2004年発表のコンピアルバム With the Lights Out 所収。
Mrs. Butterworth
(Kurt Cobain)
Shit
My life is bogus
Bull
Your life is trite
Cry
Your life is hell
Hell
うんこ
俺の人生はインチキ
クソ
君の人生は陳腐
ああ
君の人生は地獄
生地獄
I’m gonna die with my libido
I’m gonna die, start a new union
I’m gonna die, who wants to stay?
自分の欲望と死ぬのさ
死んで新しい組合を始める
俺は死ぬつもり、留まりたい奴なんているのか?
Shit
Your life is strange
Insane
Your life is lame
Type of crap
Your life is frail
Frail
うんこ
君の人生は変
マトモじゃない
君の人生はダサい
うんこの類
君の人生ははかない
脆いもの
I’m going to hell with my libido
I’m gonna die, start a new union
I’m going to hell with my libido
I’m gonna die, start a new union
I’m going to hell with my libido
I’m gonna die, start a new union
I’m gonna die, who wants to stay?
自分の性欲と地獄に行くよ
死んで新しい組合を始める
性欲と地獄行き
俺は死んで新しい組合を作るつもり
自分の欲望と地獄に行くよ
死んで新しい組合を始める
俺は死ぬつもり、未練なんてあるもんか
I’m gonna open myself up a flea market
I’m gonna open up myself a flea market
And you’re gonna wish that you did
And retire on the profits
俺は自分でフリーマーケットを開くつもり
俺は自分でフリーマーケットを開くつもり
羨ましいだろ
その利益をあてに隠居生活ってなもんさ
And I’m gonna put’em on a shelf in my 800 dollar a month tax free Century 21 shop
And then I am going to put my Mrs. Butterworth syrup jars on the shelf
Next to all the commemorative fast food chain glasses and cups I’ve accumulated over the past 62 years
で、センチュリー21で借りた免税で月800ドルの店の棚にそれを置く
そして今度はミセスバターワースのシロップ瓶を棚に並べるのです
過去62年にわたって集めたファストフードチェーンの記念のグラスとコップの隣に全部並べるのです
I’m going to get some plywood
And cut them up into two by two feet squares
Then I’m going to get some burlap
And I’m going to cut them into two by two feet squares
And then I’m going to put them onto the pieces of plywood
And then I’m going to go to the beach
I’m going to go to the beach
And I’m gonna collect some shells and driftwood
ベニヤ板を用意するのです
2フィート四方にカットします
次に麻布を用意します
2フィート四方にカットします
そうしたらそれをベニヤ板に取り付けます
そして浜辺に行きます
浜辺に行くのです
そこで貝殻と流木を集めるのです
And glue them onto the plywood and burlap
And sell’em for lots of money
People will be paying top dollar for my kids’ new used new toys and clothing
Then maybe someday I can get rid of that piss-stained mattress I’ve been sleeping on
そしてそれらをベニヤ板と麻布に貼り付けます
そしてそれらを売って大金を稼ぎます
子供の新しい中古の新しいおもちゃと服に人々は高い金を払ってくれるでしょう
そうしたら多分いつの日か、ずっと使っていた小便染みの付いたマットレスを処分できるでしょう
I’m going to hell with my libido
I’m gonna die, start a new union
I’m gonna die with my libido
I’m gonna die, start a new union
I’m gonna die with my libido
I’m gonna die, start a new union
I’m gonna die, who wants to stay?
自分の欲望と地獄に行くよ
死んで新しい組合を始める
性欲と死んでやる
俺は死んで新しい組合を作るつもり
自分の性欲と死ぬ
あの世で新しい組合を起こすから
死ぬのさ、未練なんてあるかよ
Mrs. Butterworth は米国のシロップやホットケーキミックスのブランド Mrs. Butterworth’s (= バターワース夫人の)から取っている。
但しこの表題は作者カートコベイン本人が冠したものではない。
Bleach のプロデューサー Jack Endino によれば、デモテープにラベルは付されておらず、ベースのクリスノボセリチも思い出せなかったが故にマネジメントの人間がタイトルを付けた。また、ドラムは Aaron Burckhard で、87年夏のリハーサル時の録音との由。
詞中の言葉の組合せ、他曲でも聞いた事あると思い当たった方、ご明察、Swap Meet です。
