1957年発表のシングル。
Words of Love
(Buddy Holly)
A D E A D
E A D E
Tell me love is real
この愛が本物だと言って欲しい
A D E A D
E A D E
Darling I love you
本気で囁いておくれ
愛しい人よ 君を愛している
A D E A D
E A D E
Darling when you’re near
すぐそばで
A D E A D
E A D E
Darling I love you
本気で囁いておくれ
愛しい人よ 君が大好きなんだ
A D E
バディホリー(1936—59)のファンを自任するも、一方で本作はビートルズのオリジナル(レノン/マッカートニー)だとずっと勘違い。ホリーのどこが好きなのか思い返してみるとどうやら眼鏡を含めた容姿だった…
つまりただのミーハーなファンだった…
それにしても眼鏡だけでなくストラト(フェンダー社製のエレキギター)もよく似合うなあ。
(↑ これがミーハーってか?)
ジミヘンやブラックモアとはまた違う似合い方。まるでギターの方が弾き手を選んでいるみたい。
眼鏡については、ロケンローラーのイメージからかけ離れているという意識が本人にもあったらしい。しかし如何せんかなり目が悪かったので仕方なくかけており、それがその内、彼のトレードマークになった。
私は、勿論純粋に似合っているから好きなのだけど、表情も含めて何となくオルタナティブな、異質な、カッコ付けないカッコ良さを見出していた様な気がする。
レノンとマッカートニーもホリーの大ファンだった(後者はホリー作品の版権を所有)。他にもエルビスコステロの眼鏡なんかはモロ。日本だと、体操のうまいギタリスト、仲本工事なんかもきっとファンだったろうと勝手に思ったり。大橋巨泉は… 違うか。
そもそも The Beatles という命名作法はホリーのバンドの The Crickets へのオマージュ。
cricket = コオロギ、beatle = beetle(カブト虫) + beat の複合造語、つまりは両方、昆虫由来。
大所帯のビッグバンドが主流だった当時、ドラムとベースとギターのシンプルな編制にしたのは The Crickets が草分けで、The Beatles はそれにも倣ったらしい。(ハード面の電気楽器や増幅装置の発達普及も勿論その背景にあるのだろうが)
さて、詞について…
直截的でありながら、どことなくシャイな感じが垣間見える愛の告白の詞。
自分の勘違いの言い訳ではないが、やはりビートルズの詞みたい。しかし無論それは順序が逆で、彼らがホリーの影響を受けたという事。特にビートルズの初期のラブソングの作詞の源流は本作にあると言っても過言ではないだろう。
掛け値の無い、真摯な、それでいて先述の如く少しシャイな伝え方、描き方。だからこそこれを耳にした世の多くの女の子達は忘我する程シビれてしまった。
この真摯な愛の告白の行儀良さは本国英国でヒットした大きな要因の一つでもあろう。何せ当時は米国においてさえ、ロックは不良の音楽と白眼視されていたのだから(米国の方がユルくてリベラルだとするステレオタイプも往々にして事を見誤るだろうが)。
加えてマネジャーのエプスタインの戦略も奏功したのだろう。演奏終わりの慇懃な一礼なども彼の指示による。
一方、曲に関して、コード進行は典型的な3コード。
これはホリーやビートルズに限らず、ポピュラー音楽の作曲の原点と言える(枚挙にいとまなし)。
ギターのリフは、(特にクリーントーンの)エレキギターの鳴らし方のお手本の様なものだろう(リフの後半は左手が指板上を意外にも忙しく往復するが)。
4拍目の後半に16分でハネる所が、そしてそれが毎回でない所もイカしている。
詞の解釈上、特に難しい言葉は無いが、修辞上、語法上、少しややこしい所がある。
Words of love(目的語) you(主語) whisper(動詞) soft and true
この倒置文を普通の語順にすると、
You whisper words of love soft and true.
soft and true の見た目は形容詞だが、役割は副詞。
学校文法はこれを説明しない[出来ない]。
以下は私的文法解釈。
whisper はただの他動詞で、2番の歌詞の最初の let の様な使役動詞ではないが、この文型は SVOC の様なもので、O = C が成り立つ。
つまり Words of love are soft and true.
だからこそ形容詞のまんまで、softly and truly などと冗長な形にしない。
(今気付いたが冒頭の hold me close も同様だった)
以上は目的格補語の例だが、主格補語の例でよく耳にする表現には walk proud や talk loud があり、マトモに副詞を使った walk proudly や talk loudly よりも寧ろ一般的慣用的な言い回し。
これは平叙文に見えるが、対訳の如く、you は間投詞の様な呼び掛けで、実際には whisper は命令形の動詞だろう。
文法上は「命令」文だが、前後の文脈から、願望の様な意味合いか。
soft and true を補語の様に見なしたせいで、もう一つの解釈に思い当たってしまいました。それは、
Words of love you whisper are soft and true. (SVC)
君が囁く愛の言葉は優しく確かだ。
で、ここから be 動詞が抜けた形。
ただまあこんな風に可能性を考え出すと、これは自由詩なんだろうから、もう文法も語順もへったくれも無く、単語の羅列という見方だって出来てしまう。しかしやはり、繰り返しになるが、文脈上、願望の表明(命令文)と取るべきだろう。
勝手にオリジナルだと思っていたビートルズ版
客席にいるのは作者ホリー?警備員のラインダンスがオモロイ。
テンポも含め概ね原作に忠実なカバー(コピー)だが、ギターはホリーの方が断然流暢。
あら探しするわけじゃないが、2番の歌前のアルペジオは弾き損ねてミュートしちゃってる。これ、ハリスン?
(武道館公演だったか、Nowhere Man のギターソロの最後のキメのハーモニクスも空振ってたなあ)
それから、ビートルズはずっとインテンポだけど、ホリー版は歌前のリフのテンポをほんのチョットだけ遅くしてタメてんのがイカしてる。
詞はちょっと変えて want to hear を long to hear と歌唱。
何にせよ、ロケンロールバンド黎明期の一人のギタリストシンガーソングライターが書いた本作が、リバプール出身の4人組バンドをポピュラー音楽界で最も成功させた最も重要なインスピレイションの一つであった事に誰も異論は無いかと。
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