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歌詞和訳 Nirvana – Gallons Of Rubbing Alcohol Flow Through The Strip

1990s

1993年発表の第3作アルバム In Utero の欧州及び豪州版の隠しトラック。

Gallons Of Rubbing Alcohol Flow Through The Strip

(Kurt Cobain, Dave Grohl, Krist Novoselic)

It hurts when you have to press that dull little thing
That you’re only supposed to use once and then discard
Where do you put it? In the garbage can, my honest friend
My shyness, pet her flow

鈍い針先を押し付けなきゃならない時は痛い
本当は1回だけ使って捨てなきゃいけないヤツ
どこにやろう、ゴミ箱の中?親友よ
恥ずかしさよ、流れるやつを揉んでくれ

She’s only been five months late
Even though we haven’t had sex for a week
A meal a day, a meal, I say
And my heart’s made, my

彼女は5ヶ月遅れてるだけ
一週間セックスしてないけど
食事は一日一回、食事だってば
そして心は決まった、俺の

Somebody else already used the word ‘aurora borealis’
She was tied up in chains
And Sam had helped her in the freezer

もう誰かがオーロラボリアリスって言葉を使ってた
彼女は鎖で縛られた
サムが冷凍庫で彼女を手伝ってた

She’s only five weeks late
But I haven’t had a date forever
Ever
Ever
Forever

彼女は5週間遅れてるだけ
でも俺はずっとデートしてない
もうずうっと

Wish I had more
More opportunity
More chances to remember some things
So I couldn’t have so much pressure on my
On my, on my, um
Uh, on my
Um, um
Head

もっとあったらなあ
もっと機会が
もっと色んな事を思い出せるチャンスがあれば
そしたらあまりプレッシャーが無くて済むのに
俺の、俺の、ええと
あの、俺の
えっと
頭に

(guitar solo)

We’d have so much more diversity
And so much more input
So much more creative flow
If we had someone in school, a GIT
GIT
Geeks in town, ha
Come on, Dave, think of one
(Girls in trouble)
It should be GIC, geeks with Charvels
No, GWC
Fuck, man, this is a waste of time

もっともっと多様で
もっとインプットがあって
もっと独創的なフロウが生まれただろうに
もし俺らの中に音楽学校に行ってる奴がいたら
GITとか
街のオタク
なあデイブ、一つ思い付くかい
(困った女の子達)
GICの方がいいか、シャーベル持ってるオタク
違うな、これだとGWCだ
何だよ、こんなの時間の無駄だな

A-hahaha
Hahahaha
One more solo?

あはははは
ははははは
もう一回ソロ?

Yeah! Yeah!
(guitar solo)

You’re personally responsible for
The entire strip to be washed away
Cleansed, as if gallons of, um, rubbing alcohol
Flowed through the strip and were set on fire
It didn’t just singe the hair, it made it straight
And then Perry Ellis came along with his broom
And his silk
And he, he erected a beautiful city
A city of stars

その大通り全体を洗い流して清める
責任が個人的にある、まるで何ガロンもの
えっと、消毒用アルコールが街に
流れ込んで火を放たれたかの様に
ただ髪を焦がすだけでなく真っすぐにしてやる
その後ペリーエリスがほうきを持って
シルクの服を着てやって来る
そして彼は美しい街を作り上げるのだ
スターの街を、てな具合に

(guitar solo)

アルバム最終曲 All Apologies 終了後、20分の無音を挟んで始まる(2,3分で良くね?)。
93年1月23日の Hollywood Rock 出演の為にリオデジャネイロに滞在していた時の3日間のデモセッション中に録音。Nevermind に同じく隠しトラックとして挿入された Endless, Nameless 同様、本作も即興演奏。
仮題だった I’ll Take You Down to the Pavement は92年の MTV Video Music Awards でのGN’Rのアクセルローズとの小競り合いを示唆するもの。

収録アルバムの表のステッカーに Exclusive International Bonus Track (国際版のみのボーナストラック)との記載があるが、裏面には Devalued American Dollar Purchase Incentive Track (価値の下がった米ドル買い奨励曲)と銘打ってあった。実際米ドルは93年の年始こそ125円位だったのが5月から年末まで100円台とドル安で推移。