ヒッピーの残党のヒップで陳腐な生活を象徴するものが作者にとっては麻布であり流木であり貝殻だったのだろう。
奴らってこんなの好きじゃね?とばかりに皮肉な笑みを湛えるコベインの顔が目に浮かぶ。
Swap Meet の姉妹曲ならば Flea Market って表題でも良かったなあと勝手に思ったりもするが、固有名詞の方がインパクトはデカいか。
(Century 21 も含め)米国人に馴染みのブランド名だからこそ情景が生々しく再現されて滑稽さも増すってなモンか。
あ、Mr. Moustache と対になって男女揃うからこれでいいのか。
本人も満更でもないかも。
bull は bullshit を分解した片方(多分)。shit は先出。
I am going to → I’m going to → I’m gonna → I’monna
音が脱落していく過程。
面白い事に作者/歌唱者の厚意(?)により本作ではこれら全ての発音が聞ける。因にコベインの時代には恐らく無かったが、今や更に縮めた I’ma も行われる。勿論これは口語。表記上は I’monna を見かけるのも稀。だから上掲の詞において実際には I’monna と言っている所も I’m gonna と表記してある。
また、語法は異なるが、ほぼ I’m gonna hell と聞こえる所も、ややこしいので I’m going to hell という表記にしている。ここには going to が gonna という音に変化する過程の一端が窺える。
ところで、特に最終形 I’ma などには言葉の乱れとの指摘もあろう。でも当事者同士で意思疎通が成立してりゃもうその時点で立派な言語。退化劣化などではなく、ただの変化(見方によっちゃ進化)。文句言われる筋合なんて無い。
我が国でも例えば、ら抜き言葉を目くじら立てて糾弾する者もいたりするが、彼らは自分だけは無謬だと勘違いする哀れなナルシシスト。言葉の機能性や地域性にも思い到らぬ想像力の無さ。一人で高潔ぶってりゃいいさ(余談)。
かつて「的を得る」を誤用とし「的を射る」が正しいと断じた三省堂も実に軽率で不遜。言葉で飯を食う者が皮肉にも自身の日本語の語感の乏しさを露呈。国語辞典なんて出してるモンだから、言葉の最上位規範は我に在り、なーんて自己陶酔しちゃうんかなあ、ご愁傷様(蛇足)。
あ、どうやら作者の揶揄癖が伝染っちゃったみたいです。
I feel stupid and contagious (Smells Like Teen Spirit)
でもそんな自分が嫌いじゃないんです。
For this gift I feel blessed (同上)
あ、もう一個思い出した。
ちょっと前、TVCMだったか、リクルート社が神授業とか言って、have to はハフトゥーとは発音しない、ハフタだ、とやっていた。いやいや発音するわ。上の gonna みたいに発音の速度に応じて変化したりするだけの事じゃ。しかもハフタの発音もまんまカタカナで気色悪かった。Ignorance is bliss.
こんな”カリスマ講師”にドヤ顔でウソを教えられる生徒が本当に気の毒。
それとも、無知でも無恥なら堂々と生きて行けるって事を身を以って教えてくれてんのか?
話を戻しまーす。
間抜けさの表現法と思しき、似た様な言葉の繰り返しがセリフに散見する。
そして対訳も響きは同じく間抜け。だけどこれは私の日本語の作文能力が劣っているからではなく、原作に忠実に倣っているからなのです(念の為)。
そして私はそしてを多用します。
そして私はそしてを多用するのです。
そして私は浜辺に行くのです。
そして… (もういいか…)
そして、ギターリフはスラッシュメタルっぽいってのに、詞の表現はあちらさんみたいに Kill’em all などとはやらないで、I’m gonna die 俺の方が死んでやる… わはははは。でもこの上ない当て付けの手法とも言えそう。そんなに嫌わなくても、と思わないでもないけど、まあ嫌いだったんだろうからしょーがないか。
で、サビの a new union って、27 Club の事だろうか…
訂正 2018-9-30
I’ma(I’mma) はエミネム等のラッパーが行ってここ十数年の内に広まった言語慣習だとばかり思っていたが然に非ず。
このフォーラムでは88年のN.W.A.のラップ曲や60年代のアニメ「トムとジェリー」での用例が示されている。
ところが更に古いものが掲載されている記事を発見。
って、自分のでやんの…
この56年の歌の冒頭でチャックベリーは Well I’mma write a little letter とはっきり発音している。
過去に自分が取り上げた歌の中身を失念していたのはまこと汗顔の至り、トホホホ…
そして本作をもう一度よーく聴いてみたらセリフの2番目は I’monna だが最初のは I’mna とコベインは言っている。
上のフォーラム中にも指摘があったが、つまり脱落過程を更に細分化するとこうなる。
I’m gonna → I’monna → I’mna → I’ma
I の方に強勢があれば I’mna になり、gonna の方なら I’monna になり易いだろう。後者は西海岸でよく聞く気がする。
と、ここで別の誤りを発見しちゃったモンだから
もひとつ訂正
セリフ中、2行とも I’m gonna open up myself a flea market と表記していたが、句動詞の副詞 up は目的語 myself の前後二様に位置していた。
正しくは以下の通り。
I’mna open myself up a flea market
I’monna open up myself a flea market
但し、歌詞原文中に施した修正は up の位置のみ。
この分だと一事が万事、精査したらもっと何か出て来そう。お気付きの方はどうかそーっと教えて下され(何せ恥ずいので)。
コメント
こんにちは。いつもこちらのサイトを拝見しているNirvanaのファンです(^_^)。久しぶりにNirvanaの記事が更新されたので、はじめてコメントしてみました。CDの歌詞カードや他のWebサイトなど様々なNirvanaの和訳を見ていますが、こちらのサイトの和訳が一番素晴らしいです。このMrs. Butterworthもお気に入りの曲ですが、今まできちんとした和訳を見たことがなかったので大変嬉しいです。これからも陰ながら応援しています!
