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音の楽しみ

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米アップル社が iTunes を通じて U2 の最新アルバムを無料配信したところ、苦情が殺到するという想定外の事態が起きたそうな。
ユーザーの設定によっては自動的に端末にダウンロードされる仕組みになっており、無料だというのに「欲しくない」「邪魔」といった声が相次いだ為に、当初は無かった削除のボタンを追加するハメに。

日本での反響をネットで覗いてみる。
 「何て読むの?ゆうじ?」
これには笑った。ま、これは投稿者のシャレだろうが、ユーザーの中には本当に知らない者も少なくないらしく、私の様な古いロックファンからするとウソみたいな話だ。音楽に限らず、嗜好とそれを伝えるメディアの多様化が進む中、ロングテールってのはやっぱ本当なんだろう。
こうなりゃポピュラー音楽のファンでビートルズを知らない人もかなりいるに違い無い。

メタリカのドラマー Lars Ulrich の発言

I think U2 are the coolest… it’s 2014 and anybody who thinks outside the box, or attempts in any way, shape or form, to break the status quo in the world of music, should be applauded. To me, it’s not about whether the endeavor is a success or not. It’s the fact that they have the balls and the foresight to throw something this radical at all of us. We are embedded in our creative process right now and this type of attempt to reinvent the wheel inspires me immensely.

「音楽界における現状打破の試みは成否に関わらず賞賛すべき」と、非常に好意的な声を寄せている。

レコード会社の人間ならいざ知らず、音楽家自身が販売や配信に言及するなんてロック的じゃない、ダサいぜ!なんて言う私の様な輩はもう相当古い、それこそダサいヤツなんだろう。
ロックアイコンだってそれなりの苦悩と切迫感を持って音楽シーンを注視しているんでしょう。
ま、そも「ロック的」だなんて思う事自体がロックミュージシャンに対する幻想だろうって分かっちゃいるけど。
ダウンロードはおろかCDでさえ何で盤面に物理的に接触もしないで音が出るんだろうと今だにイノセントな疑問を持ち続ける者にとっちゃ、やっぱ理想像がある訳で… (アホな男のロマン?)

その音楽の聴き方にしたって…
千円札握り締めてレコード屋に行き、お目当ての盤を探し当て、レジに向かう。ポスターなんぞを呉れる事もあり、ラッキー!とばかりに、店の名が書かれた厚めのビニール袋にスッポリ入れられた四角いジャケットと、これまたビニールに包まれた細長い筒を大事に抱え帰宅。
ポスターはどこに貼ろうかな、いやいやまず音を聴くのが先でしょ、と一人ノリツッコミをしながら、まずアンプの電源を入れ、黒い円盤を取り出し、指紋が付かぬ様、両手で挟んでそっとターンテーブルに乗せる。回転速度は33RPM。
アンプの「カチッ」を合図に、溝の無い縁に針を慎重に落とす。
音楽の前にスピーカーから聞こえて来るのはノイズ。そう、音ってのは摩擦が産み出すもの。
この無調の雑音が全ての音楽の序曲…

物にしても恋人にしても、手に入れる迄が一番ワクワクするなんて言うけど、ノスタルジーを差し引いたって、それは事実だろう。
でもこれすら情報の少ない時代を通過した者の負け惜しみ?

朝起きて、ターンテーブルにU2の見知らぬ最新アルバムが乗っかってたら…
いや、それはそれで嬉しいか… 例えを間違えてもーた…

エアチェック(死語?)なんてのもワクワクの前に緊張があって、それも良かったんだろうなあ。
でも音楽を聴くそんな作法だって、録音再生装置の無い時代、つまり必ずライブでなきゃ聴けない頃からすりゃ、非常に奇異なものだろう。演奏者も不在で何でこんなトコから音がするんだ!てな感じで。

アップルは5億の端末に配信したそうだが、削除した人の実数も地域も把握できるんだろうから、次の販売戦略の重要で有意なデータになるんでしょうな。
そもそも想定外などではなく、初めからデータ取りの為にやった事かも知れんし。
削除ボタンだって初めから用意してあって設置タイミングだけ計ってた…
… あ、もうそうとしか思えなくなった。炎上マーケティング的なインパクトもあろうし、統計学上5億って標本数は滅多に得られないだろうから、貴重な結果をもたらす事請け合い。
世紀の大実験。こうなりゃ統計数字も全部、パブリックドメインとして公表してくれりゃいいのに。
全世界でのU2の商品としての価値が白日の下に。これ自体、もう一個話題になるでしょうに。

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