表題は8語42文字とバンド最長。但し上記「米ドル」を考慮に入れれば語数は6と少ないが文字数は44でこっちが最長。次点は Frances Farmer Will Have Her Revenge on Seattle の8語40文字。暇なので数えてみた。ドル円レートもちゃんと調べた。ただ対ポンド/豪ドルに関しては1年を通じ大幅な変化は無く、つまりドル安と言うより円の独歩高。じゃあこの冗談タイトルというかメッセージは日本人に宛てたもの?コベインは自国の経済を憂慮してた?まあその先30年、日本の方がボロボロになるんだけど。当時は RadioShack や Wiz とかの家電量販店に行っても日本ブランドだらけだったのになあ。

Paper Cuts のプロモビデオ(於 RadioShack 店内)

残念乍ら陳列商品のブランド名までは確認できず。まあこれはちょっと前の89年頃だけど。

さて話を戻して詞に移ります。
冒頭はヘロインの描写というのが大方の解釈(実際リオ滞在時コベインはヘロヘロだった)。
that dull little thing
注射針は本来は使い捨てにしなきゃダメ。針先がなまくら(dull)になるまで使うなぞもっての外。厳密に言えばそのまま捨てる(discard)のもダメで、絶対に再利用できぬようその場で専用の器具を使って壊さなければならない。Radio Friendly Unit Shifter の冒頭にも歌われているが、一度使ったら破壊するよう Use once and destroy なる注意書きが注射器には記されている。薬物依存の国のアホみたいな一応の決まり事。

生理が遅れてセックスもデートもしない件は、ヘロインが月経周期に影響を及ぼし、また性欲を減退させる事を言っているのか。

aurora borealis はバンドがアンプラグドで84年のアルバム Meat Puppets II から Plateau と Oh, Me と Lake of Fire の3曲をカバーし、また客演もしてもらったミートパペッツへの言及か。アルバム中 Aurora Borealis は Plateau の次のインスト曲。
するとちょっと後に出て来る人名も91年の Forbidden Places 開始曲の Sam を引用しているのだろうか。

GITは音楽学校 Guitar Institute of Technology の略(Musicians Institute と名を変えた現在は音楽大学、在ハリウッド)。

コベインがそのGITバクロニム大喜利を始め、グロールはドラムを叩きながらも即座に呼応して曰く、
Girls In Trouble!
お見事。
でもその後、出題した当人が間違えるというオチ付き。

Charvel はグラム/ヘアメタル界隈で多用されたギター名手御用達ブランド。学校で音楽理論や演奏技術を身に付ける様な彼らを揶揄すべく持ち出したのだろうが、一方でコベインは自身が流麗なソロが弾ける様なギターの名手でない事を自認しており、つまり羨望は無くとも劣等感はあったのだろうと察する。
で、断言は出来ないが何と Charvel/Jackson ぽいギターを彼自身も弾いている。

In Bloom 初期版

0:13
ヘッドは黒く塗りつぶされているのかデカールが確認できないが、形は Charvel のストラトヘッドっぽい。

また話が逸れました。
最後に表題の文言がほぼそのまま登場。注射部位を揉むにも(pet her flow とはこの事?それとも経血?)、針を消毒するにもアルコールを使うのでここもヘロインを暗示しているという解釈もある様だがそうではなく、これはグランジに駆逐された(或はされるべき)ヘアメタルについて歌っているのだろう。仮題がGN’Rのアクセルを仄めかすものだった事もこの解釈を正当化する材料となる。すると、ヘアを焦がすなんて言ってるし、この大通りとはヘアメタルの中心地LAの the Sunset Strip を指していると取れる。straight にするというのは cleanse と同じく、汚れたものを清める、おかしなものをまともにしてやる、という事だろう。

Perry Ellis は米国のファッションデザイナー。だけど彼のここでの役割はよく分からない。
この香水がよく売れている模様。

1991年、Nevermind の消毒アルコールが流入、火が付いてヘアメタルシーンは焼け野原に。
コベインが嫌いなバンドとして名を挙げたのは Van Halen, Motley Crue, Poison, Bon Jovi あたりだったか(Bon Jovi は東海岸だけど)。あ、勿論GN’Rも。特にアクセルローズ。
ここ数年の彼はTDSを患ってトランプ叩きやってるとこしか知らんけど。
コベインに倣ってTDS… Tokyo DisneySea, tout de suite, Total Dissolved Solids 違うな、
Trump Derangement Syndrome これこれ。
とても、ダサくて、しんどい…

