1987年発表のデビューミニアルバム Come On Pilgrim 所収。
I’ve Been Tired
(Black Francis)
She’s a real left winger cause she been down south
And held peasants in her arms
She said “I could tell you a story that could make you cry”
“What about you?”
I said “Me too”
“I could tell you a story that will make you cry”
And she sighed “Ah”
彼女は南部くんだりまで行って
農夫を抱きしめる様なガチの左翼
「泣かせる話があるんだけど
あなたは?」と言う
僕は言った「僕もあるよ
僕なら必ず泣かせる話ができるよ」
すると彼女は「ああ」とため息
“I like Lou Reed” she said sticking her tongue in my ear
“Let’s go, let’s sit, let’s talk”
“Politics go so good with beer”
“And while we’re at it baby, why don’t you tell me one of your biggest fears?”
I said “Loosing my penis to a whore with disease”
“Just kidding” I said
“Losing my life to a whore with disease”
She said “Excuse me please?”
I said “Losing my life to a whore with disease”
I said “Please… I’m a humble guy with a healthy desire”
“Don’t give me no shit because…”
「私ルーリード好きよ」と彼女は僕の耳に舌を突っ込んで言った
「じゃあ行こうよ、座ってお話しましょう
政治の話はビールがあると盛り上がるんだから
そしたらついでにあなたがすごく怖いものを一つ教えてくれない?」
僕は言った「病気持ちの娼婦のせいでペニスをダメにする事
まあ冗談だけど
病気持ちの娼婦のせいで人生をダメにする事かな」
彼女「何ですって?」
僕「病気持ちの娼婦のせいで人生をダメにする事だよ」
続けて言う「頼むよ… 僕は健全な欲望ならあるけど控え目な男なんだから」
ばかな事はもう言わないでよ、だって…」
She’s a little bit older than me
Strong legs, strong face, voice like milk, breasts like a cluster of grapes
I can’t escape the ways she raise me
She’ll make you feel like Solomon
Beware your babies even if you had no one
(And while we’re at it baby, why don’t you tell me one of your biggest fears?)
Took my sleep after setting my loins on fire
But that’s OK because…
僕より少し年上で
力強い脚に力強い顔、ミルクの様な声にぶどうの房の様な胸
彼女の僕の立たせ方から逃れられません
人をソロモン王の様な気にさせます
身に覚えの無い赤子に気を付けて下さい
(そしたらついでにあなたがすごく怖いものを一つ教えてくれない?)
股間をうずかせた後、眠りました
だけどそれでも構いません、なぜなら…
T-I-R-E-D spells it
Spells it
う・ん・ざ・りって言ってんの
そういう事
登場人物は、自分の話をしたくてたまらない”進歩的”な女、そして彼女を冷めた目で見る男。
労働者を抱きしめたりルーリードの話に食い付く件は彼女がいかにポーザーかを表しているのだろう。
ぶどうやソロモン王や赤子の件は聖書からの借用だそうな。
loins はサーロインやテンダーロインのロイン。腰(の肉)、の意。
ここでは股間の婉曲表現。
あ、股間も婉曲か… 要は生殖器の事。
この一節はナボコフ「ロリータ」冒頭の Lolita, light of my life, fire in my loins. になぞらえている(多分)。
股に火を実際に放ったわけではない(念の為)。
ブラックフランシスは性的表現の禁忌をわざと無視した作詞をしている(気がする、特に初期)。勢いピクシーズ曲の下ネタはジェンダーの壁を壊す様な気風をバンドに与える。それは男のボーカルの横で女がベースを弾いて歌う事とも深く影響し合うだろう。
耳に舌を突っ込む、なんて詞を例えばボンジョビが歌ったら、ファンがドン引きしておしまい。例え自体がおかしいと言われりゃそれまでだけど。
男女混成でこそ成り立つ歌も多いからか、キムディールの後任に迎え入れられたのもやはり女性ベーシスト。
進歩的思想と性的欲求を絡める辺りはボウイの Suffragette City を想起させる。
また、理想主義者を揶揄する視点は Nirvana の歌にも認められる。
因縁浅からぬこの三者。
The Ziggy Stardust creator has called the Pixies the “psychotic Beatles” and rates their music as “just about the most compelling of the entire 80s”.
ジギースターダストの作者はピクシーズを「精神病的ビートルズ」と呼び、彼らの音楽を「80年代を通じて最も人を突き動かすものだ」と評す。
Q: Bowie said you “changed the format for delivering harder rock”, Kurt Cobain paid you the ultimate compliment by ripping you off. In your own words, what’s your contribution to rock?
Santiago: Being original, influencing Nirvana so they could rip a song. I’ll admit it – if Kurt Cobain fessed up to it, fuck it, I’ll agree with it, you ripped us off.
ピクシーズが「よりハードなロックを伝えるフォーマットを変えた」とボウイは言い、カートコベインはピクシーズをパクる事で究極の賛辞を伝えた。ご自身の言葉だと、あなた方のロックへの貢献とは?
サンチアゴ「オリジナルである事。パクるほど Nirvana に影響を与えた事。認めるよ。カートコベインが白状したのなら、構わない、その通りなのだろう。君は俺達をパクった」
Q: You said you want to work with Bowie as a backup band. Is it going to happen, is it some special sign of respect?
BF: It’s fucking David Bowie! Come on! We could do that. Bowie, the Pixies, together at last! … I think that Dylan and the (Grateful) Dead tour kind of served them both very well.
バックバンドとしてボウイと仕事がしたいと仰っていた。それは実現するのか、特別な敬意の表し方なのか?
フランシス「あのボウイだぜ!分かるだろ!やれるならやるさ。ボウイ、ピクシーズ、遂に共演!… ディランとグレイトフルデッドのツアーは双方にある意味うまく働いたと思うしね」
Please note offensive language in Q&A 引用元のロイター、真面目じゃのう
コベインが「パクった」のはピクシーズの歌メロでも詞でもなく曲の展開(念の為)。
ボウイはアルバム Heathen で Cactus をカバー。
また、Tin Machine 時代には公演で Debaser を披露している。
ボウイはギターとバッキングボーカル
スタインバーガーは軽いけど、フルダウンストロークにすぐ疲れて諦めちゃうボウイ。
ボウイ50歳誕生日コンサートにて共演する二人
5:36 曲間のボウイの語り
I see you’re sartorially attired for this next one, Frank.
この次の曲に合わせて着飾ってくれたみたいだね、フランク。
次曲 Fashion は、右へ倣えのファッショニスタの歌。
スタイルを祝賀の場に合わせたりせずジーパンに地味なシャツで登場したフランシスをボウイは自曲に因んで称揚しているのだろう。
ギター無しの手ぶらだから手持ち無沙汰っぽいけど何か嬉しそうなフランシス。It’s fucking David Bowie!
コメント
ぼちぼちやりますと言ってたわりに、早々に仕上げてくださいましたね。優しいじゃないですかdeniさん!
自分の対訳と見比べてみて、やはり譯解とは容易ならざる仕事だなと思いました。簡単なところで意味を取り違えていたり……
greens and bluesも好きな曲なので嬉しいです。爽やかで切なくてポップ……ただ、surfer rosa期のアングラな匂いのするピクシーズの格好良さはありませんが、これはこれで。
この解釈を読んだところで主眼はやっぱ分かる様な分からん様な…