acid freak さん こんにちは ようこそ
お目が高くていらっしゃいますね。仰る通り、このサイトの和訳が一番素晴らしいんです(キッパリ)。原詞もきっと歌詞カードなんかより正確です。流布する詞を鵜吞みにせず、きちっと聞き取ったものを掲載していますから。
カート=狂気みたいなステレオタイプしか持たぬ者は、I’m gonna die の一節を引き合いに、自殺を予告している!などと短絡するかも知れません。でも恐らく本当は、ヒッピーの流れを汲む極左の平和/理想主義者達の皮相性をコベインが回りくどい表現でバカにしている歌なんです。
過分なお褒めと身に染みる応援のお言葉、有難うございました。また来てねー!
横から失礼します。
>>仰る通り、このサイトの和訳が一番素晴らしいんです(キッパリ)。
このくらいのことは言ってしまっていいと思います。
deniさんはやはり英語圏の国で生活された経験がおありだと推察します。どんな国で、何年くらい、どんな暮らしをされていたのか、差支えなければ教えてください。
わ、isさん、ただ虚しく間抜けに響くだけだった筈の僕の大言壮語に支持を表明して頂き、とても助かりました。自己嫌悪に陥る寸前に救われた思いです。
僕は93年から約一年半、米国は東海岸の州立大生でした。下宿先のご婦人がある朝、あんたロック音楽好きだったよね、と手渡してくれた新聞にコベインの死亡記事が載っていたのをよく覚えています。
対訳のみならず拙文の一字一句までをも熟読玩味なさるisさんの様な読者がいて下されば書き続ける甲斐があります。
これからも”カリスマ講師”なんぞより真っ当な英語の講釈をしつつ、その辺の”音楽ライター”より圧倒的に深く面白い物を書いて参ります(大言壮語 revisited)。
と聞くと、deniさんの歳も大体わかってしまいますね……なるほど……
ところでレノンの”Happy Xmas”を聴いています。ウォーイズオーバーだと。何を。ウォーハズジャスビガンだ。ザバトルビトウィーンハブスエンハブノッツネバーエンズ。
モリッシーがhave notsのために歌ってくれてるのをYouTubeで聴きながら寝ます。イフヨアソーファニー、ゼンホワイアーユー……
森氏 belongs to the haves.
む……
明けましておめでとうございます。今年も読みごたえのある記事を楽しみにしております。
「的を射る・得る」についての質問です。僕は「的を得る、は誤用だぞ」としたり顔で言われたのをただ真に受けて、そーなのねと思ってずっと生きてきたクチでした。この記事を読んでとりあえず、家にある二冊の国語辞典と、google検索の上位にあがったサイトを参照してみましたが、百家争鳴の様相を呈しており頭が混乱してきました。
deniさんとしてはこの語法についてどういった考え・スタンスをお持ちなのでしょうか。教えていただきたいです。
明けましておめでとうございます。
Biff という方の書いた記事も読まれたかと思います(確か元国語教師)。入念な調査とご自身の言語学的な検証を丁寧に綴った素晴らしいブログです。あの誤用説の出処が三省堂だった事を僕はここで知りました。
僕自身は「的を射た」なんて言い回しを聞いた事も無く生まれてこの方ずっと「的を得た」とやってましたが、2000年前後に誤用説に触れ、isさんに同じくそーなのねとなりました。
そして数年前にそのブログで説の出処に加え撤回の旨を知るに至り、自分の身体の一部である語感が蹂躙されていた様に感じ、またその説を無批判にも信じそうになっていた自分のアホさにも腹が立ちました。
語法についての僕の考えはほぼBiffさんに同じです。ただ、彼が撤回そのものを好意的に評価しているのに対し、ゴミを垂れ流した者はその回収にまで責任を持つべきだと僕は思っています。今でも鵜吞みにして誤用だ誤用だとやってる「被害者」がTV(巨大メディア)やネット(巨大メディア)に散見しますから。
僕も過去に4,5回コメントしています(検証の一助に google trends の使用を提案しているのは僕です)。
そのコメント欄、記事を精読もせず直情的に文句を書き殴り、「反論」下手すりゃ「論破」したと勘違いするお粗末な輩の何と多い事!しかし筆者はそんなクソコメントに対しても一々丁寧に返信なさっているので頭が下がります。僕みたいな小者にはとても出来ぬ芸当です。
biffさんの亜空間要塞を訪ねてきました。
真摯な学究の姿勢、理路整然とした主張、ネット空間の塵あくたどもにも(諧謔を交える余裕すら見せつつ)丁寧に応対する器の大きさ……立派な方ですね。biffさんのような大人になりたいものです。
そして、誤用説を安易に鵜呑みにしていた我が身がやっぱりちょっと恥ずかしいですね。人というのは風説にたやすくなびいてしまうものだということを身を持って知りました。気をつけなければ。
しかしああいった手合いのろくでもない書き込みを見ていると、精神を変に消耗しますね。あーインターネットこわいこわい。