アクセルはコベイン死後も論難の矛を収める事はなかったが(何か今グロールとはすっかり仲良しだが)、ジョンボンジョビは当時のアメリカの音楽が浅薄になって行く中で起きたグランジムーブメントは実に健全なものだったと何かのインタビューで語っていた。
他には例えば同業とは言えそれこそ毛色の違うスティングも最近ちょっと Nirvana に言及していてびっくりした(まあ一応パンクという共通項はある)。

43:14
30年周期で音楽に大刷新が訪れると持論を展開する盟友ギタリストのドミニクミラー。今から30年前のそれは Nirvana だったと明言し、一体何なんだこの音楽は!と自身の受けた衝撃を振り返る。そして「覚えてるでしょ」と隣に水を向ければ「覚えてるよあの歌」とスティング。ツアー中に見たMTVで流れていたとミラーが述懐するその歌とは Smells Like Teen Spirit で間違いないだろう。スティングはボソッと答えてそれきりだったが、同時代のロックスターでグランジの衝撃についてわざわざ積極的に語ろうとする者はまあいないか。逆に言えばやはり青天の霹靂だったのだろう。一方のミラーは言葉を継いで「その後、音楽界は一変した」とその影響の凄まじさを感じたまま吐露。
「アンディサマーズ(ポリス)の素晴らしいフレーズは全く飽きないから昏睡状態になっても弾ける」なんてサラッとユーモア交じりに敬意を表す事の出来る虚心坦懐なミラーが同席してくれたおかげで、スティングにとっても Nirvana 現象は看過できぬものだったと分かったのは収穫だった。

面白がりながら(そんで恐らくキメた状態で)録音した即興曲を取り上げた事で、図らずもポピュラー音楽全体に彼らが与えたインパクトのデカさを再確認する事になった。否、コベイン本人もこのレクリエイションにさりげなく自身の矜持をギンギラギンに歌い込んでいたのか。
筆者なぞも彼らの音楽は革命だったと言って過言ではないと思うが、(更に30年前の)ビートルズやツェッペリンで止まっちゃってる日本の団塊世代音楽評論家は評価しないのか出来ないのか Nirvana を無視してる様な… ま、いいけど。


追記

1:50 BACK TO BASICS
関係者がカレッジセンセイションと称して紹介した Nirvana にブラッドギルスは初めはピンと来なかったが、激しさや生々しさを感じるに至る。

5:58
MTVで見たビデオ(恐らく Teen Spirit)に衝撃を受けたのはロックの真髄たる若さを感じたから、とケリーキーギー。何も隠し立てせず独特で新鮮であるところに音楽延いては芸術の本義を見たと言う。

ナイトレンジャーの面々もそれぞれ好意的な印象を告白しているが、それは今だからこそで本当に当時そう思ったのかな、と邪推してしまう。特にギルスは彼らのコード構成やギターソロはシンプルなものだと言っていて、それは即ち自身らの音楽や演奏こそがよく練られた完成品だという自負の裏返しにも聞こえる。彼は例えば Drain You みたいな特異なコード進行の歌を知らないのだろう。勿論彼らに When You Close Your Eyes みたいな興味深い展開の曲があるのも事実だが。

焦点はちょっと逸れるが、コベインのギター演奏についてこんな人から言及があったのでご紹介

米国の Guitar World 誌から最も偉大なギタリストに選出された事に反応するブライアンメイ。

2:27
「どんなギタリストも何か力量を示すものがなければならないと感じる必要はないと思う。競争ではないから。カートコベインが好例だよ。技術に長けた面はあまりないし、また技巧的であろうとしたわけでもないが、それでも彼は史上最高のギター音楽のレガシーをいくつか残してくれた。だから技術でなく、感じた事をいかにギター演奏に込めるかが重要」

5:42
一語の曲名が多くある中、コベインが逆を行って Frances Farmer Will Have Her Revenge on Seattle 等の長い題名を採用した逸話を司会者が紹介するも、Radio Friendly は後続の2語が浮かばず、捻り出したのが Shipping Unit(確かに沢山CDは出荷されただろうけど)。更には In Utero プロデューサーのスティーブアルビニも本作を Gallons Of Rubbing Alcohol Roll Through The Strip と言い間違える始末。年取るとこうなっちゃうのよね。ま、確かに長すぎるからしょーがないか。
何にせよその直後の We had that jam というノボセリチの発言に本作がジャムから作られた経緯が窺える。

30周年記念デラックスエディション
つまりは30年も経ってしもたんか…

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