1985年発表のソロデビューアルバム The Dream of the Blue Turtles 所収。英12位、米16位を記録。
Russians
(Sting, Sergei Prokofiev)
In Europe and America
There’s a growing feeling of hysteria
Conditioned to respond to all the threats
In the rhetorical speeches of the Soviets
Mister Khrushchev said, ‘We will bury you’
I don’t subscribe to this point of view
Such an ignorant thing to do
If the Russians love their children too
ますます疑心暗鬼になり
ソ連の大袈裟な演説に見られる脅威に
いちいち条件反射している
「葬ってやる」と言ったフルシチョフ閣下
こんな見解は頂けない
全くの不見識
ロシア人も自分の子供を愛しているならば
How can I save my little boy
From Oppenheimer’s deadly toy?
There is no monopoly on common sense
On either side of the political fence
We share the same biology
Regardless of ideology
Believe me when I say to you I hope
The Russians love their children too
どうすれば愛しい我が子を救えるだろう
国境の壁のどちら側でも
皆が持つ感覚を牛耳る事など出来ない
イデオロギーがどうあれ
我々の体の作りは同じ
ロシア人も子供を愛すよう願う
と言う私の言葉に偽りは無い
There is no historical precedent to put
The words in the mouth of the president
There’s no such thing as a winnable war
It’s a lie we don’t believe anymore
Mister Reagan says ‘We will protect you’
I don’t subscribe to this point of view
Believe me when I say to you I hope
The Russians love their children too
歴史上の先例は無い
勝ち目のある戦争などと言うものは無い
そんな嘘はもう信じない
レーガン閣下は「我々が守る」と言うが
私は真に受けない
ロシア人も子供を愛すよう願う
と言う私の言葉に偽りは無い
We share the same biology
Regardless of ideology
What might save us, me and you
Is if the Russians love their children too
体の作りはみな同じ
我々皆を救い得るのは、ロシア人も
子供を愛しているかにかかっている
元となった曲:キージェ中尉第2曲ロマンス
東西の元首を引き合いに出し、しかし「どっちにも同意できない」と毅然と言い放っているからには、さぞ超越的な視点で書かれた詞…
と思いきや、結びは「我々の平和はロシア人にかかっている」…
作者スティングの軸足もフツーに西側でした(英国人だから当たり前っちゃ当たり前)。
Very simple idea: The Russians love their children too. Yet I don’t think we’re meant to believe that… We have to forget the politicians, they’re inept. We have to bypass them and in some way look for our counterparts in the Eastern bloc. So in terms of the song, I think of myself as a father of children, and there must be people who feel the same as I do in Russia, there has to be. It’s a ridiculous statement to make: the Russians love their children too. And yet it’s not. It’s the world that’s ridiculous. “People should be saying to me, Why the fuck are you writing such a nonsense It’s like saying, people breathe. But people are saying, God, that song’s really profound, man, you really said it. Well maybe I have, but what a shame…
最後には他人の口を借りて深遠な歌だと遠回しに自画自賛しているが、自身が自虐気味に述べた通り、やはりバカげた詞ではある。だってフルシチョフだってスターリンだって北の正恩君だって我が子はかわいいさ(彼に子がいるかは知らんけど)。
因に sting.com に記載のラテン文字表記 Krushchev は Khrushchev が正しい。
訂正
スターリンが長男の捕虜交換取引に応じなかった事実を寡聞にして知らず。勿論これは指揮官としての判断だが本作の訴えに影を落とす事実ではあろう。
時代は下って宇露戦争。ソ連時代にはあり得ない大規模反戦デモ。
How can I save my little boy
From Oppenheimer’s deadly toy?
広島に投下された原子爆弾のコードネームが Little Boy だった(長崎は Fat Man)。
put words in the mouth of someone [in someone’s mouth]
ややこしい慣用句。だいたい三様の意味がある。
1. 人が言った事を曲解する、また更にはそれを他の人に伝える。
2. 他の人が言うべきと思う事を言う
3. その人が言いたいと思っているだろう事をその人に言う
↑このフォーラム、何と質問者はロシア人!
この一文、precedent と president の言葉遊びをブッ込みたかっただけ?
winnable war 勝機のある戦争
NYTimes だからって fake news ではないだろうけど…
Mr. Reagan went on to criticize Soviet leaders, asserting that their military doctrine was based on the theory that ”a nuclear war is possible and they believe it is winnable.”
