Pixies, lyrics:Black Francis)

The drumsticks were his treasure trove
Found in the ashes of The Coconut Grove
ココナッツグローブの焼け跡で見つけた
ドラムスティックが彼の宝物だった

Hey, man, can you give me something?
Hey, man, did you give me something?
Hey, man, nothing comes from nothing
Hey, man, something came from somewhere
なあ、何かおくれよ
もらったか
無からは何も生まれないって言うし
全てに出所はあるもんさ

Hey, man, it’s a tenement song
It’s just there on the tip of your tongue
Let’s play on a tenement song
On and on and on
なあ、その歌だって借り物さ
その口に出かかってるのだってね
だから借りた歌を歌うのさ
これからもずっと

(Tenement song)
(Tenement song)
Tall bottle and one more smoke
(Tenement song)
She lived through the fire but the piano got broke
(Tenement song)
(借り物の歌)
デカい瓶にまた煙が一筋
彼女は生き延びたけどピアノはダメになった

Hey, man, can you give me something?
Hey, man, did you give me something?

Hey, man, it’s a tenement song
It’s just there on the tip of your tongue
Let’s play on a tenement song
On and on and on

Hey, man, it’s a tenement song
It’s just there on the tip of your tongue
Let’s play on a tenement song
On and on and on
(On and on and on)

The Coconut Grove は作者ブラックフランシスの出身地ボストンにあったナイトクラブ。
1942年の焼失時に492人の死者を出し、二次大戦一色の報道に取って代わって米国民を震撼させた。

a tenement song = 借り物の歌

外に向けて歌ってるなら皮肉、自身に向けてれば作家の謙虚さ、と取れそう。
フランシスの歌い方からすれば正直で真摯な告白だろうか。
これをもしカートコベインが歌ってれば前者の色が濃かっただろうか。

既に誰かが歌ってそうなテーマだけど意外に穴かも。
音楽に限らず本物の作家はこれをきっちり自覚している。

ロケンロール誕生より前の、戦中の音楽の社交場の焼け跡に残されたドラムスティック…
少ない言葉数で多くを語り大きなイメージを植え付けるフランシスの作詞の妙。
「創作」などと言ってみたところで全ては何かの系譜の上にある。
something came from somewhere
皮肉か謙遜か、またそのいづれでもないのかが分かりにくいのも彼の詞の幅。

こんな歌を聞かされちゃったら「クリエイター」なんて自称する者は恥ずかしくなりそうなモンだけど…

聞いた話。ある人の、クリエイターと表に書いてある名刺の裏を見たら、英語で The Creator となってたそうな。
不遜を遥かに通り越して最早オモロい…

上のMVに見える赤髪男はボウイ?
豚を抱いてる男は英国前首相キャメロン、と専らの噂…

nothing comes from nothing は、ラテン語に言う De nihilo nihil. (何か見たことある… 余談)

コメント

  1. is より:

    どこかで「翻訳者は原作者の奴隷たるべし」と書かれていたのを読んで、我が意を得たり!の思いでした。翻訳と創作の区別がついていない和訳詞がweb上には数多転がっていますが、本来はそれこそ奴隷のごとく忠実に原作者の意図を汲み日本語に移し替えるのが翻訳者の使命ですよね。「このブログは信用できそうだ」と思い時々記事を読ませていただいています。
    自分はpixiesやjesus and mary chainが好きなので是非deniさんに訳してもらいたいなあと思うのですが、そういったリクエストは受け付けてはいないでしょうか…?

    • deni より:

      isさん ようこそ
      奴隷の件はある翻訳家のパクリで、原作者への敬意と本サイトの姿勢を示すと同時に、ネット空間にゴミを垂れ流す有象無象への警告のつもりで引用しています。
      今や「意訳」という言葉を本来的な意味で使う者は殆どいない様です。自身の外国語の理解の至らなさを誤魔化す為の、彼らにとって便利な言葉に成り下がってしまった。そしてそんなデタラメな代物をすら有り難がる読者がいるという現実。日本の音楽(洋楽)ジャーナリズムの皮相性もしくは長年の怠慢と、日本の(言語)教育の敗北がその背景にちらちらと見えます。
      リクエストについては、積極的に受け付ける気は無い一方で断る理由も無いので、こちらの迅速な対応を期待せずになさってみて下さい。
      ただ元々ピクシーズはもっと沢山やりたいと常々思ってはいます。ブラックフランシスは存命作家で詩人と呼べる数少ない歌手の内の一人だと思いますし。ミクロな題材を扱いながら普遍的なテーマに言い及ぶ本作や Cactus の筆致には舌を巻きます。ボウイが彼らにハマったのも頷けます。