対訳に示した疑心暗鬼じゃないけど、レーガンは相手の当たり前の軍事方針にいちいち大袈裟に反応している。ソ連側が核をちらつかせ winnable だと信じている、怪しからん、と言いたいんだろうけど、まあ負けるつもりで軍備を進める国なんか無いわけで。
晩期とは言えまだ冷戦下、作者は上記の強いキーワードや We will bury you などの刺激的な発言(これをフルシチョフが口にしたのは事実)を歌に組み込んで話題性を持たせようとしたのだろう。そもそも Russians という表題の付け方からして強烈。果たして英米でヒット。
… などと詞の中身について随分否定的な見方を示しといて言うのもナンだけど、歌唱自体はお見事。しゃくりもせず正確なピッチにきっちり到達するこの歌い方は中々余人にマネできるものではあるまい。
当時我々はソ連人と呼んでいた。
英語話者が彼らを指してロシア人(Russian)と呼ぶと知った時にはかなりの違和感を覚えたのを覚えている(本作で知ったかどうかは失念)。ロシアと聞くとロシア帝国やら日露戦争を想起し、時代錯誤の気がしたから。連邦構成国にロシア共和国はあったがその名を耳にする事は一般には稀だった。
ゴルビーとレーガンが握手したINF条約を期に核保有の数自体は年々減り、ソビエト連邦の崩壊が冷戦に終わりを告げてから四半世紀。でも米露が牽制し合っているのは相変わらず。
追記 そして30年後…
これは露の条約違反と中の脅威への対抗措置だから米のトランプにとってはやむを得ぬ決断。
ゴルビーの希望的観測も…
もう公演では歌わなくなったのかと思いきや…
I’ve only rarely sung this song in the many years since it was written, because I never thought it would be relevant again … https://t.co/sC7Sd2fhYG Cello: @RamiroBelgardt
— Sting (@OfficialSting) March 5, 2022
やっぱ本作はあまり歌ってこなかった模様。
追記 2022年2月25日
ロシアがウクライナに軍事侵攻。
ロックスターがロシア人も子供を愛しているだろうと期待したって、遠くから憲法第9条の高潔性を喧伝して平和を叫んだって、起きるものは起きる。
本作に threats と Soviets の押韻があるが、脅しだけでは止まらぬプーチン。
JK = just kidding
Former President George W. Bush: “The decision of one man to launch a wholly unjustified and brutal invasion of Iraq. I mean of Ukraine.” pic.twitter.com/UMwNMwMnmX
— Sahil Kapur (@sahilkapur) May 19, 2022
あ、自分の口から…
He knew better pic.twitter.com/tKUgeFrFxi
— Terrence K. Williams (@w_terrence) February 26, 2022
「ウクライナに攻め入るのは大統領が替わるまで待とうとプーチンが心に誓った日」
一つ前の治世は世界も比較的安定してた。
we did it, Joe! pic.twitter.com/CivuEMFAH9
— Siraj Hashmi (@SirajAHashmi) March 9, 2022
この通りガソリン価格も急騰。
↑
Brighter days are ahead. pic.twitter.com/UiLhRPON0l
— Vice President Kamala Harris (@VP) April 11, 2021
勿論これはコラージュで、しかも恐らくCA州の特に高いGSの看板の画像の流用だろうけど、平均でもこの1年で2倍以上になったのは事実。
$7/galだとリッター200円となって、日本もかなり高くなってるとは言え米国にもっと高く売ってる店がある事になる。
筆者が米国東部を車で遊び回ってた90年代は$1.2/gal位で、安い所だと$1切ってた。何とリッター30円程度。
REPORTER: What can you do about skyrocketing gas prices?
BIDEN: "Can't do much right now. Russia's responsible." pic.twitter.com/UZrBUEsliQ
— RNC Research (@RNCResearch) March 8, 2022
おやおや、全部ロシアのせいだってさ。
Imagine talking to a room full of adults like they’re five.
— Becky🍊 (@fweedomfightaw) March 8, 2022
Imagine…
SDGsの”清き”にバイデン支持者も住みかねてもとの”濁り”のトランプ恋しき(超字余り)
フェイクニュースでしたね、NYTimesもWH報道官も。ジャーナリズムって何?
This is a Big Tech information coup. This is digital civil war.
I, an editor at The New York Post, one of the nation’s largest papers by circulation, can’t post one of our own stories that details corruption by a major-party presidential candidate, Biden. pic.twitter.com/BKNQmAG19H
— Sohrab Ahmari (@SohrabAhmari) October 14, 2020
Spies who lie: The @nypost contacted the senior ex-intelligence officials who signed the shameful 2020 letter declaring Hunter Biden’s laptop and its emails we ran were Russian disinformation. Not one apologized. Most refused to comment. A few like James Clapper doubled down pic.twitter.com/EVYBXun02K
— Miranda Devine (@mirandadevine) March 19, 2022
ほんで嘘がバレてもだーれも謝らない。言論責任って何?
You did not. Bye. https://t.co/AY1LXX2eQd
— Sara Gonzales (@SaraGonzalesTX) May 14, 2022
Bye. で、後任者…
Watch what happens when Peter Doocy asks the new White House press secretary how raising taxes on the rich brings down inflation, as Biden tweeted last week.
Big yikes. pic.twitter.com/UIsACtP8Hv
— John Cooper (@thejcoop) May 16, 2022
もう誰でもいいんじゃね?
So we’re moving on from the ‘Putin Price Hike’ to ‘it’s just gas stations being silly.’
— Defiant L’s (@DefiantLs) July 2, 2022
支持者は見事に二枚舌。
コメント
何が言いたいの?
あなたにスティングの何がわかるの?
上から目線が鼻につく。
「バカげた詞」というのが癇に障って上から目線と断じられたのかと察しますが、スティング本人の発言の引用文をちゃんとお読みになればお分かり頂けるかと。
何が言いたいの? → 書いてある通りです。本日追記の内容は一般論です、念の為。
あなたにスティングの何がわかるの? → コンサートには何度か行きましたが会った事も話した事もないのでよく分かりません。歌詞や発言を参照して色々と思う事をここに書いている次第です。発言は主に公式サイトからの引用なのでほぼ間違いの無いものかと。ポリスのも含め80曲くらい取り上げているので、是非お読みになって、またコメントを下さい。お待ちしております。
こういう事をわざわざ言いにくる、何のためなのか。
鼻につく?ふんっ。笑わすなよ。
信者が(ロック)スターをスターたらしめているという側面はあるでしょうね。
ここ数年でスティングを聴きはじめた20代です。
タイムリーな曲と思い検索したらこちらのサイトに辿り着きました。
曲の背景など、勉強になりますありがとうございます〜
お役に立てた様で何よりです。前身バンドのポリスなんかも面白いですよ。
当方47歳、私が初めて買ったCDはこの、ブルータートルの夢。
この曲も歌詞はほぼ暗記してましたが、まさか今更この曲を思い出し、そしてこのサイトに辿り着くような事態が起きるとは思ってもみませんでした。フムフムと頷きながら読ませていただきました、ありがとうございます。
こちらこそお読み頂きありがとうございます。また追記しました。まあ本作とは直接関係はありませんが…
当時は録音媒体の過渡期でしたね。僕はまだレコードで、数年後にポリス5枚全部CDで買ってやりました。今般の事態に際しては上掲の通りスティング本人も同じ思いだった様ですね。
クリストファーノーラン監督の新作『オッペンハイマー』はこの歌にインスパイアされたとか。
研究者オッペンハイマーの生涯を描く伝記映画的なもののようですが、日本での公開はあるのかどうか…
お知らせ下さりありがとうございます。仰る通り彼は本作での言及からオッペンハイマーに興味を持った様ですね。
個人的にはトルーマンがいかに描かれるかが気になるところです。現場の戦況に明るいアイゼンハワーやマッカーサーが日本の降伏に原爆は不要と断じていたにもかかわらず、核実験成功で気が大きくなって投下命令を下したヘタレ大統領。上の写真の一人、親父ブッシュも「原爆投下こそが戦争を終結させ多くの米兵の命を救い得た」というトルーマン政権のプロパガンダを鵜吞みにする哀れな戦争屋です。まあ彼のみならず米国民の多くも信じちゃってますが。
もとの濁りのトランプ恋しき…
こんばんは、いつもブログ楽しく拝見しております。
さて、いつだったか、確3・4年程前だったと思うのですが、Sting本人が”当時は若かったが、今となってはこの歌が恥ずかしい”的な発言をどこかのメディアでしていて、そのリンクがこのStingの”Russian”のページにて紹介されていたような気がします。(間違いだったら申し訳ございません。)
良ければその時のリンクを再掲して頂けないでしょうか?久々にset them freeのシングルB面、”Another Day”を聴いて件の話を思い出しまして、今一度改めて読んでみたいと思い立った次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
DAT さん ようこそ
リンクを消去した記憶はないけど、その類の発言は僕も聞いた事があります。ただちょっと検索しても出てこないので分かりません。
Another Day… この一節を思い出します。
But it’s hard to tell the poison from the cure
ワクチン薬害に紅麹菌、何だかタイムリー… 後者についてはその報道自体に懐疑的ですが。
映画オッペンハイマーは仄聞するところによればやっぱ一般的な米国人の論理で描かれている様で、日本での公開が遅れたのもまあそーゆー事なんでしょう。オリバーストーンだったら、なんて思ったり…
Hey people!!!!!
Good mood and good luck to everyone!!!!!